既存のステロイド系抗炎症薬、デキサメタゾン

イギリスの専門家によると、低用量のステロイド系抗炎症薬、「デキサメタゾン」は、コロナウイルスとの戦いにおける起死回生の一手になる可能性が極めて高いという。同薬を使用した治療法テストは、名門オックスフォード大学のチームが率い、世界最大規模の体制で実施された。

デキサメタゾンは、人工呼吸器を装着した患者の死亡リスクを約3分の1にした。さらに、それ以外の軽症患者においては、死亡リスクが約5分の1にまで低下したという。

仮に同薬が3月時点からイギリス全土で使用されていたとすると、最大5,000人の命を救えた可能性がある、と研究者たちは言う。

さらに、たくさんの患者を抱える貧しい国々にも大きな利益をもたらす可能性がある。イギリス政府は200,000人分のデキサメタゾンを備蓄しており、国民保健サービス(NHS)も同薬を患者に提供する予定とのこと。

ボリス・ジョンソン首相は、「注目すべき研究成果である。デキサメタゾンは十分に確保できており、我々は第二波に備え必要な措置を講じた。世界を揺るがすビッグニュースだ」と述べた。

同国の最高医療責任者を務めるクリス・ホワイティ教授は、全世界の人命を救うと語った。

デキサメタゾンは1957年に発見、1960年代初頭から使用されてきた。今では関節炎、喘息、皮膚などの様々な炎症を軽減する目的で患者に投与されている。また、医者の指示に従い、用法と要領をしっかり守れば、命に係わる重大な副作用が現れる可能性も低いと言われている。

オックスフォード大学の行った試験によると、同薬を投与したコロナウイルス患者20人中19人が入院することなく回復したという。入院中の患者であれば、そのほとんどが回復、人工呼吸器を使っていた者も改善の兆しが見られた。

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世界中に流通し、安価で入手可能

今回の試験では、約2,000人の入院患者にデキサメタゾンを投与。そして、投与していない約4,000人の入院患者と比較された。

人工呼吸器を装着している患者の場合、死亡リスクは40%から28%に減少した。

人工呼吸器を必要としない患者の場合、死亡リスクは25%から20%に減少した。

オックスフォード大学主任研究員のポーター・ホービー教授はBBCの取材に対し、「デキサメタゾンは、死亡リスクを低減させることが分かった唯一の治療薬である。その効果は素晴らしく、本当に大きな進歩だ」と述べた。

同主任研究員のマーティン・ランドレイ教授は、「たくさんの命を救うことができる、と試験結果は示している。1日当たりの患者負担は5ポンド(約670円)。10日間デキサメタゾンを投与しても、50ポンド(約6,700円)しかかからない。そして、この薬は世界中に流通している」と述べた。

またランドレイ教授は、入院患者に遅滞なく適切な量を投与することが大切と付け加えた。ただし、同薬が素晴らしい効果をもたらすと分かっていても、購入し自宅に持ち帰るべきではない。

デキサメタゾンは症状の出ていない患者に投与すべきでなく、また、ウイルスの感染を防ぐものでもない。あくまで治療薬と認識し、医者の指示する適切な量を投与することが大切だ。

コロナウイルスの死亡リスクを低下させる最初の治療薬は、世界中が開発を進める高価な新薬ではなく、1957年に発見された既存の安価なステロイド系抗炎症薬だった。

今回の試験結果により、世界中の患者がすぐに恩恵を受けることができると分かった。デキサメタゾンは1960年初頭から使用され、関節炎や喘息に苦しむ患者を助けてきた。

現時点において、人工呼吸器を必要とするコロナウイルス患者の約半数が死亡している。そのため、この死亡リスクを3分の1に低下させることは非常に大きな意味を持つ。

同薬は集中治療中の患者であれば静脈内、重症度の低い患者には錠剤で投与される。

これまでのところ、コロナウイルスに対し有効性の認められた他の薬は、エボラ出血熱治療に使用されているレムデシビルのみ。感染症例期間を15日から11日に短縮できることが示された。しかし、死亡リスクを低減させた、という強力な研究結果はでておらず、供給量も限られており、かつ販売価格も発表されていない。

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