◎ウクライナ軍はバフムート以外の地域でも戦果を上げたと報告しており、ロシアに圧力をかけている。
ウクライナのマリャル(Hanna Malyar)国防次官は5日、東部ドネツク州の一部地域に展開した部隊が攻撃態勢に移行していると明らかにした。
現地メディアはドネツク州の激戦地バフムートで装甲車による小規模な攻撃作戦が進行中と伝えている。
マリャル氏は自身のSNSアカウントに声明を投稿。この移行がゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領の言う反攻作戦かどうかは明らかにせず、バフムートを「敵対行為の震源地」と呼んだ。
ウクライナ陸軍のシルスキー(Oleksandr Syrskyi)司令官は5日、部隊がバフムートに向かって前進しており、同市の前線付近に設置されたロシア軍陣地を破壊したと報告した。
ゼレンスキー氏はこの直後に声明を出し、バフムートの部隊が良いニュースを届けてくれたと称賛した。
ロシアの民間軍事会社ワグネルとウクライナ軍はこの地域で激戦を繰り広げてきた。
ワグネルの創設者プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏はバフムートを完全制圧したと主張している。しかし、西側のシンクタンクやアナリストはウ軍がバフムートを包囲し、ロシア正規軍を追い詰めようとしているという見方を強めている。
ゼレンスキー氏は以前、反攻の開始には相応の時間がかかると述べていた。
ウクライナ軍はバフムート以外の地域でも戦果を上げたと報告しており、ロシアに圧力をかけている。
ウクライナと国境を接するロシア南部ベルゴロド州では反政府勢力のものとみられる攻撃が相次いでおり、これらはすべてウ軍の反攻開始を示唆する兆候と受け止められている。
一方、ロシア国防省は5日、ウ軍が4日から東部地方で複数の部隊による大規模攻勢を開始したと主張した。
同省は声明の中で、「ウ軍は前線の最も脆弱な部分とみなしたロシア軍の防衛網を突破しようと試みたが、撤退を余儀なくされた」と述べている。
同省が公開した映像にはドネツク州とみられる野原で銃撃を受ける軍用車が映っていた。同省はこの撃退戦でウ軍の兵士300人を殺害し、戦車16両を破壊したと主張している。
ウクライナ軍参謀本部は5日、ロシア国防省の主張を否定も肯定もせず、粛々と準備を進めると報告した。
ウ軍報道官もロイター通信の取材に対し、「我々は東部で大規模攻勢が始まったという情報を持っておらず、ロシアの偽情報を含むあらゆるフェイクにいちいち反応せず、コメントしない」と述べた。
ウクライナの反攻はいつ、どのような形で行われるのか。ウクライナ軍はいくつものメッセージをSNSなどで発信し、ロシアを混乱させているようにみえる。
ウクライナは何カ月も前から反攻を計画してきた。しかし、西側の同盟国と協力して部隊を訓練し、西側の強力な兵器を受け取るためには相応の時間が必要である。
ロイター通信はクレバ(Dmytro Kuleba)外相のコメントを引用し、「ウクライナは現在、反攻に必要な兵器を持っている」と伝えたが、反攻が始まったかどうかについてはコメントしなかったようだ。
ウクライナ政府は反攻に関する一般市民の憶測が自軍に不利に働きかねないとして、警告を発している。
ウクライナ国防省は4日に公開した映像の中で、「計画は沈黙を好む。開始の発表はない」と市民に呼びかけた。映像に登場するウ軍兵士は唇に指を当て、市民に不必要な情報を発信しないよう暗に呼びかけている。