2020年11月23日 AP通信/スーダン、カダリフにあるウムラクバ難民キャンプ

国連は、エチオピア政府軍によるティグライ地域への攻撃を開始するという「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明している。

エチオピア政府とティグライ地域で活動するティグレ人民解放戦線(TPLF)との戦いは、開始から3週間たった今も一向に収まる気配を見せない。

伝えられるところによると、民間人数百人が殺害され、数万人が隣国スーダンに避難したという。

国連は、エチオピア政府がティグライの州都メケレの住民、約50万人に対し、「都市を取り囲み、TPLFに向けて砲撃する可能性がある」と発表したことに警戒感を示した。

エチオピアのアビィ・アハメド首相はTPLFに72時間の降伏猶予を与えている。

これに対しTPLFのリーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏はロイター通信の取材に対し、「ティグレの軍隊は最後まで戦い続ける。私たちは土地の権利を守るために死ぬ覚悟だ」と述べた。

一方、エチオピアの国営人権委員会は声明の中で、今月初めの民間人600人以上の殺害に関与したティグライ地域の若者グループを非難した。

委員会の当局者は、「若者グループがTPLFと共謀して、マイカドラの非ティグリニャ人を刺し、殴打し、火刑に処した」と述べた。

2020年11月23日 ロイター通信/スーダン、難民キャンプ

国連「ティグライの州都メケレで戦争犯罪が発生する」

国連人権高等弁務官のミシェル・パチェレ氏は、「州都メケレに向けられた戦車と大砲の報告に警鐘を鳴らしている」と述べた。

パチェレ氏は声明の中で政府とTPLFに対し、「民間人を救うために、停戦命令を出す必要がある」と訴えた。

ミシェル・パチェレ氏:
「州都メケレでの戦いは数十万人の住民を重大な危険にさらす可能性がある。両軍の争いがさらなる国際人道法違反につながるのではないかと心配している」

エチオピア軍の指揮官は、72時間の降伏猶予時間内に避難しなかった住民には「容赦しない」と警告している。

2020年11月23日 ロイター通信/スーダン、難民キャンプ

アハメド首相はティグライ地域への軍事行動で民間人を保護すると繰り返し主張している。

しかし、パチェレ氏は、同地域の通信網が完全に遮断されたことで、国連や人権団体などによる違法行為の監視が困難になっていると警告した。

国連は、「恣意(しい)的逮捕、拘留、殺害、および民間人への差別と暴行が複数報告されている」と述べた。

国連安全保障理事会は24日の会合でティグライ地域について話し合う予定。

23日時点で、少なくとも40,000人以上が隣国スーダンに逃げ込み、避難生活を余儀なくされている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は先日、今後6カ月で必要に応じて最大20万人の難民に対応できる準備を進めると発表した。

ティグライについて知っておくべきこと

・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。

・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。

・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。

・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃

・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。

・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

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