SHARE:

ユニセフ報告:子どものオンライン性被害「5人に1人が経験」SNS上6割

今回のユニセフ報告を総合すると、「子どものオンライン性被害、5人に1人」という見出しは、数字そのものはユニセフの推計に基づいているが、その対象範囲を省略すると誤解を招く表現になり得ると評価できる。
スマートフォンを見る女児(shutterstock)
現状(2026年9月時点)

2026年9月3日、ユニセフ(国連児童基金)は、デジタル技術を介した子どもの性的搾取・性的虐待について新たな報告書「Through Children’s Eyes: How Digital Technologies Enable Child Sexual Abuse」を公表した。報告によれば、調査対象となった21か国で、12~17歳のインターネット利用児童のうち、年間約2,000万人、すなわちほぼ5人に1人が、少なくとも一つの「技術を介した性的搾取・虐待」を経験したと推計されている。

この数字が注目される理由は、被害が一部の特殊なウェブサイトや匿名性の高い犯罪空間だけで発生しているわけではない点にある。ユニセフによれば、約60%の事例がFacebook、Instagram、Snapchat、TikTok、WhatsAppなどの主要SNS上で発生しており、さらにオンラインゲームも14%を占めるなど、子どもが日常的に利用するデジタル空間そのものが被害の舞台となっている。

もっとも、「子どもの5人に1人が世界中でオンライン性的被害を受けている」と理解するのは正確ではない。この調査は21か国の12~17歳のインターネット利用児童を対象としたものであり、世界のすべての子どもを直接調査したものではないため、「5人に1人」は調査対象国におけるインターネット利用児童についての推計値として理解する必要がある。

調査の基本概要

今回のユニセフ報告は、約2万1,000人の12~17歳のインターネット利用児童を対象とした調査データと、子どものころに性的被害を経験した100人以上の若者への詳細なインタビューを組み合わせている。対象国はアフリカ、アジア、ラテンアメリカ・カリブ地域、東ヨーロッパ、南アジアなど21か国に及び、単一地域の特殊事情ではなく、異なる社会・文化・経済環境における共通した傾向を捉えることを目指した調査である。

報告でいう「技術を介した性的搾取・虐待」は、単純に「ネットで知らない大人から性的メッセージが届いた」といった狭い概念ではない。望まない性的コンテンツを見せられること、性的な会話や画像の送信を迫られること、本人の性的画像を同意なく共有されることなど、デジタル技術が児童への性的被害を可能にしたり、拡大させたりする幅広い行為が含まれている。

調査結果を具体的な人数に置き換えると、その規模はさらに明確になる。ユニセフは、1年間に1,500万人を超える子どもが望まない性的コンテンツにさらされ、約900万人が望まない性的会話や性的画像の共有を求められ、約400万人が本人の同意なしに自分の性的画像を共有されたと推計している。

さらに2026年の報告で特に注目されるのが、生成AIなど新しい技術の悪用である。ユニセフ関連資料では、約110万人の子どもについて、本人を描写したAI生成の性的画像または動画が作成されたと報告されており、従来の「撮影された画像を拡散する」という被害だけでなく、本人が実際には撮影されていなくても性的画像を生成される危険が拡大していることを示している。

浮き彫りになった主な事実とデータ分析

今回の調査で重要なのは、被害の「件数」だけではなく、被害がどのようなデジタル環境で発生し、誰によって行われ、どの程度社会に認識されているかである。特に、SNSが約6割を占めること、加害者の約57%が被害児童にとって既知の人物だったこと、そして警察・ソーシャルワーカー・相談窓口などへの報告が1%未満だったことは、オンライン性的被害の構造を考えるうえで極めて重要な数字となる。

ここで「SNS上6割」という報道表現についても注意が必要である。これは「被害を経験した子どもの6割がSNSを使っていた」という意味ではなく、確認された技術媒介型性的搾取・虐待の事例の約60%で、主要SNSが被害の場として使われていたという意味であるため、数字の母集団を区別して読む必要がある。

また、ユニセフは実際の被害規模が今回の推計より大きい可能性を指摘している。子ども自身が被害を申告しないケースが非常に多く、4割を超えるケースでは誰にも被害を打ち明けていなかったとされるため、アンケートに回答できた被害経験者だけを基礎にした推計には、把握できない被害が含まれていない可能性がある。

つまり「約2,000万人」という数字は、被害の上限を示す数字ではなく、現時点で調査によって把握・推計できる規模を示す数字として理解する方が適切である。性的被害というテーマそのものに伴う羞恥、恐怖、自己責任感、家族や学校への不安などが回答や相談を妨げる以上、実態と統計上の数字との間には一定の乖離が存在すると考えられる。

① 「5人に1人」という深刻な被害率

「5人に1人」という数字は、今回の報告を象徴する最も衝撃的な指標である。対象となったインターネット利用児童の約20%が、1年間という比較的短い期間に、何らかの技術媒介型性的搾取・虐待を経験したことになるからである。

仮に20人のインターネット利用児童が同じ規模の集団にいたとすれば、そのうち約4人が何らかの被害を経験したという計算になる。もちろん、この割合を個々の学校や家庭にそのまま当てはめることはできないが、オンライン上の性的被害が「ごく一部の子どもだけが遭遇する特殊な犯罪」ではなく、児童を取り巻く一般的なデジタル環境の中に存在するリスクであることを示すには十分な数字である。

さらに深刻なのは、被害の種類が一種類ではないことである。望まない性的コンテンツへの接触、性的会話への誘導、性的画像の要求、画像の無断共有など複数の被害形態が存在し、これらが重なって発生する可能性もあるため、「5人に1人」という割合だけでは被害経験の複雑さを十分に表現できない。

そして、この被害率を「インターネットそのものが危険だから子どもを遠ざけるべきだ」という結論に直結させるのも適切ではない。ユニセフの報告が示しているのは、デジタル技術が子どもの教育、交流、娯楽を支える一方で、その普及した環境を悪用する者が存在し、現在のプラットフォーム設計や安全対策だけでは十分に被害を防げていないという構造的問題である。

