◎首都ハバナの市民は昨年7月、食料不足や不況に抗議する街頭デモを行った。このデモはSNSで瞬く間に広がり、数万人がハバナに集結した。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は2日、キューバ共産党が今週施行した刑法に深刻な懸念を表明し、表現の自由や平和的な抗議デモが「根絶やし」にされる可能性があると警告した。
この刑法は共産党が1987年に施行した法律を修正するもので、ジャーナリスト、人権活動家、抗議者、SNS利用者、反政権派議員などが取り締まりの対象となる。
首都ハバナの市民は昨年7月、食料不足や不況に抗議する街頭デモを行った。このデモはSNSで瞬く間に広がり、数万人がハバナに集結した。
国営テレビによると、刑法は「公務執行妨害」「抵抗」「国家象徴(国旗など)の侮辱」などの取り締まりを強化し、違反者には実刑を科すようだ。
また、デジタル犯罪カテゴリーを新たに設け、「共産党が虚偽とみなす」情報をオンラインで流布した場合、2年以下の懲役刑に科すとしている。
さらに、国家とその憲法秩序に反する活動(デモ、SNS活動など)の資金の取り扱いも犯罪となる。違反者は禁固4年~10年を言い渡される可能性がある。
HRWの南米支部は独立系ジャーナリストや非政府組織も取り締まりの対象になる可能性があると警告している。
共産党はこの刑法を「近代的」で「包括的」とし、ジェンダーに基づく暴力や人種差別に対する罰則を強化すると主張している。
最高裁長官は2日、国営テレビのインタビューで、「この刑法は抑圧ではなく、我が国の社会的平和と安定を守るためのものだ」と語った。
しかし、HRWは刑法を「抑圧」「検閲」と非難し、キューバにわずかに残された反対を表明するツール(報道やSNSなど)が取り締まりの対象になると警告した。
またHRWは「刑法は極めてあいまいであり、共産党の解釈ひとつでデモやSNS投稿が取り締まりの対象になる」と指摘した。
キューバは昨年のデモにおける参加者の扱いで西側諸国から批判を浴びている。
共産党が今年初めに公表したデータによると、デモ参加者計790人が扇動、暴力、公務執行妨害、窃盗などの罪で起訴され、そのうち500人が実刑判決を受けたという。