AP通信/エチオピア

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、エチオピア北部ティグライ地域の紛争に巻き込まれた数千人のエリトリア難民の食糧が尽きたという。

エチオピアとエリトリアの国境付近には難民キャンプ(難民数:約10万人)がある。

12月1日、UNHCRの報道官、ババル・バロック氏はジュネーブの国連事務所で記者団に対し、「難民キャンプは食料を使い果たした。栄養失調と飢餓は危険なレベルに達している」と語った。

ババル・バロック氏:
「ティグライは1カ月近く完全に隔離され、警告していた通り、食糧や物資が尽きた。また、難民キャンプで攻撃、誘拐、強制徴用などが発生したという未確認情報もある」

政府軍とティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は約1カ月前に始まり、その間、通信と食糧などの輸送は完全に遮断されていた。

戦闘中、数万のエチオピア難民が隣国スーダンに逃げ込み、人道的危機の懸念が高まったと注目されたが、エリトリアの難民も危険な状況にある。

エチオピアのアビィ・アハメド首相は11月28日にティグライの州都メケレを完全に支配したと宣言した。

しかし、TPLFを率いるデブレツィオン・ゲブレミチャエル氏は「戦闘はまだ続いている」と主張。各地で一定の戦果を挙げていると述べた。

飢餓

UNHCRはエリトリア難民の人道的危機の懸念は時間と共に高まっていると警告した。

また、戦闘の影響を受けたティグライの市民、数百万人についても、「食料と物資が必要」と訴えた。

一方、アハメド首相は11月30日に議会で、「戦闘開始以来、民間人は1人も殺されていない」と主張している。

エリトリア難民約10万人は非常に不安定な立場にある。彼らはエチオピアの国境付近に設置された難民キャンプで生活しており、伝えられるところによると、一連の戦闘で攻撃や誘拐などの被害を受けているという。

UNHCRの報道官、バロック氏は、誘拐などの情報が真実であれば「重大な国際法違反になる」と警告した。

エリトリア政府はTPLFから一連の戦闘に加担したと非難を受けて以降、沈黙を守っている。

赤十字国際委員会(ICRC)によると、週末にエリトリア難民約1,000人がティグライの州都メケレに到着し、食糧や物資の援助を求めているという。

国連の報道官、ステファン・ドゥジャリック氏は記者団に対し、「難民は水インフラを失い、未処理の水に頼らざるを得ない状況にある」と語った。

ステファン・ドゥジャリック氏:
「現地への輸送ルートを直ちに回復し、州都メケレとティグライ地域全体に食料と物資を輸送しなければならない。グテーレス事務総長からアハメド首相に電話でその旨を伝えた」

ティグライについて知っておくべきこと

・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。

・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。

・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始

・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。

・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。

・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。

・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。

・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃

・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。

・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

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