ミャンマー政府、ロヒンギャ難民5000人受け入れへ、マレーシア首相が発表
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や人権団体からは、ミャンマーの治安状況を踏まえ、安全な帰還が可能なのか懸念の声が上がっている。
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マレーシアのアンワル(Anwar Ibrahim)首相は30日、ミャンマー政府がマレーシア国内に滞在するロヒンギャ難民5000人を受け入れることで合意したと明らかにした。両国間の協議を通じて実現した異例の帰還計画で、マレーシア政府は対象者の特定や身元確認などの手続きを進める方針を示している。一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や人権団体からは、ミャンマーの治安状況を踏まえ、安全な帰還が可能なのか懸念の声が上がっている。
アンワル氏は記者会見で、ミャンマーとの外交関係を維持してきたことが今回の合意につながったと説明した。マレーシア政府は国内に滞在するミャンマー出身者のうち、帰還対象となる人々の確認作業を進めるとしている。内務省が対象者の国籍や身分を確認した上で、移送に向けた準備を行うという。
ロヒンギャはミャンマー西部ラカイン州を中心に暮らしてきたイスラム系少数民族で、長年にわたり国籍を認められず、差別や迫害を受けてきた。2017年にはミャンマー軍による大規模な掃討作戦を受け、100万人以上が隣国バングラデシュなどへ避難する事態となった。現在も多くのロヒンギャが難民として周辺国で生活しており、帰還をめぐる問題は国際社会の大きな課題となっている。
マレーシアはロヒンギャの主要な避難先の一つで、国連が登録した約12万6000人を含む多数の難民・庇護希望者を受け入れている。しかし、同国は1951年の「難民の地位に関する条約」に加盟しておらず、難民としての法的地位を正式には認めていない。近年は経済的負担や社会的緊張を背景に、難民受け入れへの反発も強まっている。
一方、ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、内戦が続いており、各地で武装勢力と国軍の衝突が発生している。UNHCRなどは、現在の状況では帰還者の安全確保が難しいとして、本人の意思や安全が十分に保障されない強制的な送還に反対している。国際法上も、迫害や深刻な危険が及ぶ可能性のある国への強制送還は認められていない。
また、ミャンマーはロヒンギャを独立した民族として認めておらず、帰還対象者の扱いをめぐって両国間で認識の違いが生じる可能性もある。ミャンマー当局は今回の計画について、正規の国籍確認を前提とする立場を示しており、ロヒンギャ難民全員が対象になるかは不透明だ。
今回の合意は長年解決が進まなかったロヒンギャ問題に対する一つの外交的動きとなる。しかし、帰還後の安全確保、住居や生活基盤の再建、民族的権利の保障など、解決すべき課題は多い。難民問題の解決には単なる移送ではなく、本人の意思を尊重した安全で持続可能な帰還環境の整備が不可欠となっている。
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