この点から見ると、「5人に1人」という数字が突きつけている問題は、単なるネットマナー教育の不足ではない。子どもが日常的に使うデジタルサービスそのものを、どのように安全設計し、加害を早期に検知し、被害を受けた子どもが容易に助けを求められる仕組みを構築するかという、社会全体の課題なのである。

実態

今回の報告が示しているのは、オンライン上の性的被害が「特殊なサイト」に限定された現象ではないという事実である。ユニセフによれば、被害事例の約60%がFacebook、Instagram、Snapchat、TikTok、WhatsAppなどの主要SNSで発生し、さらに14%がオンラインゲーム上で発生していた。

この数字を単純に足せば、報告された技術媒介型性的搾取・虐待の約4分の3が、SNSまたはオンラインゲームという、子どもにとって日常的なデジタル空間に集中していることになる。ただし、これは「インターネット上のすべての被害の75%」という意味ではなく、ユニセフが分析した被害事例におけるプラットフォーム別の割合として理解する必要がある。

重要なのは、SNSが単に「犯罪者が子どもを探す場所」になっているのではないことである。写真や動画の投稿、コメント、フォロー、ダイレクトメッセージ、グループ機能、ライブ配信など、SNS本来のコミュニケーション機能そのものが、加害者による接近、信頼関係の形成、性的な要求、脅迫、画像の拡散などに悪用される可能性がある。

② 被害の温床となるSNSと具体的な手口

SNSが被害の温床になりやすい第一の理由は、「知らない人と接触できる」ことと「知っている人との関係を継続できる」ことが同時に成立する点にある。加害者は匿名または偽名のアカウントを作ることができる一方、被害児童についてはプロフィール写真、投稿内容、学校生活、友人関係、趣味などから多くの情報を収集できる。

ユニセフは、実際に偽アカウントやプライベートメッセージ機能などが被害を容易にする要素になっていると指摘している。つまり、SNSの問題は「匿名性」だけではなく、個人間の接触を極めて低いコストで成立させる設計そのものにあると考えられる。

加害者が最初から性的な要求を行うとは限らない。一般的には、趣味やゲーム、音楽、学校生活など子どもが関心を持つ話題から会話を始め、親しみを示したり、相談相手になったり、褒めたりすることで心理的な距離を縮めることがある。ユニセフも、加害者が子ども本人だけでなく、場合によっては養育者から信頼を得たうえで、性的な画像や動画を送らせることがあると説明している。

このような行為は、一般に「グルーミング」と呼ばれる過程と重なる。重要なのは、子ども側から見ると、最初の段階では必ずしも「犯罪者との接触」と認識できないことであり、むしろ友人関係や恋愛関係、相談関係に近い形で始まる場合がある点である。

主な手口

第一に挙げられるのが、性的画像や動画の要求である。最初は軽い写真を求め、徐々に性的な内容へと要求を強める場合があり、子どもが一度送信すると、それを材料としてさらに画像を要求したり、他人への拡散をほのめかして圧力をかけたりすることがある。

第二は、望まない性的コンテンツを送りつける行為である。ユニセフは、21か国で1,500万人を超える子どもが望まない性的コンテンツにさらされたと推計している。これは子ども自身が性的なコンテンツを探していたかどうかとは無関係に、他者から一方的に送りつけられるケースを含む。

第三は、性的な会話や画像の共有を強要する行為である。約900万人が、望まない性的な会話をしたり、性的画像を共有したりするよう求められたと推計されており、被害は「画像が拡散された」という最終段階だけではなく、その前段階の心理的圧力から始まっていることが分かる。

第四は、本人の同意なしに性的画像を共有される被害である。ユニセフは約400万人の子どもについて、自分自身の性的画像が同意なく共有されたと推計している。このタイプの被害では、一度画像がネット上に流出すると、コピーや再投稿によって被害が長期化する可能性があり、「削除すれば終わる」という単純な問題ではなくなる。

さらに2026年の報告で無視できないのが、生成AIの悪用である。ユニセフの資料では、子ども本人を描写した性的なAI生成画像・動画という新しい形態も問題になっており、現実に撮影された画像だけでなく、AIによって作り出された偽の性的画像によっても子どもが被害を受け得る環境になっている。

この変化は、オンライン性的被害の定義そのものにも影響を与える。従来は「子どもが実際に撮影され、その画像が流出する」という構図が中心だったが、生成AIの発達によって、「本人が撮影されていなくても本人の性的画像を作られる」という新しいリスクが生じているためである。

SNSという「接点」の問題

SNSの危険性を考える場合、「SNSだから危険」という単純な理解は避けなければならない。SNSは本来、友人との交流、教育、情報収集、自己表現など多くの利益をもたらすものであり、ユニセフ自身も子どもにとってデジタル技術が学習や交流の重要な手段になっていることを認めている。

問題は、その利便性を維持しながら、犯罪者が同じ機能を利用できることである。例えば「誰でもメッセージを送れる」「写真を簡単に共有できる」「新しいアカウントを作れる」「一度投稿した情報を大量に拡散できる」といった機能は、一般ユーザーには便利だが、加害者にとっても極めて有効な道具になり得る。

ここには、SNSの設計思想と児童保護との間に存在する緊張関係がある。ユニセフは以前から、インターネットが子どもの生活に深く入り込む一方、現在のデジタル環境が必ずしも子どもの最善の利益を中心に設計されているわけではないと指摘してきた。

特にSNSでは、短時間で関係を構築できることが重要である。現実社会ならば、見知らぬ大人が子どもと長時間接触するには物理的な制約があるが、オンラインでは時間や距離を超えて接触でき、複数の子どもに同時に接近することも可能になる。

オンラインゲームにも同様の構造が存在する。ユニセフによれば、今回分析された被害の14%がオンラインゲームで発生しており、ゲーム内チャットやボイスチャットなど、ゲームそのものとは別のコミュニケーション機能が被害の媒介となり得る。

したがって、対策をSNSだけに限定することも適切ではない。オンラインゲーム、メッセージングサービス、動画共有サービス、ライブ配信、AIサービスなど、子どもと他者を接続するさまざまなデジタル環境を一つの「児童保護」の問題として捉える必要がある。

