◎一部のイスラム過激派組織はワクチンを「西洋の陰謀」「イスラム教徒を不妊化するウイルス」などと呼んでいる。
パキスタンの警察当局は16日、武装勢力が北西部タンク地区のポリオワクチン接種会場を襲撃し、警察官2人を射殺したと発表した。
警察の報道官によると、医療関係者にケガはなかった。
一部のイスラム過激派組織はワクチンを「西洋の陰謀」「イスラム教徒を不妊化するウイルス」などと呼び、接種会場や医療関係者をしばしば標的にする。
パキスタンはポリオが流行している数少ない国のひとつである。隣国アフガニスタンでもポリオが流行しており、国連主導のワクチン接種キャンペーンが進められている。
事件はアフガンと国境を接するタンク地区郊外の接種会場で発生した。
警察によると、武装勢力の戦闘員2人は近くの水路に身を隠し、警察官に至近距離から発砲したのち、バイクで逃走したという。
パキスタンでは米CIA(中央情報局)がアルカイダの創設者ビンラディン(Osama bin Laden)を追跡するために偽のワクチン接種活動を行ったことで、ワクチン反対運動が高まった。
世界保健機関(WHO)はポリオの撲滅を目指し、主に貧しい国々でワクチン接種キャンペーンを行っている。
ポリオ(急性灰白髄炎)は脊髄性小児麻痺とも呼ばれ、5歳以下の子供がかかることが多く、麻痺などを引き起こし、死に至ることも珍しくない。死亡率は地域によって異なるがワクチン未接種の小児で2~5%、成人は15~30%、妊婦はさらに高いと推定されている。
パキスタンでは今年4月、約15カ月ぶりにポリオ患者が確認され、その後、13人の感染が報告された。感染者はすべて、アフガンと国境を接する町の住民だった。
米国では先月、10年ぶりにポリオ患者が報告された。
イギリスでも6月、ロンドンの下水からポリオウィルスが検出されたことを受け、児童約100万人を対象とする接種キャンペーンが始まった。