SHARE:

EU、レバノン支援の新任務を開始、軍・治安機関を訓練、国連部隊撤退後を見据える

新任務の実効性は訓練の成果やレバノン政府の統治能力、地域情勢に左右される。
2026年3月12日/レバノン、首都ベイルート南部、イスラエル軍の空爆を受けた地区(ロイター通信)

欧州連合(EU)の外相らは12日、レバノンの軍や治安機関の能力強化を目的とする新たな支援任務の設置を決定した。新任務は軍事部門と民間部門で構成され、国境管理や海上警備、密輸対策、サイバー犯罪対策などについて助言や訓練を提供する。任務期間は3年間で、レバノンの国家主権と治安機関の統治能力を支える狙いがある。

EUのカラス(Kaja Kallas)外交安全保障上級代表は声明で、新任務がレバノン軍と国内治安部隊を支援し、領土管理、国境警備、国内治安の強化に寄与すると説明。「欧州はレバノンの未来に関与している」と述べ、同国の安定に向けたEUの関与を強調した。

軍事部門では、レバノン軍に対し、陸上国境の監視・管理や海上警備、情報収集・監視・偵察、密輸対策、作戦上の連携などに関する助言と訓練を行う。民間部門は国内治安部隊を対象に、サイバー犯罪や密輸への対処能力を高めるための専門訓練を実施するほか、ベイルート港を含む港湾保安体制の強化も支援する。

EUは今後、実際の活動開始に向けた運用計画を進める。カラス氏は数カ月以内に要員を派遣することを目指していると明らかにした。

カラス氏は9月、10を超える加盟国が人員や資源の提供に意欲を示していると説明していた。ただし、具体的な派遣規模や参加国の詳細は今後の調整に委ねられている。

新任務の設置はレバノン南部などで活動してきた国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の任務期限が2026年末に迫る中で決まった。UNIFILは約1年をかけて縮小・撤退する見通しであり、国際部隊の撤収後に治安上の空白が生じることへの懸念がある。

EUは新任務をUNIFILの単純な後継部隊とは位置づけていない。レバノン自身の治安機関を強化し、国家による領土管理を支えることを重視している。背景にはイスラム教シーア派組織ヒズボラの武装解除をめぐる課題もある。レバノン軍の能力向上によって、政府が国内の武器管理や治安維持を担う体制を整えられるかが焦点となる。

新任務の実効性は訓練の成果やレバノン政府の統治能力、地域情勢に左右される。EUの支援が国連部隊の撤退後もレバノンの安定を支える仕組みにつながるかが問われている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