SNS上の被害が特に深刻な理由

SNSで発生する被害には、現実世界の性的被害とは異なる特徴がある。その最大の特徴は、被害が時間的・地理的に拡大しやすいことである。

例えば、現実の対面関係で起きた被害であれば、加害者との接触を断つことで一定の距離を確保できる場合がある。しかし、性的画像がSNS上に投稿された場合、コピー、保存、再投稿、スクリーンショットなどによって、被害者がその場から離れても被害が継続する可能性がある。

さらに、被害児童自身が「誰が画像を持っているのか」「どこまで拡散されたのか」を把握できない場合もある。これは単なるプライバシー侵害にとどまらず、被害者に「いつまた画像が現れるか分からない」という継続的な不安を与える要因になり得る。

ユニセフの調査でも、被害を経験した子どもたちは恐怖、羞恥、混乱、孤立などを経験している。こうした心理的影響は、被害そのものだけでなく、「誰かに知られるかもしれない」「自分が責められるかもしれない」という二次的な不安によって増幅される可能性がある。

ここで重要なのが、SNSの普及率だけでは説明できない問題が存在することである。SNSを使う子どもが多いから被害件数も多いという側面は当然あるが、プラットフォームの設計、プライバシー設定、通報機能、年齢確認、コンテンツ監視、メッセージ機能などがどの程度児童保護を考慮しているかによって、被害リスクは変化し得る。

つまり、問題の核心は「子どもがSNSを使っていること」ではなく、子どもが利用することを前提とした安全設計が十分なのかという点にある。

「ネットの向こう側」だけを見てはいけない

ここまでで明らかになったのは、オンライン性的被害を「インターネット上にいる見知らぬ犯罪者から子どもを守る問題」とだけ捉えることには限界があるということである。被害の約60%が主要SNS上で発生し、14%がオンラインゲーム上で発生していることからも、被害は子どもたちが日常的に利用するサービスの内部に入り込んでいる。

さらに重要なのは、加害者が必ずしも「見知らぬ人物」ではないことである。今回の調査では57%の事例で、子どもがすでに知っている人物が関与していた一方、38%では加害者と最初にオンラインで接触していたとされている。

この数字は、次の分析において極めて重要になる。「オンラインの知らない人に注意すればよい」という従来型の安全教育だけでは、被害のかなりの部分をカバーできないからである。

③ 加害者の属性と「身近な存在」の脅威

オンライン上の子どもの性的被害を考える際、長く強調されてきたのが「知らない大人に注意する」という考え方である。もちろん、見知らぬ人物がSNSなどを通じて子どもに接近する危険は現実に存在するが、今回のユニセフ報告は、それだけでは被害の全体像を説明できないことを明確に示している。

21か国の調査では、技術を介した性的搾取・虐待の57%で、子どもがすでに知っていた人物が関与していた。そこには友人、恋愛関係にある相手、同年代の子ども、家族などが含まれており、「加害者=見知らぬ犯罪者」という単純な図式を大きく修正する必要がある。

一方、38%の子どもは加害者と最初にオンラインで接触していたと報告されている。つまり、オンライン上で初めて知り合った人物による被害も決して小さくなく、SNSなどのデジタル空間が、現実社会では形成されにくい新しい接触機会を作り出している。

ここで注意すべきなのは、57%と38%を単純に足して「95%が別々の二種類の加害者だった」と解釈してはならないことである。両者は「既知の人物だったか」と「最初の接触がオンラインだったか」という異なる軸の数字であり、同じ人物が複数のカテゴリーに該当する可能性もあるため、これらは加害者の構造を理解するための別々の指標として読む必要がある。

一般通念とのギャップ

従来型のネット安全教育では、「知らない人からメッセージが来ても返信しない」「知らない人に写真を送らない」「実際に会わない」といった対策が重視されてきた。これらは依然として重要だが、57%という数字が示すのは、子どもが「知らない人ではない」と認識している相手から被害を受けるケースが多数存在するという現実である。

例えば、友人関係や恋愛関係の中で性的画像を要求され、それを断りにくい状況になる場合がある。また、同年代の人物から画像を共有するよう求められたり、受け取った画像を別の場所へ拡散されたりする可能性もあり、加害者の年齢や立場だけでは被害の危険性を判断できない。

この点は、子どもに対する安全教育の方向性にも影響する。「知らない人に気をつける」という防御だけではなく、知っている相手から性的な要求をされた場合にも、それは不適切な行為であり、拒否したり相談したりしてよいという認識を育てる必要がある。

さらに、親や教師が「その相手は友達なのだから大丈夫だろう」と判断してしまう危険もある。オンライン上では、既存の人間関係がデジタル空間へ移動することで、現実の信頼関係が性的な圧力や画像の拡散に利用される場合があり、「知っている人だから安全」という前提そのものを見直す必要がある。

「身近な存在」であることが被害を見えにくくする

加害者が子どもにとって身近な人物である場合、被害を受けた側はさらに複雑な心理状態に置かれる可能性がある。相手との関係を壊したくない、周囲から信じてもらえないのではないか、家族や友人に知られたくない、といった感情が相談を妨げる要因になり得る。

ユニセフが今回の調査で強調しているのは、まさにこの「沈黙」の問題である。調査では、警察、ソーシャルワーカー、相談窓口などに報告された経験は1%未満であり、さらに4割を超えるケースでは誰にも被害を打ち明けていなかった。

これは、犯罪が存在しないことと、犯罪が統計に現れないことを区別する必要があることを示している。公的機関に報告されない被害は犯罪統計には十分反映されず、結果として「実際にはそれほど多くないのではないか」という誤った認識を社会に生み出す可能性がある。

この意味で、今回の「5人に1人」という推計でさえ、オンライン上の性的被害の完全な実数とは考えにくい。ユニセフ自身も、子どもによる未報告・未開示が多いため、問題の実際の規模はさらに大きい可能性があるとしている。

一方でSNSの特性も

ここまでを見ると、「SNSそのものが加害者を生み出している」という誤解も生じやすい。しかし、SNSはあくまでコミュニケーションのための技術であり、問題はその機能がどのような条件の下で悪用されるのかという点にある。

