致命的な爆発

ベイルートでの壊滅的な爆発は、非常に厄介な事実を暗示している。

ベイルート港湾エリアの倉庫に保管されていた2,750トンもの硝酸アンモニウムは、長年不完全な状態で放置され、爆弾になった

フィリピン、ウクライナ、ジョージア、リビア、ギニアビサウなどには、過去と現在の紛争によってもたらされた危険な爆発物や爆弾が山のように放置されている。

いつ爆発するか分からない危険な爆発物が住宅地のすぐ近くにあるとしたら、そこで暮らす人々は生きた心地がしないだろう。

スイスのジュネーブに本部を置く監視機関、Small Arms Survey(SAS)によると、1979年から2020年8月までの間に約30,000人が放置された爆弾や爆発物の爆発に巻き込まれ死亡もしくは負傷したという。

SASが記録した606件の事例の中で、約75%が国有の備蓄に関係している。2012年にコンゴ共和国ブラザビルで発生した大爆発では500人以上が死亡、甚大な被害をもたらした。

イギリスの地雷除去慈善団体The HALO Trust(非営利団体)のシニアディレクターを務めるサイモン・コンウェイ氏はBBCの取材に対し、「まず、爆発物の放置地域が危険である、と政府に認めさせることが重要である。残念なことに、爆発物を放置する国の指導者たちは、実際に爆発が発生するまで問題を放置する傾向にある」と述べた。

コンウェイ氏は準備を整え、爆発物を適切に処理することが重要だと強調し、以下のように述べた。

「適切な専門知識を持つプロフェッショナルを集め、近くに住宅地があれば一時的に避難してもらう。必ず爆発物が放置されているエリアおよび周辺の安全を確保しなければならない

ベイルートでの爆発を受け、同じような状況下にある地域は、今すぐ放置されている爆発物への対策を進めなければならない。

爆発物の専門家が「時限爆弾を放置している」と見なす地域は、次の通りである。

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致命的な爆発の解剖学

フィリピン

マニラ湾の中にある島には、木々に覆われたジャングル、ヘビ、そして第二次世界大戦時に投下されたアメリカ製の爆発物などが大量に放置されている。

錆びた砲弾、弾薬、迫撃砲、その他の発射物や爆弾が足元に散らばっている。さらに、爆弾と弾薬を積み込んだ箱が天井まで積み上げられ、木箱はボロボロの状態だ。

The HALO Trustは、カバロ島およびその周辺エリアには合計160万個の爆発物があると推定。それらは、コレヒドールの地元空港および、マニラ湾の船舶に影響を与える可能性がある。

フィリピン軍と共に現場を視察したコンウェイ氏は、20万個の対空砲弾を保管する小屋について、「砲弾は箱に保管され、全て未使用。爆発すれば、間違いなく空港に被害を与えるだろう」と述べた。

首都マニラの近くには、第二次世界大戦関連の危険な爆発物保管庫が他にも存在する。また、それらの近くには海軍基地の現役砲弾庫もあり、爆発がもたらす影響は計り知れない。

ベイルート港で発生した悪夢は、首都マニラの当局関係者に恐怖を与えた。

フィリピン海軍はThe HALO Trustと協議し、放置された爆発物の処理方法について現在話し合いを行っている。

ギニアビサウ

西アフリカのギニアビサウは、いつ爆発が起きてもおかしくない危険物を放置している。

同州内にはソビエト連邦の航空機爆弾が保管されている。しかし、それらは住宅地の中心付近にあり、保管庫(小屋)は熱と湿度で著しく腐食、危険極まりない状況下にある。

一部の爆弾は1950年代製のもので、非常に不安定な状態だという。

最も危険な保管庫は、ギニアビサウ第二の都市、約22,500人が暮らすバファタの隣にある。

政府とThe HALO Trustは、これらの爆発物を処理する方法について、2005年から協議を進めてきた。

現在、爆発物を安全に保管できる倉庫の建設が始まったものの、完了の目途は全く立っていない。

リビア

リビア国内は、ムアンマル・アル=カッザーフィー政権を打倒した2011年の革命以来、武器や軍需品に占領されてしまった。

いつ使うか分からない武器、弾薬、爆発物は、必要とする者、団体、テロ組織などに売却される。

2020年5月6日、ミズラータの外の弾薬庫で爆発が発生。その後、ミサイル、ロケット、航空機爆弾が爆発し、影響は広範囲に拡大。爆発は数日間続き、死者数はいまだに分かっていない。

The HALO Trustは、リビア国内の不発弾、使わなくなった武器などの安全確保に取り組んできた。

今、同国内で最も危険な爆発の危機にさらされている地域は、20,000人以上が暮らすミズダと呼ばれる町。ここにはカッザーフィー政権時代に造られた武器庫がある。

なお、これらを処理するためには、コロナウイルスによって引き起こされた制限および、現在世界一危険なエリアと呼ばれる内戦地帯の砲火をくぐり抜けねばならない

ウクライナ

ウクライナには、旧ソビエト連邦時代の爆発物や武器などが多数投棄されている。

2017年、東部にあったミサイルと砲弾を保管する巨大武器庫が爆発。爆心地から10km以内に住んでいる人々約20,000人が避難した。なお、これはひとりの男が意図的に起こしたテロである。

同年、推定32,000トンの弾薬が爆裂し、巨大な火の玉が天高く舞い上がった。爆発の様子は、はるか遠くでも確認できたという。なお、死者数および負傷数は公表されていない。

同じく旧ソビエト連邦のカザフスタンやウズベキスタンも、放置された爆発物の処理に苦心している。

ウクライナの弾薬庫で大規模爆発

グルジア共和国アブハジア

2017年8月、グルジア共和国アブハジア内で、2,000トン以上の爆弾、弾薬などを保管していた倉庫が突然爆発。衝撃波は12kmも離れた地域にまで届き、辺りは焼け野原になった。

この爆発後、The HALO Trustは地域の後片付けを行っている。なお、影響を受けた地域の3分の1がいまだに危険な状態だという。

ベイルート港湾エリアの倉庫にあった硝酸アンモニウム2,750トンは、正しく保管されていなかった。

不安定な状態の爆発物を安全に保管できていない地域は、死と隣り合わせの状況にあることを認識すべきだろう。

「私たちはベイルートの悲劇から学習しなければならない。高性能爆弾をボロボロの木箱の中で長期間保管すれば、いずれ何かが起きる。手遅れになる前に、これらの備蓄を安全かつ適切に処理しなければ、同じような悲劇が繰り返されるだろう」とコンウェイ氏は述べた。

アブハジア:弾薬庫爆発

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