◎ふたりのハリウッド・スターは6週間にわたる裁判の中で全く異なる主張を展開し、全米を困惑させた。
元カリブの海賊である米国のジョニー・デップ(Johnny Depp)は1日、女優のアンバー・ハード(Amber Heard)に対する5000万ドルの名誉棄損裁判で劇的な勝利をもぎ取り、大ヒット映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」フランチャイズの復活と、映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズへの復帰に向けた扉を開いた。
バージニア州フェアファックスの民事陪審員はジョニーの訴えを認め、元妻に1500万ドルを支払うよう命じた。
また陪審員はアンバーの3つの反訴のうち1つを認め、ジョニーに200万ドルを支払うよう命じた。
ジョニーはワシントン・ポスト紙が2018年に掲載した記事の中で、アンバーが「家庭内暴力を(受けた女性を)代表する公人になった」と主張したことに憤慨し、訴訟を起こした。
アンバーは記事の中でジョニーの名前には触れていないが、ジョニーは記事のせいで名誉、名声、ファン、「パイレーツ・オブ・カリビアン」フランチャイズ、「ファンタスティック・ビースト」シリーズを失ったと主張していた。
ふたりは2011年に公開されたコメディ映画「ラム・ダイアリー」の撮影で意気投合し、2015年2月に挙式、血みどろの結婚生活を経て、2年後に離婚した。
ふたりのハリウッド・スターは6週間にわたる裁判の中で全く異なる主張を展開し、全米を困惑させた。
陪審員はふたりの不幸な結婚生活と下品な暴力を精査させられたが、今回の裁判の争点は暴力ではなく、ポスト紙の記事がジョニーの名誉を毀損したかどうかだった。
米メディアの調査によると、全米の視聴者はウクライナ侵攻や今月結審する予定の最高裁中絶裁判より、ジョニー&アンバーのメロドラマに注目していたという。
裁判はテレビとオンラインでライブストリーミングされ、ユーチューブの視聴回数は非公式の動画を含めると数十億回に達した。
陪審員は1日、アンバーの結婚に関する発言は「虚偽」であり、アンバーは「悪意を持って行動(ポスト紙に寄稿)した」と評決を下した。
しかし、アンバーの主張も一部認め、ジョニーの弁護士に名誉を傷つけられたという訴えを支持した。
評決が言い渡されると、裁判所周辺に集まったジョニーの応援団は「ジョニー!ジョニー!ジョニー!ジョニー!」と大合唱した。
ジョニーは法廷にいなかったが、声明で「人生を取り戻した」と喜びを語っている。広報担当によると、ジョニーはイギリスで評決を聞いたという。
ジョニーはイギリスのスーパースター、ジェフ・ベック(Jeff Beck)さんのコンサートにサプライズ出演し、そのままイギリスに滞在している。
ジョニーは声明の中で、「陪審員は私の人生を取り戻してくれました...真実は決して滅びない」とと述べている。
またジョニーは、「このような状況の中、私が真実を伝えようとしたことが、同じ境遇にある人たちの助けになればと思いますし、それを支える人たちが決してあきらめないことを願っています」と述べ、喜びをあらわにした。
一方、沈痛な面持ちで評決を聞いたアンバーは弁護士を通じて、「胸が張り裂けそう」と不満を表明した。
「とても悲しいです。また、私は米国人に与えられた権利が奪われたように見えることに愕然としています。自由、そして公然と話す権利を...」
またアンバーは、「この判決が他の女性にとって何を意味するのか...失望しています。これは後退です。声を上げた女性が公の場で恥をかかされ、屈辱を受ける可能性があった時代に逆戻りするのです」と懸念を表明した。
主要メディアによると、アンバーの弁護団は判決を不服とし、控訴する意向を示しているという。
今回の評決はジョニーの未来に希望の光を灯す可能性がある。
ジョニーは2年前、英タブロイド紙サン(The Sun)に「妻を殴打する男」と報じられたことに憤慨し、名誉棄損裁判を起こしたものの、ロンドンの判事に「記事はおおむね真実」と判決を言い渡され、敗走した。
ソーシャルメディアにはカリブの海賊ジャック・スパロウの再登場を期待する投稿が多数寄せられている。
アンバーは来年公開の予定の映画「アクアマン2」に出演する。