今回のユニセフ報告では、被害の約60%がFacebook、Instagram、Snapchat、TikTok、WhatsAppなどの主要SNS上で発生していた。オンラインゲームも14%を占めており、子どもが日常的に利用するサービスの機能や設計が、信頼関係を悪用した性的搾取・虐待を可能にする場合があると指摘されている。

特に重要なのが、SNSの「私的空間」と「公開空間」が連続していることである。公開投稿から人物を知り、コメント欄で接触し、その後ダイレクトメッセージへ移行するというように、接触から個人的なやり取りまでが一つのサービス内で完結することがある。

さらに、偽アカウントやプライベートメッセージ機能は、加害者が自分の身元を隠したり、子どもとの接触を周囲から見えにくくしたりするために悪用され得る。ユニセフも、こうした機能がオンライン上で初めて接触する加害者による被害を容易にする可能性を指摘している。

SNSのもう一つの特徴は、被害が「一対一」で終わらないことである。性的画像が一度デジタル化されると、保存、コピー、スクリーンショット、再投稿などによって、元の加害者とは別の人物へ広がる可能性がある。

その結果、最初の被害者と加害者の関係が切れた後も、画像や動画そのものが残り続ける可能性がある。これは対面型の被害とは異なるデジタル特有の問題であり、被害者にとって「いつ、どこで再び自分の画像が現れるか分からない」という継続的な不安につながり得る。

構造的な課題(なぜ被害が表面化・深刻化するのか)

ここまでのデータを総合すると、オンライン性的被害が深刻化する背景には、単一の原因ではなく、加害者、被害者、プラットフォーム、家庭、学校、社会制度という複数の要素が連鎖する構造があると考えられる。

第一に、デジタル空間では加害者と子どもの接触コストが極めて低い。物理的な距離に左右されず、SNSやゲームなどを通じて接触できるため、加害者が複数の子どもに接近することも可能になる。

第二に、子ども自身が被害を犯罪や虐待として認識できない場合がある。特に相手が友人や恋愛関係にある人物などの場合、「嫌だけれど関係を壊したくない」「断ったら嫌われる」といった感情が働き、被害を受けているという認識そのものが遅れる可能性がある。

第三に、デジタル環境では一度発生した被害を完全に終わらせることが難しい。画像や動画が保存・複製されれば、最初の投稿を削除しても別の場所で再び共有される可能性があり、被害の時間的な持続性が対面型の被害とは異なる。

第四に、被害者が相談した際に「なぜ送ったのか」「なぜ相手と連絡を取ったのか」と責められる可能性への恐怖も、沈黙を生む要因になる。ユニセフの調査では、被害を経験した子どもたちの証言から、恐怖、羞恥、混乱、孤立などの感情が確認されており、被害後の心理的負担が相談行動を難しくすることが示唆されている。

「相談できない」という問題

今回の報告で最も重大な数字の一つが、公的な支援機関などへの報告が1%未満という事実である。被害の約20%という高い発生率と、1%未満という極端に低い相談率を並べると、オンライン性的被害の問題が「発生件数」だけではなく、「発見されない構造」によっても深刻化していることが分かる。

さらに4割を超えるケースでは、子どもが誰にも被害を打ち明けていなかった。つまり、家庭、学校、友人、警察、相談窓口など、どの段階にも到達しない被害が相当数存在すると考えられる。

この状況では、警察による摘発件数やSNS企業の削除件数だけを見ても、問題の全体像を把握できない。むしろ「相談されなかった被害」をどう発見するか、そして子どもが安全に相談できる環境をどう構築するかが、政策上の重要課題になる。

被害は「ネット上だけ」の問題ではない

今回の報告書の重要な特徴は、デジタル技術を介した性的虐待を、オンライン空間だけに閉じた問題として扱っていないことである。ユニセフは「Technology-facilitated child sexual exploitation and abuse(テクノロジーを活用した子どもの性的搾取・虐待:TF-CSAE)」を、デジタル技術やプラットフォームが子どもの性的搾取・虐待を可能にしたり、増幅したりする現象として位置づけている。

これは極めて重要な視点である。例えばオンライン上で知り合った相手との接触が現実の対面接触へ発展する場合、デジタル技術は犯罪そのものというより、現実世界での加害を可能にする「媒介装置」となる。

逆に、現実の友人や恋人との間で発生した性的画像の問題が、SNSによって拡散されるケースも考えられる。この場合、起点はオフラインであっても、技術によって被害が増幅されるため、オンラインとオフラインを完全に分離して対策することには限界がある。

したがって必要なのは、「インターネット上の犯罪対策」だけではない。児童虐待対策、性暴力対策、学校教育、メンタルヘルス支援、SNS規制、個人情報保護、警察・司法制度などを横断した総合的な児童保護政策が求められる。

心理的影響というもう一つの重大な問題

被害の深刻さは、発生件数だけでは測れない。ユニセフによると、技術を介した性的搾取・虐待を経験した子どもは、そうでない子どもと比較して、自殺念慮・自殺行動が約4倍、自傷行為も約4倍多く、不安の自己申告水準も約11ポイント高かった。

もちろん、これらの数字から「オンライン性的被害が単独でこれらの心理状態を引き起こした」と因果関係を断定することはできない。家庭環境、既存の精神的ストレス、経済状況、対人関係など、複数の要因が関係している可能性があるためである。

しかし、被害経験と深刻な心理的問題との間に強い関連が確認されていることは、児童保護政策を考えるうえで無視できない。オンライン上で起きたから軽い、という考え方はデータによって否定される。

むしろ重要なのは、デジタル上の被害が子どもの現実生活へ直接影響し得ることである。学校生活、人間関係、家庭での生活、他者への信頼、自己評価などに長期的な影響を及ぼす可能性があり、単なる「スマートフォン上のトラブル」として処理することはできない。

今回の分析から明らかになったのは、オンライン性的被害の加害者像を「匿名の見知らぬ犯罪者」に限定することができないということである。実際には57%のケースで子どもがすでに知っている人物が関与しており、同時に38%では加害者との最初の接触がオンラインだった。

