ヒドロキシクロロキンはコロナウイルスの死亡率を上昇させることが判明

世界保健機関(WHO)によると、マラリア治療薬ヒドロキシクロロキン、通称「トランプドラッグ」にコロナウイルスを治療する効果が期待できるか臨床試験を行っていたが、安全性の懸念から中止されたと発表した。

先週、医学雑誌ランセットの研究員は、ヒドロキシクロロキンでコロナウイルス患者を治療する利点がなく、また、それを服用すると患者を死に至らしめる、死亡者数を増やすことになるだろう、と述べた。

トランプ大統領の愛飲するこの薬は、マラリア、ループス腎炎(じんえん)、関節炎などを改善する。しかし、それ以外の症状、疾患、ウイルスの治療に使用することは推奨されておらず、臨床試験の結果、危険であることが判明した。

WHOは様々な薬物の臨床試験を実施し、疾患の治療に有益なものを評価、薬の持つ可能性を調査し、結果を世界に公表している。トランプ大統領が個人の見解だけで有益と判断、SNSなどで情報を拡散したヒドロキシクロロキンについても同様である。

25日、WHOの関係者は、「安全性評価によってヒドロキシクロロキンの安全性が確認されるまで臨床試験は行わず、調査対象からも除外する」と述べた。

ランセットによると、約96,000人のコロナウイルス患者のうち、約15,000人にヒドロキシクロロキン、それに関連するその他のクロロキン薬が単独もしくは抗生物質と一緒に投与された。結果、それらを投与しなかった患者よりも死亡率が上昇、心房細動などを発症する可能性も高くなることが判明した。

薬を投与した患者の死亡率は、ヒドロキシクロロキンが16.4%、抗生物質とクロロキン薬の組み合わせでは、さらに死亡率が上昇したという。これにより、同薬は臨床試験以外で使用してはならない、という結論に達した。

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トランプドラッグ

今回の臨床試験中止判断に至る以前から、ヒドロキシクロロキンの危険性は認識されていた。マラリア患者に投与すれば命を救うことができるものの、それ以外のウイルスに効果はないと科学者たちは述べていた。

しかしトランプ大統領は、科学者たちの警告を無視し、「クロロキンはコロナウイルスを予防する。私は以前からこの薬を摂取している。副作用などないし、今もピンピンしているだろう」などと持論を展開、根拠のない情報をSNS上に拡散した。

WHOは、トランプ大統領が使っているなら大丈夫だろう、と判断した人々がヒドロキシクロロキンを服用するのではないかと懸念していた。

トランプ大統領の発言を否定した「生物医学先端研究開発局(BARDA)」元局長のリック・ブライト氏は、「大統領が根拠もなくヒドロキシクロロキンを服用し、それの注目度を高める行為は、ワクチン開発の最前線に立つ研究者や科学者の集中力を削ぐ」と述べた。

またアメリカ食品医薬品局(FDA)も、ヒドロキシクロロキンがいくつかの危険な副作用をもたらす可能性がある、と警告していた。

ブラジルのボルソナロ大統領はトランプ大統領の考えに同調、フェイスブックで「ヒドロキシクロロキンはコロナウイルスを治癒する。我々もそれを手にする時が来た」と主張した。しかし、誤った情報を拡散した(ガイドライン違反)として、動画は強制的に削除された。

3月末にトランプドラックはSNS上に拡散、大統領の肯定的なコメントも影響し、アメリカ国内における同薬の処方件数が7倍近くまで激増した。

欧州、アフリカ、アジア、南アメリカで同薬の臨床試験が現在も継続されている。しかし、これまでのところ、コロナウイルスの治療、予防に効果があると発表した国はない。

同薬の臨床試験に関するレポート著者であるオックスフォード大学のコーム・グビニギー氏はBBCの取材に対し、「その有効性を正確に評価するためには、より大規模で高品質な臨床試験が必要である。腎臓や肝臓への深刻な副作用についても、確実かつ正確に調査しなければならない」と述べた。

ブラジルはヒドロキシクロロキンの規制を緩和、重篤な患者だけでなく、軽度のコロナウイルス患者にも処方している。フランス政府も処方を許可したが、医療監視機関はそれに伴う副作用に注視しなければならない、と警告した。

インド保健相は、医療従事者や医師の処方箋がある場合に限り、同薬の使用を許可している。しかし、政府の研究機関は処方箋さえあれば同薬を無制限に服用できることに対し懸念を表明している。

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