◎エチオピアのティグライ地域およびティグレ人民解放戦線(TPLF)の元リーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏は声明で、「政府軍はティグライの市民を虐殺した」と述べた。
◎同氏の声明(録音、約20分)は、TPLFが運営するフェイスブックアカウントに投稿された。
Getty Images/ティグレ人民解放戦線(TPLF)のリーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏

エチオピアのティグライ地域およびティグレ人民解放戦線(TPLF)の元リーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏は声明で、「政府軍はティグライの市民を虐殺した」と述べた。

政府軍とTPLFの戦闘は昨年11月初めに本格化した。その後、政府軍はティグライ地域を支配するTPLFに攻勢を仕掛け、戦闘は約1か月後にほぼ終息した。

ゲブレミチャエル氏は国際社会に対し、政府軍の大量虐殺を調査するよう要請した。

一方、大量虐殺の疑いをかけられたエチオピア政府はTPLFの主張を却下したうえで、「ゲブレミチャエルの軍は恐ろしい犯罪を犯した。彼を捕らえ、裁判にかける」と述べた。

2019年にノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド首相は地上と空中からTPLFに攻撃を仕掛け、ティグライ地域の州都メケレの支配権を奪取した。

約1カ月の戦闘でティグライ地域の人口の3分の1、約200万の市民が避難を余儀なくされた。

アナドル通信社/ティグライの市民の一部は、隣国スーダンの難民キャンプに避難している

ゲブレミチャエル氏が公の場で話したのは約2か月ぶりだった。

同氏の声明(録音、約20分)は、TPLFが運営するフェイスブックアカウントに投稿された。

デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏:
「政府軍は自己の欲望のままに戦った。私たちは民主的な選挙を支持したが、政府は私たちの主張を無視し、ティグライを壊滅的な大量虐殺戦争に巻き込んだ。しかし、侵略と虐殺にティグライは反抗した」

「政府軍は殺人、レイプ、拷問、飢餓を引き起こした。世界はエチオピアの暴挙を調査しなければならない」

公開された動画の撮影日は明らかにされていないが、ゲブレミチャエル氏は他のTPLF指導者が最近殺害されたことについても言及した

政府当局は今月初めの声明で、元外務大臣を含むTPLFの幹部数人が一連の紛争中に死亡したと報告している。

ゲブレミチャエル氏は、「4カ国の政府軍」がティグライに侵攻したため、勝つことは困難だったと述べた。

デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏:
「アビィ・アハメドはエリトリア軍を含む他国の軍隊を招き入れ、ティグライの市民を虐殺している。国際社会は彼らの残虐行為を調査し、侵略軍に対する法的措置を講じる必要がある」

隣国エリトリア政府は以前、ティグライの紛争に関与したという主張を否定している。

しかし、米国務省は先週の報告で、「ティグライ地域にエリトリア軍が侵攻したことは確かであり、速やかに撤退しなければならない」と述べた。

ゲブレミチャエル氏はエリトリア以外に関与した国の名を明かさなかった。なお、ソマリア政府もエチオピア軍を支援したという噂を否定している。

TPLFは以前、アラブ首相国連邦(UAE)のドローンによる攻撃を受けたと述べたが、アビィ首相は湾岸諸国の関与を否定した。

政府の報道官、ビリーン・セユム氏は記者団に対し、「犯罪者集団の動画メッセージについて話すことはない」と述べた。

ビリーン・セユム氏:
「犯罪者集団とその代理人は、TPLFの恐ろしい犯罪を隠蔽するために虚偽の主張を繰り返している。ゲブレミチャエルは根拠のない大量虐殺の主張で自分にかけられた嫌疑と注目をそらそうとしている」

「国際社会はTPLFではなく、彼らを裁判にかけようとしている政府の努力を支援すべきだ」

エチオピア、ティグライ地域

ティグライについて知っておくべきこと

・2021年1月、ティグライ緊急調整センター(ECC)、ティグライ地域で「数十万人が餓死する可能性がある」と警告。

・2020年12月23日、ベニシャングル・グムズ地域(民族境界線沿い)で虐殺事件が発生し、100人以上が死亡。

・2020年12月、エチオピア国防軍は、ティグレ人民解放戦線(TPLF)の指導者の所在に関する情報に約25万ドル(2,600万円)の懸賞金をかける。

・2020年12月11日、エチオピア政府、北部ティグライ地域の難民キャンプから逃れた「エリトリア難民数千人」を元の難民キャンプに戻すと発表。

・2020年12月8日、エチオピア政府、ティグライ地域の検問所を突破しようとした国連職員に発砲

・2020年12月、国連とエチオピア、ティグライ地域への援助を許可する協定に署名

・2020年12月1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、難民の栄養失調と飢餓を警告。

・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。

・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。

・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始

・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。

・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。

・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。

・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。

・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃

・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。

・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

Getty Images/エチオピア、ティグライ地域
アフィリエイト広告
スポンサーリンク