そして、約60%の被害が主要SNS上で発生していることから、問題は「危険な裏サイト」だけに存在するのではなく、子どもが日常的に利用するデジタルサービスの内部に存在している。SNSの便利なコミュニケーション機能が、同時に加害者による接近、信頼の悪用、性的要求、画像拡散などの手段にもなり得るのである。

相談の圧倒的な少なさ

今回のユニセフ調査で特に深刻なのは、被害経験の多さと比較して、相談・通報が極端に少ないことである。21か国の調査では、技術を介した性的搾取・虐待の経験のうち、警察、ソーシャルワーカー、相談窓口などの公的・専門的な機関に報告されたものは1%未満だった。

さらに、4割を超える被害が誰にも打ち明けられていなかった。これは単純に「相談窓口が利用されていない」という問題ではなく、被害を受けた子どもが、家族、友人、教師など身近な人にさえ被害を伝えられないケースが相当数存在することを意味する。

この数字を「被害を受けても相談しない子どもが悪い」という方向に解釈するのは誤りである。むしろ、相談しようとしても「誰に言えばよいのか分からない」「信じてもらえないかもしれない」「怒られるかもしれない」と感じる環境そのものが、被害の不可視化を生み出していると考える必要がある。

声を上げられない理由

ユニセフによると、子どもが被害について沈黙する最大の理由は、どこへ行けばよいのか、誰に相談すればよいのか分からないことだった。これは非常に重要な結果であり、相談窓口の存在を社会が一方的に「用意した」だけでは、実際の利用につながらないことを示している。

オンライン性的被害の場合、被害児童自身が「これは犯罪なのか」「自分にも責任があるのか」を判断できない場合がある。特に、知人や恋人など身近な人物との間で発生した場合には、相手との関係を壊すことへの恐怖や、周囲から責められることへの不安が相談をさらに難しくする。

また、性的画像を自分から送ったケースでは、子どもが「自分が送ったのだから警察に相談しても意味がない」と考えてしまう可能性がある。しかし、画像を送ったことと、その画像を脅迫、拡散、性的搾取などに利用することは別の問題であり、被害者側に責任を転嫁することは適切ではない。

ここには「被害者非難」という社会的問題も関係する。子どもが被害を訴えた際に、「なぜそんな写真を送ったのか」「なぜ知らない人と話したのか」「なぜSNSを使っていたのか」と問われれば、次の被害者が相談をためらう環境を作ってしまう。

したがって、相談率を高めるためには、単に電話番号やウェブサイトを増やすだけでは不十分である。相談した子どもが責められず、信じてもらえ、安全を確保され、必要な支援につながるという信頼を社会全体で形成することが必要になる。

被害の少なさではなく「把握できていない」という問題

ここで、「1%未満しか通報されていない」という数字を、単純に「警察が把握している被害は1%未満」と読み替えることにも注意が必要である。今回の数字は調査対象となった子どもが経験した被害のうち、警察、ソーシャルワーカー、ヘルプラインなどに報告された割合であり、犯罪統計上の全被害件数を直接示すものではない。

しかし、それでも社会的に極めて重大な意味を持つ。被害が発生しても専門機関まで届かなければ、警察は加害者を捜査できず、支援機関は被害児童を支援できず、行政は問題の規模を正確に把握できないからである。

その結果、「公的統計では被害件数が少ない→問題は限定的だ」という誤った認識が形成される危険がある。実際には、被害の発生、相談、通報、捜査、起訴、処罰という複数の段階のどこかで情報が失われるため、最終的な司法統計だけでは問題の全体像を把握できない。

この意味で、今回のユニセフ報告は重要な補完的役割を持つ。警察統計ではなく、子ども自身への大規模な調査を通じて「実際に何が経験されているのか」を把握することで、制度の外側に存在する被害を可視化しているからである。

ユニセフが求める対策と今後の方向性

ユニセフの2026年報告は、対策を子ども自身の注意だけに委ねるのではなく、政府、テクノロジー企業、司法・福祉機関、家庭、学校、地域社会などが責任を分担する必要があると提言している。特に重要なのは、デジタルサービスそのものを「安全な設計」に変えるという発想である。

報告が示す方向性は、大きく分けて「法制度」「プラットフォーム」「相談・支援」「社会環境」の四つに整理できる。いずれか一つだけを強化しても、オンライン性的被害という複雑な問題を十分に抑制することは難しい。

法整備と規制の強化

第一の課題は、技術の進歩に法律が追いつくことである。オンライン上のグルーミング、性的脅迫、ライブ配信型の性的虐待、AIによって生成された児童性的虐待素材など、デジタル技術によって新しい形態の被害が次々に生まれている。

特に生成AIは、従来の児童性的虐待素材とは異なる法的・技術的問題を生み出している。2026年2月のユニセフのAIに関する報告でも、性的画像・動画を生成するAIツールの普及が、子どもに対する新たな脅威を生み出していると指摘されている。

したがって、法律は「実際に撮影された画像」だけを対象とするのではなく、AIによる生成、加工、性的脅迫、拡散など、新しい技術によって可能になった行為にも対応できる必要がある。ユニセフは今回、政府が進化する形態の虐待に対応できる法律、規制、執行手段を整備することを求めている。

ただし、規制強化には表現の自由、プライバシー、暗号化、年齢確認などとの調整も必要になる。そのため、単純に「規制を強くすれば解決する」という問題ではなく、子どもの権利を守りながら、過度な監視やプライバシー侵害を避ける制度設計が必要になる。

テック企業の責任

第二の柱が、SNSやオンラインサービスを提供するテック企業の責任である。今回の調査では主要SNSが被害の約60%を占めているため、プラットフォーム側の安全対策は問題の中心部分に位置する。

ユニセフが求めているのは、被害が発生した後に削除するだけの「事後対応」から、そもそも被害が起こりにくいサービス設計へ移行することである。具体的には、子どものプライバシー保護、成人から子どもへの一方的な接触の制限、安全性を考慮した推薦システム、被害の検知・通報機能などが挙げられている。

この考え方は「Safety by Design(セーフティ・バイ・デザイン)」、つまり安全性を製品やサービスの設計段階から組み込むという方向性と一致する。2026年6月にはG7のデジタル・技術担当閣僚も、子どもの安全とプライバシーを設計段階から考慮すること、推薦システムがエンゲージメントだけでなく子どもの安全とウェルビーイングを重視することなどを盛り込んだ共通原則に合意している。

