◎現職のケニヤッタ大統領はかつての政敵である野党党首オディンガ議員を後継者に指名している。
ケニアで9日、総選挙の投票が始まり、多くの有権者が投票所に足を運んでいる。
投票所には大統領、上下両院議員、知事、地方議員用の投票ブースが設置されている。
有権者の最大の関心事は新大統領である。候補者たちはインフレ、失業、汚職問題で舌戦を繰り広げた。
現職のケニヤッタ(Uhuru Kenyatta)大統領はかつての政敵である野党党首オディンガ(Rila Odinga)議員を後継者に指名している。オティンガ氏が当選すれば、同国史上初の女性副大統領が誕生する。
一方、ケニヤッタ氏の政策に批判的な現職のルト(William Ruto)副大統領は中国寄りの政策を転換すると表明し、支持を集めている。
地元メディアによると、オティンガ氏とルト氏の支持率は拮抗しており、勝負は決選投票に持ち越されるかもしれない。
決選投票に進むのは有効票の25%以上を獲得した候補のみ。世論調査によると、他の2候補は決選投票に残れそうにない。
一方、地元メディアによると、総選挙前に行われたいくつかの地方選挙で投票用紙の取り違えが報告されたという。一部の有権者は2017年のような事態になるのではないかと懸念を表明している。
2017年の大統領選では、選挙管理委員会が投票用紙の電子送信に関する法律を守っていなかったと最高裁が判断し、無効とされた。
最高裁は「違法行為と不正が確認された」と裁定し、選挙管理委員会を厳しく非難した。
この選挙でケニヤッタ氏に敗れたオティンガ氏は政府を糾弾し、野党支持者による乱闘が発生。10歳の少女を含む数人が警察の取り締まりで死亡した。
紆余曲折の末再選挙が決まったものの、オティンガ氏がこれに異議を唱えボイコットを表明。選挙管理委員会は野党の主張を拒否したため、またしても乱闘が発生し、死者が出た。
2017年の大統領選を担当した選挙管理委員会のチェブカティ(Wafula Chebukati)委員長は、「今回の集計はトラブルなく行われる」と何度も有権者に呼びかけてきた。
今回の選挙はオディンガ氏とルト氏の一騎打ちになるだろう。
オディンガ氏は支持者から「ババ」の愛称で呼ばれる野党党首で、5回目の大統領選挑戦となる。
一方、自らを「ハスラー」と呼ぶルト氏は国内で働いている中国人を国外退去させると発言し、物議をかもした。
ルト氏は中国を「ケニアを支配する王朝」と呼び、開発途上国に対する「債務トラップ政策」を厳しく批判している。ルト氏は当選した暁には同国の債務推定700億ドルを一掃すると約束している。
中国はケニアに数十億ドル規模の融資を提供している。その多くがインフラプロジェクト関連で、高速道路や高速鉄道が建設された。これらの投資は中国人労働者の流入を促し、ナイロビを含む主要都市には中国人居住エリアが建設された。
選挙戦は争点が多いものの、民族と忠誠心が結果に大きな影響を与えるかもしれない。複数政党制の時代になって初めて、主要候補者の中に国内最大の民族キクユ族の出身者がいないのである。
しかし、オティンガ氏とルト氏はキクユ族の票が結果を左右すると理解しており、ランニングメイトにキクユ族の議員を選んだ。
オティンガ氏が勝利すれば、カルア(Martha Karua)議員が同国初の女性副大統領に就任する。女性がランニングメイトに選ばれたのも今回が初めてである。
ルト氏が勝利すれば、経験豊富なガチャグア(Rigathi Gachagua)議員が副大統領に就任する。
有権者は指紋をスキャンして本人確認を行うが、機械に不具合が生じた場合は、事前に送付された投票用紙で投票できる。
投票時間は9日の現地時間6時~17時まで。各投票所の係員は集計結果を撮影し、それと投票用紙を選挙管理委員会の最終集計センターに送る。
同委員会は透明性を確保するため、メディア、政党、市民団体を含む監視員の監視のもと、集計を行う。
候補はメディアの出口調査で有利と分かった場合も、勝利を宣言することはできない。同委員会は最終集計センターでデータをチェックし、問題がないことを確認したうえで、勝者を発表する。
候補者は公職選挙法に基づき、立候補時に選挙結果を尊重すると誓う必要がある。