コロナショックにより、6,000人の従業員がクビを勧告される

オーストラリアおよび南半球最大手の航空会社である「カンタス航空(国営)」は、コロナウイルスの世界的流行による衝撃を生き抜くべく、6,000人の従業員を削減すると発表した。

この削減数は、同社の従業員総数の20%に相当する。3月にロックダウンが開始されて以降、同社の約80%、25,000人が自宅待機を余儀なくされ、業績は悪化の一途をたどっていた。

今回の措置を受けカンタス航空は、「世界から空の旅が失われ、我々は壊滅的な被害を受けた。コロナウイルス終息後の社会で生き抜くためには、雇用を削減するしかない」とコメントした。

オーストラリア政府は、各国との国境封鎖解除を慎重に見極める方針であり、少なくとも来年までは開放されない可能性が高いと発表している。

この発表によりカンタス航空は、ニュージーランド行きを除くすべての国際線を10月下旬まで全線運休するよう求められた。

25日、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるアラン・ジョイス氏は、今後3年間の業績が大幅に縮小し、生き残るためには母体を小さくする以外手はないと述べた。

またジョイスCEOは、「私たちがこれから取らねばならない行動は、数千人の従業員とその家族に大きな影響を与えるだろう。しかし、何十億ドルもの収益が消し飛んだ今、私たちが生き残るための手段は限られている」と付け加えた。

カンタス航空とその子会社であるジェットスター社は、数万人の従業員に対し、航空業界の回復を待つ間の基金を拡張し続けると発表した。

オーストラリアは、早急なロックダウン規制と感染予防対策が功を奏し、他国よりも早く感染者抑制に成功した。これに伴い国内線の需要は回復。2022年にはコロナショック前の水準まで回復すると予想されている。

しかし、数千万人もの旅行者や観光客を受け入れる主力の国際線需要は半分程度に低迷すると予想され、他国の感染状況次第では、それ以下になる可能性もあるという。

同社は19億豪ドル(約1,400億円)の新規株式を発効。この規模の資金調達は10年以上ぶりであり、経営環境が日増しに厳しさを増していることの証拠、と関係者は言う。

また、現在保有するエアバスA380を含む約100機の航空機を必要の都度修繕し、新しい機体の購入予定を後ろ倒しにするなど、予算の節約に徹底して取り組む姿勢を明確に示している。

フライト・グローバル、アジア担当のグレッグ・ウォルドロン氏はBBCの取材に対し、「カンタス空港が実行した人員削減および機体購入計画見直しによるコスト削減、資本調達の組み合わせは、航空業界の危機に対応し、かつ、需要復活後のビジネスに対処できる力を蓄えることに主眼を置いている。まずは国内需要の回復を目指し、その後、国際線復活を視野に入れ、中長期のビジネス計画を立てるべきだろう」と述べた。

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苦境に立たされる航空業界

世界中の航空会社が苦境に立たされた結果、今年の業界損失額は840億ドル(約9兆円)以上になると予想されている。

加盟290社で構成される国際航空運送協会(IATA)は、2020年度の収益は前年度から50%減少し、4,190億ドル(約45兆円)になると述べた。

これはコロナウイルス発生当初の予想を大幅に上回るものであり、旅行者や観光客が徐々戻っているにも関わらず、会社の実情は非常に厳しいことを物語っている。

IATAの最高責任者を務めるアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック氏は、「2020年度は過去に例を見ない、史上最悪の年になるだろう。完全に常軌を逸している」と述べた。

IATAは、2020年の旅行者を昨年の半分以下、22億5,000万人まで減少すると予想。これにより世界の航空会社は、1日当たり2億3,000万ドル(約250億円)を毎日失い続けることになる。結果、10年以上かけて積み重ねた業界の成長は雲散霧消し、2006年当時の水準まで落ち込むという。

ジュニアック氏は、「2021年も損失を被るだろうが、収益は大幅に改善すると予想している。ただし、コロナウイルスの第二波が発生する可能性も否定できない。今は需要回復の日に備え、できる限りの準備を進めるしかないだろう」と述べた。

世界中の空から航空機が姿を消した4月、IATAは2020年の収益損失を3,140億ドル(約34兆円)と予想していたが、今回それを大幅に下方修正した。

ロックダウンの段階的な緩和によって、国内線を中心に需要は回復しつつある。しかし、経済活動自体が大幅に低迷し、さらに困難かつ複雑な検疫によって、国際線のハードルは跳ね上がってしまった。

航空会社は機体、サービス、数千人規模の人員を削減することで、この危機に何とか対応している。しかし、航空業界がまともに機能しなくなった結果、観光業界も壊滅的なダメージを受けてしまった。これにより経済活動はさらに低迷、航空機の利用者が減少する負のスパイラルに陥る、と関係者は頭を抱えている。

ヴァージン・オーストラリア航空、アビアンカ航空、タイ航空はコロナショックの力に屈し、経営破綻した。航空会社は航空機を飛ばさない限り、キャッシュを湯水のように消費し続け枯渇、倒産する。

ジュニアック氏は、政府による継続的な支援が航空会社存続には必要不可欠であると強調した。

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