さらに企業側の透明性も重要になる。ユニセフの2025年の分析では、2022~2024年に公表された95社の企業報告書195件を調査したところ、デジタル環境における子どもの権利について意味のある開示を行っていた企業は27%にとどまった。企業が「安全対策を実施している」と主張するだけではなく、どの程度の被害を検知し、どの程度対応し、どのような改善を行ったのかを外部から検証できる透明性が求められる。

支援体制の構築とアクセスの向上

第三の柱は、被害が発生した後の支援体制である。オンライン性的被害は、画像を削除したりアカウントを停止したりするだけで解決するものではなく、心理的支援、医療、福祉、法律相談、司法手続きなど複数の支援が必要になる場合がある。

そのためユニセフは、子どもが信頼できる報告・支援システムを構築し、児童保護、保健、司法、社会サービスへの投資を強化するよう求めている。重要なのは、子ども自身が複数の窓口を探し回らなくても、相談した時点から必要な支援へつながる仕組みを作ることである。

特に相談の第一歩を簡単にすることが重要になる。子どもに「警察へ行きなさい」とだけ伝えるのではなく、学校、医療機関、相談窓口、SNSの通報機能など、子どもがアクセスしやすい場所から支援につながる仕組みが必要である。

社会通念の変革

第四の柱は、法律や技術だけでは解決できない社会通念の問題である。ユニセフは、女子の性的対象化を正常化する社会的・ジェンダー規範や、性的暴力の被害者を「stigmatize(烙印化・非難)」する風潮への対応も求めている。

これはオンライン性的被害を「スマートフォンの使い方」の問題だけにしてはならないことを意味する。子どもが自分の境界線を理解し、同意とは何かを学び、性的な要求を拒否してよいこと、被害を受けた場合には自分を責める必要がないことを理解できる教育が重要になる。

同時に、大人側の教育も必要である。ユニセフの過去の調査でも、インターネットを十分に利用しない保護者が複雑化するデジタル環境への対応に十分な準備ができていない場合があると指摘されている。

したがって、子どもだけに「危険を回避する能力」を要求するのではなく、保護者、教師、警察、医療・福祉関係者自身がデジタル上の性的被害について理解する必要がある。ユニセフの今回の提言も、保護の負担を子どもだけに背負わせるのではなく、家庭、学校、地域社会が相談を受け止め、安全に支援へつなげることを重視している。

今後の展望

今後の最大の課題は、SNSやAIなどの技術発展に対して、児童保護の仕組みが後追いにならないことである。2026年時点ですでにAI生成の性的画像という問題が現実化している以上、今後は生成AI、ディープフェイク、没入型デジタル空間など、新しい技術が生まれるたびに同じ問題を繰り返す可能性がある。

その意味で、必要なのは個別のサービスや個別の犯罪手口だけを規制する制度ではなく、新しい技術にも適用可能な原則を確立することである。子どもの最善の利益、安全、プライバシー、尊厳を設計・規制の基本原則に置き、技術が変化しても適用できる仕組みを構築することが重要になる。

また、デジタル環境から子どもを単純に排除することも解決策とは言いにくい。ユニセフの研究では、オンライン環境には学習やデジタル技能獲得などの利益もあり、スクリーンタイムそのものを制限するより、性的虐待やいじめなど具体的なオンライン被害を防止することに政策の重点を置くべきだとされている。

つまり目指すべきなのは「子どもをインターネットから遠ざける社会」ではなく、子どもがインターネットを利用しても被害に遭いにくく、被害に遭った場合には速やかに救済される社会である。

今回の分析から明らかになった最大の問題は、オンライン性的被害の「発生率」と「相談率」の間に極端な乖離が存在することである。約5人に1人という高い被害経験率に対し、公的機関などへの報告は1%未満であり、4割を超える被害が誰にも共有されていない。

このギャップを埋めるには、子どもへの注意喚起だけでは不十分である。政府は法律・規制と司法制度を強化し、テック企業は安全性をサービス設計そのものに組み込み、学校・家庭・医療・福祉・警察は被害を安心して相談できる環境を整える必要がある。

そして最も重要なのは、保護の責任を子ども自身に押し付けないことである。ユニセフが示している方向性は、「子どもがもっと注意すべきだ」という発想から、「社会と企業が子どもを守れる環境を作らなければならない」という発想への転換であり、今回の報告の核心はここにある。

今回の報告で最も重要なのは、オンライン上の性的被害が一部の特殊な犯罪空間に限定されたものではなく、SNS、オンラインゲーム、メッセージングなど、子どもが日常的に利用するデジタル環境に組み込まれた問題になっていることである。

ユニセフによると、21か国の12~17歳のインターネット利用児童約2万1,000人を対象とした調査では、1年間に約2,000万人、ほぼ5人に1人が、少なくとも一つの技術を介した性的搾取・虐待を経験したと推計された。ただし、この数字は「世界のすべての子どもの5人に1人」という意味ではなく、あくまで調査対象21か国のインターネット利用児童を母集団とした推計である。

この点は今回の報道を評価するうえで極めて重要である。見出しの「5人に1人」は非常に強いインパクトを持つ一方、その母集団を省略すると、世界の全児童について直接測定された数字であるかのような誤解を生むため、報道・政策・研究では「21か国のインターネット利用児童の約5人に1人」と表現することが望ましい。

調査そのものは、単純なアンケートだけではない。約2万1,000人の子どもへの全国代表性を持つ調査に加え、子どものころに性的被害を経験した100人の若者への詳細なインタビューを組み合わせており、量的データと被害経験者の証言を併用することで、被害規模と被害の質の双方を捉えようとしている。

また、調査は二つの時期に分けて実施された「Disrupting Harm(ディスラプティング・ハーム)」研究を基礎としている。第1段階では主に2020~2021年に12か国、第2段階では2024~2025年に9か国でデータが収集され、合計21か国の状況を分析しているため、調査時期には国・地域による違いが存在する点にも留意する必要がある。

