エチオピア北部、ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線（TPLF）は、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃したと発表した。
TPLFの報道官は、標的は「アムハラ州」と「エチオピアの隣国、エリトリアの首都アスハラ」の施設で、さらなる攻撃もあり得ると警告している。
エチオピア政府とTPLFの緊張は、この1カ月で急速に悪化した。
エリトリア国の市民も爆発音を聞いたと報告している。
TPLFの報道官は以前、隣国エリトリアが標的になる可能性もあると示唆していた。
エチオピアとエリトリア国は20年近い戦争の末、和平に合意した。
国連によると、ティグライをめぐる争いで、これまでに少なくとも17,000人が隣国スーダンに逃げ込んだという。
ティグライの現状
戦闘が始まって以来、ティグライ地域およびその周辺では数百人が死亡したと伝えられており、TPLFによる民間人の虐殺も報告されている。
人権団体アムネスティ・インターナショナルは同地域南西部、マイカラドの町で数百人がマチェーテなどの刃物で虐殺されたことを確認したと述べた。
アビィ・アハメド首相はTPLFの部隊が大量殺戮を行ったと非難したが、TPLFの指導者は関与を否定している。
・電話回線とインターネットが完全に途絶えている。
・小麦粉、燃料、水が不足していると伝えられている。
・推定人口40～50万人の州都メケレでは週に1回水道を利用できたが、現在は供給されていない。
・電話回線が遮断された結果、港湾都市ボサソとの水購入ルートも途切れた。
・12日の空爆で水力発電ダムが損傷。電力供給が途絶えたと伝えられている。
アムハラ州への攻撃（13日遅く）
エチオピア政府の緊急対策チームは、13日遅くにアムハラ州のバハルダールとゴンダールにロケット弾が撃ち込まれたと発表した。
当局者はロイター通信の取材に対し、「1発はゴンダールの空港、2発目はバハルダールの空港近くに着弾した」と述べた。
死傷者の有無は明らかにされなかった。
TPLFの報道官、ゲタチュー・レダ氏は空港へのロケット攻撃について、「政府軍の空爆に対する報復」と述べた。
ゲタチュー・レダ氏：
「ティグライ地域への侵略を止めない限り、報復攻撃は続く。戦いは激化するだろう」
地元メディアは、アハメド首相がTPLFの力を過小評価している可能性もあると指摘。TPLFは同地域の山岳地帯を知り尽くしており、政府軍との戦闘が激化すれば民間人に致命的な被害を与えるかもしれないと警告した。
エリトリア国への攻撃（14日夜）
エリトリア国の外交官は、14日夜に少なくとも3発のロケット弾が撃ち込まれたと発表した。
TPLFのゲタチュー・レダ報道官は、「エチオピアを支援するエリトリア政府は攻撃の対象であり、ロケット弾を撃ち込んだ」と述べている。
エリトリア政府は紛争に関連する支援を否定したが、地元メディアは国境近くの戦闘で負傷したエチオピア軍兵士がエリトリア国で治療を受けたと報じている。
エリトリア国
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、ティグレ人民解放戦線（TPLF）が政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代～1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線（EPRDF）を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線（OLF）などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府（TGE）を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺（数十人規模）が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。
