コンテンプト・オブ・コート 1-33
マイクの言葉を聞いて、ローリーの表情が変わった。
「だったら話は早いわ」
「何が?」
「無許可の貸金業者だと警察に通報する」
部屋にいた男たちがローリーを見る。
エイダンがマイクを見る。
マイクは動かなかった。
「好きにすればいい」
「本当に?」
「ただし、事実を確認してからにしろ」
「確認する必要なんてない」
ローリーは借用書を指差した。
「この利率だけで十分よ」
マイクは借用書を手に取った。
「この事務所は関係当局の許可を得て運営している」
ローリーが黙る。
「貸金業をやること自体は違法じゃない」
「でも、この利率は違法でしょう」
「それについては争う余地がある」
「父に払わせるつもり?」
「契約がある」
「法律違反の契約を?」
「そこを判断するのは裁判所だ」
ローリーはマイクを睨んだ。
「あなた、最初から分かっていたのね」
「何を?」
「父が困っていることも、この契約がおかしいことも」
「だから?」
「それでも金を取り立てた」
マイクは答えなかった。
ローリーは一歩近づいた。
「警察に通報する」
「どうぞ」
「あなたたち全員よ」
「それも好きにしろ」
マイクは机の横に立った。
「ただし、これは脅迫だよ」
「脅迫?」
「警察に通報すると言って、俺に何かをさせようとしている」
「私は法律を守れと言ってるだけ」
「言い方次第だ」
マイクはローリーを見た。
「裁判官を殴って業務停止になるわけだ」
ローリーの顔が固まった。
「……何?」
「六か月」
ローリーが一歩近づく。
「なぜそれを?」
マイクは答えない。
「誰から聞いたの?」
「調べた」
「なぜ?」
ローリーの声が低くなる。
「このストーカー野郎」
エイダンの部下たちが顔を見合わせた。
エイダンは黙っている。
マイクはローリーを見たまま言った。
「調べるのが探偵だ」
「探偵?」
「ああ」
マイクは少し笑った。
「ただし、興味のある女に限る」
ローリーの表情が変わった。
「……最低」
マイクは何も言わなかった。
次の瞬間。
ローリーの右腕が動いた。
拳がマイクの顎を捉える。
鈍い音がした。
マイクの身体が横へ流れる。
机に手をついて、倒れるのを防ぐ。
エイダンが立ち上がった。
「おい」
ローリーはマイクを睨んでいた。
「何するのよ!」
「先に殴ったのはお前だろ」
エイダンが言う。
「こいつが私を調べ回ってたのよ!」
「だから殴るのか?」
「うるさい!」
ローリーはマイクを見る。
マイクは顎を押さえながら立ち上がった。
「痛いな」
「自業自得よ」
マイクはローリーを見た。
それから机の上に置かれていた携帯電話を取る。
「何するの?」
「警察を呼ぶ」
ローリーの顔が変わった。
「ちょっと待って」
マイクは電話をかけた。
「アンカレッジ警察か?」
ローリーが近づく。
「何してるの?」
マイクはローリーを見ながら話した。
「事務所で女性に暴行された。被害者は俺だ」
「ちょっと!」
ローリーが手を伸ばす。
マイクは一歩下がった。
「場所は……」
住所を伝える。
「分かった」
マイクは電話を切った。
ローリーは呆然とマイクを見ていた。
エイダンはため息をついた。
「最悪だな」
マイクは顎をさすった。
「お互い様だ」
ローリーは何も言わなかった。
遠くから、サイレンの音が近づいてきた。