「5人に1人」をどう評価すべきか

「5人に1人」という数字は、単に大きいというだけではない。1年間という期間の中で、インターネットを利用する12~17歳の子どもの約20%が少なくとも一つの該当する被害を経験したという推計であり、オンライン上の性的搾取・虐待が「例外的な出来事」ではなく、公衆衛生や児童保護政策の対象となる規模に達していることを示唆する。

さらに、被害の種類を細かく見ると問題の大きさがより明確になる。ユニセフは、1年間に1,500万人超が望まない性的コンテンツにさらされ、約900万人が望まない性的会話や性的画像の共有を求められ、約400万人が本人の同意なく性的画像を共有されたと推計している。

ただし、これらの数字を単純に合計してはいけない。それぞれの被害経験が重複している可能性があるためであり、「1,500万人+900万人+400万人=2,800万人が別々に被害を受けた」という意味ではない。

むしろ重要なのは、一人の子どもが複数種類の被害を経験する可能性があるという点である。性的コンテンツを送りつけられ、その後に性的画像を要求され、さらに画像を拡散されるというように、被害が連続的・複合的に進行すれば、統計上の「一件」だけでは被害の深刻さを十分に表現できない。

「SNS上6割」という数字の正確な意味

今回のもう一つの注目点が「SNS上6割」という数字である。ユニセフによれば、調査された事例のほぼ60%がFacebook、Instagram、Snapchat、TikTok、WhatsAppなどの主要SNS上で発生し、さらに14%がオンラインゲーム上で発生していた。

ここでも報道上の表現には注意が必要である。「SNSを利用する子どもの6割が被害に遭った」という意味ではなく、技術を介した性的搾取・虐待の事例の約60%で主要SNSが被害の場となっていたという意味である。この違いは統計を正確に読むうえで非常に重要である。

一方、この数字が示す社会的意味は大きい。被害の舞台が特殊な匿名サイトではなく、子どもが友人と交流し、情報を得て、写真を投稿し、動画を見て、ゲームをするような日常的なプラットフォームだからである。

したがって、問題を「危険なサイトにアクセスしないよう子どもへ教育する」という方法だけで解決することは難しい。SNSの利用そのものを前提として、接触、メッセージ、画像共有、推薦システム、通報、削除などの各機能を児童保護の観点から再設計する必要がある。

「57%」が示すもう一つの現実

加害者についても重要な修正が必要である。調査では57%の事例で、子どもがすでに知っている人物が関与していたとされ、具体的には同年代の人物、恋愛関係の相手、友人、家族などが含まれている。

これは「オンライン上の性的被害=知らない大人からの接触」という一般的なイメージを大きく修正するデータである。もちろん38%の子どもは加害者と最初にオンラインで接触しており、偽アカウントやプライベートメッセージ機能などを利用した接近も確認されているため、未知の人物によるリスクも決して小さくない。

しかし、57%という数字から明らかなのは、「知っている人だから安全」という前提も成立しないことである。オンライン空間では、現実世界で形成された友人関係や恋愛関係が性的画像の要求や拡散につながる場合があり、加害者との関係性そのものが被害の発見や相談を難しくする可能性がある。

この点は家庭や学校での教育にも大きな影響を与える。「知らない人には注意する」だけでなく、「知っている人からであっても、性的な要求を断ってよい」「嫌なことをされたら相談してよい」「画像を送ったことがあっても、その後の脅迫や無断拡散の責任は被害児童にない」という教育が必要になる。

相談の少なさは、被害の大きさを過小評価させる

今回の報告で最も危険な構造は、被害の発生率が高い一方で、それが社会に届いていないことである。ユニセフによれば、警察、ソーシャルワーカー、ヘルプラインなどに報告された経験は1%未満であり、4割を超えるケースでは誰にも打ち明けられていなかった。

これは「警察に相談する子どもが少ない」という単純な問題ではない。被害を受けた子どもが、家族にも友人にも教師にも相談しないケースが存在することを意味し、社会の側から見ると、被害が発生していても統計上は「存在しないもの」として扱われる可能性がある。

したがって、警察統計や相談件数が少ないことを、そのまま被害が少ない証拠として扱うことはできない。今回のユニセフ調査が示した「5人に1人」という数字は、まさにこうした公的統計では把握しにくい潜在的な被害を可視化する意味を持つ。

相談率を高めるには、子どもが相談した際に責められないという安心感を作る必要がある。「なぜそんな写真を撮ったのか」「なぜ相手と話したのか」といった被害者側への責任追及が先に立てば、子どもは次の相談をためらうためである。

被害による心理的影響

今回の報告では、被害の発生率だけでなく、心理的な影響についても重大なデータが示された。被害を経験した子どもは、そうでない子どもと比較して、自殺念慮・自殺行動が約4倍、自傷行為も約4倍多く、不安の自己申告水準も約11ポイント高かった。

ここで重要なのは、これらの数値から直ちに「オンライン性的被害が単独の原因である」と因果関係を断定しないことである。家庭環境、経済状況、既存の精神的問題、学校生活、人間関係など、さまざまな交絡要因が存在する可能性があるためである。

それでも、被害経験者と非経験者との間にこのような大きな差が確認されたことは、政策上無視できない。オンライン上で発生した性的被害であっても、結果として子どもの学校生活、人間関係、自己評価、安心感など現実の生活全体に影響する可能性があるからである。

したがって、被害対策は「画像を削除する」「アカウントを停止する」「加害者を摘発する」だけでは完結しない。被害後の心理的ケア、教育上の支援、家族への支援、必要に応じた医療・福祉支援まで含めた長期的な対応が必要になる。

法整備と規制の方向性

今後の法制度では、従来型の児童性的搾取だけでなく、デジタル技術によって生じる新しい被害形態を対象にする必要がある。特に生成AIによる性的画像・動画、ディープフェイク、性的脅迫、画像の無断拡散などは、従来の制度だけでは十分に対応できない可能性がある。

ここでは、犯罪行為を明確に禁止する刑事法制と、プラットフォームに安全対策を求める規制を分けて考える必要がある。前者は加害者を処罰するための制度であり、後者は犯罪が発生しにくい環境を企業側に求める制度だからである。

