コンテンプト・オブ・コート 1-32
夜。
ローリーは借用書をバッグに入れたまま、トーマスの店を出た。
行き先は決まっていた。
エイダン・フォックスのいる場所。
ローリーは歩いた。
しばらくして、古い建物の前に着く。
四階。
マイクの事務所だった。
ローリーは階段を上がった。
四階に着く。
目の前に古いドアがある。
ローリーは迷わずドアを開けた。
部屋の中には、エイダンと数人の男がいた。
マイクもいた。
エイダンがローリーを見る。
「また来たのか」
ローリーは答えなかった。
そのままエイダンの前まで歩いていく。
エイダンが立ち上がった。
次の瞬間。
ローリーの右手が動いた。
乾いた音が響いた。
平手打ちだった。
エイダンの顔が横を向く。
部下たちが立ち上がる。
「ボス」
エイダンが手を上げた。
「動くな」
部下たちが止まる。
エイダンはゆっくり顔を戻した。
ローリーは睨んでいる。
「父に何をしたの?」
「何もしてない」
「借金を取り立てに行ったでしょう」
「契約に従って返してもらおうとしただけだ」
「そのために店に押しかけた」
「金を返してもらうためなら、行く」
ローリーはバッグから借用書を取り出した。
エイダンの前に突きつける。
「これよ」
エイダンは見た。
「何が問題だ?」
「全部よ」
「具体的に言え」
「この年利」
ローリーは数字を指で叩いた。
「こんな利率で金を貸すなんて、まともじゃない」
「トーマスは署名した」
「だから何?」
「契約だ」
「法律に反する契約なら、署名があっても問題になる」
エイダンは何も言わない。
ローリーは部屋を見回した。
そして、奥にいるマイクを見た。
マイクは椅子に座って、二人のやり取りを見ていた。
ローリーはマイクのところへ歩いていく。
「あなた」
マイクが顔を上げる。
「何だ?」
「あなたが責任者?」
「ああ」
「この男たちの?」
「ああ」
ローリーは借用書をマイクの前に置いた。
「父がこの男から金を借りた」
マイクは書類を見る。
「そうらしいな」
「らしい?」
「俺が直接貸したわけじゃない」
「でも、この事務所でやっていることでしょう」
マイクは借用書を手に取った。
紙を開く。
ローリーは腕を組んだ。
「借用書に書かれている年利は違法よ」
マイクは数字を見る。
しばらく黙っていた。
エイダンが口を挟む。
「マイク」
「黙ってろ」
エイダンが黙る。
マイクは借用書をもう一度確認した。
ローリーはその様子を見ていた。
「分かった?」
マイクは顔を上げた。
「何が?」
「この利率が違法だってこと」
「知ってる」
ローリーの表情が変わる。
「……知ってるの?」
「ああ」
「それなのに、父に貸したの?」
「俺が貸したわけじゃない」
「あなたが責任者なんでしょう?」
「そうだ」
「だったら、知らないでは済まないわ」
マイクは借用書を机の上に置いた。
「言いたいことはそれだけか?」
「まだある」
ローリーは一歩近づいた。
「父は法律を知らない。だから、あなたたちはそれを利用した」
「利用した?」
「そうよ」
マイクはローリーを見る。
「ずいぶん決めつけるな」
「借用書を見れば分かる」
「そうか」
「この契約について説明してもらうわ」
マイクは椅子から立ち上がった。
ローリーと向かい合う。
「俺から説明することはない」
「逃げるの?」
「逃げてない」
「じゃあ答えて」
マイクはローリーの持っている借用書を見た。
「知ってる」
ローリーが眉を寄せる。
マイクは淡々と言った。
「俺は弁護士だから」
