◎父はギャングではありません。ブケレ大統領、警察に過ちを認め、父を釈放し、謝罪するよう命じてください。
エルサルバドルのブケレ(Nayib Bukele)大統領がプロサッカー選手の懇願を受け、その父親の釈放を許可した。
同国代表でプレーするディアス(Marcelo “El Chiky” Díaz)選手は16日、X(旧ツイッター)に声明を投稿。「私の父が3月30日の試合を見に行く途中、ギャングと間違えられて警察に逮捕されてしまいました」と書き込んだ。
ディアス氏はブケレ氏に直接釈放を要請。「父はギャングではありません。ブケレ大統領、警察に過ちを認め、父を釈放し、謝罪するよう命じてください」と懇願した。
2月の大統領選で大勝したブケレ氏はこの投稿に反応していない。
しかし、ディアス氏がXに訴えを投稿した翌日、父親は晴れて自由の身となった。
地元テレビ局は関係者の話しとして、「警察がディアス氏の弁護士らに誤認逮捕であると認め、謝罪した」と伝えている。
その後、ディアス氏はXにコメントを投稿。「父は元気で、収監されている間もよくしてもらったと言っています。どうもありがとう」と書き込んだ。
当局はこの釈放に関するコメントを出していないが、国際社会で影響力の拡大を目指すブケレ氏の戦略に沿ったものと思われる。
ブケレ氏は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。
それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は8万人近くに達した。そのうち約7000人は証拠不十分で釈放されている。
非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。
警察の統計によると、国内で昨年確認された殺人事件は214件。2015年に記録した6656件の30分の1にまで減少した。
「世界で最もクールな独裁者」を自負するブケレ氏はこの減少率を「永遠に破られない世界記録」と呼んでいる。