ロイター通信/エチオピア、ティグレ人民解放戦線(TPLF)

13日、国連の人権責任者は、エチオピアの北部、ティグライ地域で発生したとされる大量殺戮の報告が事実であれば、「戦争犯罪に相当する」と警告した。

国連のミシェル・バチェレ氏は、1つの町で数百人が刃物で殺害されたという報告の調査を求めた。

昨年ノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド首相は、虐殺に関与したとされるティグレ人民解放戦線(TPLF)を非難している

これに対しTPLFのリーダー、デブレトジョン・ゲブレミチャエル氏はAP通信の告発について、「根拠がない」と語り、関与を否定した。

アハメド首相は、政府軍がティグライの西部を解放した後、与党勢力のTPLFの戦闘員たちによる民間人の大量殺戮が行われたと主張した。

民間人の死は、国連との協議資格を持つ人権団体、アムネスティ・インターナショナルによって報告された。

なお、現地の電話回線とインターネットは遮断されており、虐殺に関連する情報の入手は困難だという。

BBCニュース/エチオピア、首都アジス・アベバ、ティグライ地域への立ち入りは禁止されている

国連のバチェレ氏は最優先事項を戦闘の集結と指摘し、「さらなる虐殺行為を防ぐことが重要だ」と述べた。

エチオピア政府とティグライを支配するTPLFの緊張関係は、政府軍の空爆を含む軍事衝突で一気に悪化した。

デメケ・メコンネン副首相は13日の記者会見で、「軍事作戦は予定通り進んでおり、短期間で終了する」と述べた。

デメケ・メコンネン副首相:
「対話の前に秩序を回復し、犯罪者を捕まえる。一連の戦闘で民間人数千人が国境を越えてスーダンに入り、難民キャンプに避難するだろう」

政府軍とTPLFの戦闘

11月4日、アハメド首相はTPLFの部隊が一線を越えたと述べ、軍事作戦を開始した。

首相の声明によると、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃したという。ただし、TPLFは関与を否定している。

政府軍はティグライ地域を空爆。今回の大量殺戮につながったと思われる。

ティグライの現状

・電話回線とインターネットが完全に途絶えている。

・小麦粉、燃料、水が不足していると伝えられている。

・推定人口40~50万人の州都メケレでは週に1回水道を利用できたが、現在は供給されていない。

・電話回線が遮断された結果、港湾都市ボサソとの水購入ルートも途切れた。

・12日の空爆で水力発電ダムが損傷。電力供給が途絶えたと伝えられている。

Getty Images/社会主義エチオピアの独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム(右)とフィデル・カストロ

ティグライについて知っておくべきこと

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、ティグレ人民解放戦線(TPLF)が政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

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