さらに、国境を越えた対応も不可欠である。SNSやクラウドサービスは国境を越えて運営されるため、被害児童が日本にいても、加害者、サーバー、サービス提供企業が別の国に存在する可能性がある。

その意味で、国際的な警察協力や司法協力も重要になる。実際、日本の警察庁も2026年にオンライン上の児童性的搾取等を対象とした国際協同オペレーション「サイバー・ガーディアン」を実施しており、オンライン上の児童性的搾取が国際的な捜査・取締りの対象になっている。

テック企業の責任

テック企業に求められる責任も大きい。主要SNSが被害事例の約60%を占めている以上、サービス提供企業が「利用者同士の問題」として距離を置くことには限界がある。

必要なのは、被害が発生してから対応する「事後型」の安全対策から、そもそも被害が発生しにくい「予防型」の安全設計への移行である。年齢に応じた初期設定、成人から子どもへの接触制限、不審なメッセージの検知、通報機能の改善、迅速な画像削除、再拡散への対応などを組み合わせる必要がある。

ただし、児童保護を理由に過度な監視を導入すれば、子どものプライバシーや自由なコミュニケーションを損なう可能性もある。そのため、「安全か自由か」という二者択一ではなく、子どもの権利、安全、プライバシーを同時に保護する設計が求められる。

日本への示唆

今回のユニセフ調査は21か国を対象としており、日本がその調査対象に含まれているわけではないため、「日本の子どもの5人に1人が被害に遭っている」と結論づけることはできない。この点は、日本の状況を論じる際に最も注意すべきところである。

一方、日本国内でもSNSに起因する子どもの性被害は現実の政策課題となっている。警察庁によれば、令和6年にはSNSの利用に起因して児童買春等の被害に遭った児童が1,486人に上り、児童ポルノ事犯の被害児童数は1,265人だった。

さらに警察庁は、令和7年の統計として「SNSに起因する事犯の被害児童数」などを継続的に公表している。国際調査と日本の警察統計は定義・母集団・把握方法が異なるため直接比較はできないが、日本でもSNSを介した児童の性被害が継続的な問題であることは確認できる。

したがって、日本で必要なのは「日本でも5人に1人なのか」という数字探しだけではない。むしろ、ユニセフが示した「高い潜在被害」「SNSへの集中」「身近な人物による加害」「極端な未相談率」という四つの構造が、日本国内でもどの程度存在するのかを独自に検証することである。

まとめ

今回のユニセフ報告を総合すると、「子どものオンライン性被害、5人に1人」という見出しは、数字そのものはユニセフの推計に基づいているが、その対象範囲を省略すると誤解を招く表現になり得ると評価できる。正確には、21か国の12~17歳のインターネット利用児童について、約2,000万人、ほぼ5人に1人が1年間に少なくとも一つの技術媒介型性的搾取・虐待を経験したという推計である。

「SNS上6割」という表現についても同様であり、被害児童の6割という意味ではなく、調査された被害事例のほぼ60%が主要SNS上で発生したという意味である。これは、オンライン性的被害が特殊なウェブ空間ではなく、子どもが日常的に使うプラットフォームの中で発生していることを示す重要なデータである。

そして、最も重大な発見は「5人に1人」という発生率だけではない。57%が既知の人物による被害、約60%が主要SNS上、4割超が誰にも相談せず、公的・専門機関への報告は1%未満という一連の数字を組み合わせることで、オンライン性的被害が「発生しているのに発見されない」という構造が浮かび上がる。

したがって、解決策を子ども自身の注意だけに求めることは適切ではない。子どもへのデジタルリテラシー教育に加え、政府による法整備、警察・司法・福祉機関の能力強化、SNS企業による安全設計、迅速な通報・削除・救済制度、心理的支援、そして被害者を責めない社会環境を同時に構築する必要がある。

最終的に目指すべきなのは、子どもをインターネットから隔離することではない。学習、交流、娯楽、自己表現のためにデジタル技術を利用する権利を守りながら、子どもが安心してオンライン空間に参加でき、被害に遭った場合には速やかに発見・保護・支援される環境を実現することである。

今回のユニセフ報告が突きつけているのは、「子どもがインターネットを使うこと」そのものが問題なのではなく、子どもが利用することを前提に、社会と企業が十分な安全責任を果たしているのかという問いである。約2,000万人という推計は、その問いを単なる理念ではなく、具体的なデータに基づく政策課題へと押し上げたものと評価できる。


参考・引用リスト

  • UNICEF, Office of Strategy and Evidence Innocenti, Through Children’s Eyes: How Digital Technologies Enable Child Sexual Abuse, September 2026. 本稿の中心資料であり、21か国・約2万1,000人のインターネット利用児童を対象とした調査、100人の若者へのインタビュー、「5人に1人」「SNS約60%」「57%」「1%未満」などの主要データの根拠となる。
  • UNICEF, “1 in 5 children across 21 countries have experienced tech-facilitated sexual exploitation and abuse – UNICEF”, 3 September 2026. 報告書公表時の公式プレスリリースであり、約2,000万人、1,500万人超、900万人、400万人、SNS約60%、オンラインゲーム14%などの主要推計値を確認できる。
  • UNICEF, Through Children’s Eyes 各国・地域版資料。21か国の調査結果について、主要SNS、オンラインゲーム、既知の加害者、オンラインで初めて接触した加害者などの分析を補完する資料として参照した。
  • 警察庁, 「少年非行及び子供の性被害」。日本における少年非行・子どもの性被害に関する公式統計資料であり、SNSに起因する事犯の被害児童数などを確認するために参照した。
  • 警察庁, 「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況」。日本国内の最新の確定統計を確認するための基礎資料として参照した。
  • 警察庁, 「令和7年版犯罪被害者白書」。被害少年に対する継続的な心理的支援や、日本国内の児童ポルノ事犯・SNS起因の性被害に関する資料として参照した。
  • 警察庁, 「オンライン上の児童の性的搾取等事犯の集中取締りに係る国際協同オペレーション『オペレーション・サイバー・ガーディアン』の実施結果について」。オンライン児童性的搾取に対する国際的な捜査協力の実例を確認するために参照した。
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