今週施行された新規則に航空会社は猛反発、意義申し立てを提出した

ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、ライアンエアー、イージージェットの3社は、政府の検疫政策「英国旅行検疫規則(UKTQR)」に対し、正式な意義申し立てを高等法院に提出した。

3社は、UKTQRがイギリスの観光とより広い経済に壊滅的な影響を与え、何千もの仕事をコナゴナに破壊するだろう、とコメントした。

今週から施行されたUKTQRは、コロナウイルスに対する検疫対策よりも厳しいと言われている。これからイギリスに入国するほとんどのインバウンド旅行者は、14日間の自己隔離を必須とする。ただし、特定の労働者に対する免除も認められている。なお、これまでのウイルス感染者に対する自己隔離期間は7日間だった。

3社は規則の策定における協議、科学的根拠の提示を政府に求めたが、拒否されたという。また、フランスやドイツからの通勤労働者(一部)に対する検疫は免除した一方、イギリスよりはるかに感染率の低い国からの入国を”妨害”する規則に意味はないと述べている。

これに対し政府は、UKTQRの検疫期間は公衆衛生を保護するために必要な措置であり、コロナウイルスと共存する時代の新しい旅行スタイルになるだろうとコメントした。

3社は、「イギリスと感染率が低い国との移動における検疫免除は、いつどのように、どのようなタイミングで、そして何を根拠に決めるのかもしくは許可するのか」という重要な事項が規則に記されていない点を”大いに問題アリ”と指摘している。

また、ドイツやフランスだけを優遇するのではなく、検疫はこれまでの体制(感染率の高い国からの移動を制限する)を踏襲したルールにすべき、と政府に要求した。

航空業界はコロナウイルスの発生によって壊滅的な被害を受けた。現在、雇用の削減などによるコストカット対策が行われている最中である。

【欧州航空業界の主な動き】
●ブリティッシュ・エアウェイズは、従業員45,000人のうち12,000を解雇する予定。また、パイロット1,000人の解雇計画を労働組合に提案した。
●ライアンエアーは従業員3,000人(全体の15%)を解雇する予定。マイケル・オリアリーCEOは解雇計画に対し、「1年間生き残るために必要不可欠な措置。これを怠れば、我々は路頭に迷うだろう」と述べた。
●イージージェットは、従業員の最大30%(約4,500人)を解雇する計画。
●ヴァージン・アトランティック航空は、従業員10,000人のうち3,000人を解雇すると発表。
●上記以外の航空会社(欧州のみ)がこれまでに発表した従業員解雇数の合計は約22,000人。

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頭を抱える航空会社と政府

イギリスに到着するほとんどの人々に14日間の自己隔離を求めるUKTQRは、新時代の旅行スタイルになるのだろうか。

この新規則は、飛行機、フェリー、電車で国境を越え入国した際に適用される。なお、「イギリス国籍を持つ者も同様」、入国時に自己隔離する住所を報告し、違反すれば罰金が科される。プリティ・パテル内務長官は、「コロナウイルスの第二波を防ぐために欠かせない規則」と説明した。

ライアンエアーのマイケル・オリアリーCEOはBBCの取材に対し、「UKTQRはコロナウイルス対策をアピールしたい政府の傲慢である。感染率の低い国から各種条件をクリアしたのち入国するのであれば、それでよい。旅行者たちはいつでも連絡がとれる体制を保ち、好きな場所に行くべきだ」と述べた。

またオリアリーCEOは、「内務省でさえUKTQRは維持できないと認めている」と主張した。一部の業界団体は、新規則がイギリス経済に深刻な影響を与える、今すぐ見直すべきと警告している。

【英国旅行検疫規則:UKTQRの主な内容(抜粋)】
●イギリスに到着した人は、自分の車(レンタカー)で目的地まで移動すること。また、14日間の自己隔離期間を終えるまで、公共交通機関やタクシーの利用は禁止。
●自己隔離期間を終えるまで、仕事、学校、公共施設などへの入場は禁止。また、人を訪ねても処罰される。さらに、スーパーマーケットで食料やその他の必需品を購入することも禁止
●これらの規則に違反した場合は罰金が科される。またスコットランドでは、自己隔離期間を無視する行為に対し最大1,000ポンド(約13万円)、再犯者には最大5,000ポンド(約67万円)の罰金が科される。

ほとんどの入国者は、イギリスに到着した際、必ず「公衆衛生旅行フォーム」への記入を求められる。これを怠ると100ポンドの罰金を科され、さらに入国自体を拒否される可能性もある。

また、旅行者が特定の施設に滞在しない場合は、政府が自己隔離用のホテルを指定する。宿泊料はもちろん旅行者が精算しなければならない。また、ルールが守られているもしっかりチェックする予定だという。

ドイツから仕事の都合でイギリスを訪れた利用者は、「仕事で1日滞在するだけなのに、14日間も自己隔離しなければならない・・・私はイギリスに入国したくない。恐らく他のビジネスマン、旅行者も同じ気持ちだろう」と述べた。

政府は悩みに悩んだ末、UKTQRの施行に踏み切った(と信じたい)。同国内におけるコロナウイルスの感染状況は多少落ち着きつつあるが、4万人以上が命を落とし、パンデミックの第二波を恐れる気持ちは大いに理解できる。

厳しい検疫体制を敷けば、「コロナウイルスの入国」を防ぐ確立は恐らく上昇する。しかし、ビジネスマンや旅行者が14日間の自己隔離期間とその他ルールを恐れ、イギリスに近づかなくなれば、航空業、観光業、小売業、その他の様々な業界が壊滅的な影響を受けてしまう。これでは経済の立て直しなどうまくいかない。それどころか、さらなる事態の悪化と混乱を間抜くだけである。

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