コンテンプト・オブ・コート 2-34
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷内は騒然としていた。
入口の外から、まだ物音が聞こえている。
マリベル裁判官は法廷を見回した。
「静かにしてください」
傍聴人のざわめきが少しずつ収まる。
被告人席のカーターは、隣に座る男を見ていた。
エイダンの部下だった。
男は平然とした顔で座っている。
マリベルが尋ねた。
「共同弁護人」
男が立ち上がる。
「はい」
「マイク・ハンター弁護士は一人で担当すると聞きました」
男は答えない。
マリベルはカーターを見る。
「被告人。本当ですか?」
カーターは黙っていた。
「被告人?」
カーターは前を向いたまま、何も言わない。
マリベルは男へ視線を戻した。
「あなたは、マイク・ハンター弁護士から正式に依頼を受けたのですか?」
「はい」
「それを証明する書類は?」
「今、確認中です」
アトキンソン検事が立ち上がった。
「裁判長」
マリベルが見る。
「何ですか?」
アトキンソンは男を指した。
「弁護士の詐称は重罪です」
男は黙っている。
アトキンソンは男の服装を見た。
「あなたのその恰好、ギャングにしか見えないけど」
法廷の何人かが男を見る。
「本当に弁護士?」
男は眉を動かした。
「弁護士です」
「資格証明は?」
「持っていません」
「では、何を根拠に弁護士だと言っているのですか?」
男は答えなかった。
マリベルが口を開く。
「得体のしれない人間が弁護士ごっこですか?」
男がマリベルを見る。
「ごっこではありません」
「そうですか」
マリベルは警備員を見る。
「その不審者を取り押さえなさい」
警備員が二人、男の左右から近づく。
男は立ち上がった。
「ちょっと待ってください」
「動かないで」
警備員が腕をつかむ。
男が振りほどこうとする。
「離してください」
「抵抗するな」
もう一人の警備員が反対側の腕を取る。
男は床へ押さえつけられた。
法廷がざわつく。
カーターはそれを見ていた。
マリベルがカーターを見る。
「被告人」
カーターが顔を上げる。
「はい」
「今日の公判を最後にしてもいいのですか?」
カーターは黙った。
マリベルは続けた。
「あなたが弁護人を失えば、審理を続けることはできません」
カーターは男を見る。
床に押さえつけられたまま、男がこちらを見ている。
カーターは何も言わなかった。
そのときだった。
法廷の入口が開いた。
「待て!」
全員が振り返る。
男が数人、法廷に入ってきた。
全員、エイダンの部下だった。
警備員が止めようとする。
「止まれ!」
先頭の男が叫んだ。
「出てこい、この詐欺師!」
法廷内が一気に騒がしくなる。
マリベルが机を叩いた。
「静かにしなさい!」
だが、男たちは止まらない。
「どこだ!」
「この中にいるんだろ!」
「出てこい!」
アトキンソンが立ち上がる。
「警備員、全員外へ出してください!」
警備員が男たちへ向かう。
一人が腕を振りほどいた。
「触るな!」
別の男が前へ出る。
「お前ら、マイクをどこへやった!」
マリベルが眉をひそめる。
「何をしているのですか!」
男たちは答えない。
そのうちの一人が拳を握った。
警備員が身構える。
法廷の空気が変わった。
カーターは黙って前を見ている。
マリベルは立ち上がった。
「法廷内で騒ぐのはやめなさい!」
誰も聞いていない。
一人の男が警備員を押した。
警備員の体がよろめく。
別の男が腕をつかまれた。
「邪魔するな!」
その声と同時に、法廷の中で最初の拳が振り下ろされた。
