バークシャー・ハサウェイが米国4大航空会社の株式を全て売却

投資の神様こと「ウォーレン・バフェット氏」は、購入した株式を永続的に保有することで知られる。同氏の個人資産は約735億ドル(約7兆8,500億円)。それらは、「永続的(不変的)価値を持つ企業」に投資し続けることで増大し続けてきた。

証券会社や投資信託会社は、株式の売却と購入を繰り返し、僅かな利益を上げるべく株価の動向を四六時中注視している。しかし、同氏は不変的価値を持つ企業(コカ・コーラ、ワシントン・ポストなど)の株式が「お得」と判断できる価格で購入。それらの企業は永続的に成長し続ける可能性が極めて高いため、株価は際限なく上昇する。

株価が上昇しても、同氏は基本、株式を売却しない。売却する時は、数十億ドル規模の利益が確定している場合(条件は様々)や、その企業が「永続的価値」を失った場合などである。同氏の持つ株式は、保有期間が長くなるほど価値(資産)も上昇する。一時的な株価の上下動など一切に気に留めず、黙って次の獲物を調査するのだ。

バフェット氏が会長兼CEO(筆頭株主でもある)を務めるバークシャー・ハサウェイの年次総会が開催された。その中で同氏は「コロナウイルスのせいで世界は大きく変わった」と述べ、第一四半期の純損失が過去最高の500億ドル(約5兆3,400億円)に達したと報告した。

バークシャー社の時価総額は2020年3月時点で約4,400億ドル(47兆円)。500億ドルの損失により、同社の企業価値は大きく損なわれた。

さらに同氏は、航空業界への投資は間違いだったと述べた。ロイター通信によると、このコメントが発信されたのは、年次総会が開催された数時間後のことであった。

年次総会の報告書と提出書類によると、同社はデルタ航空の株式の11%、アメリカン航空の10%、サウスウエスト航空の10%、ユナイテッド航空の9%を保有していた。なお、同社は長年航空業界への投資を避けてきた。理由は「永続的価値」が見いだせなかったためであろう。しかし2016年から4つの航空会社への投資を開始していた。

バフェット氏は語る

年次総会の中でバフェット氏は、「我々は、成長できない企業、お金を生み出さない企業には投資しない」と述べた。

アメリカの航空会社がコロナウイルスにより壊滅的な被害を受けていることは周知の事実。そして、それは世界の航空会社も同じである。利用者(搭乗者)のいない飛行機は、膨大なコストを生み出し続ける「ただの鉄塊」でしかない。

世界中の航空会社は数十万件のフライトを中止し、数千機の飛行機を運休させた。膨大な人件費、飛行機の維持管理費が幹部たちの肩に重くのしかかる。永続的価値を持つと思われた航空業界は、パンデミックに粉砕された。そして、投資の神様ですら、その事態は予想できなかった。

バフェット氏は、「コロナウイルスが大流行する以前、航空会社の株式の追加購入を検討していた。同社は大きな打撃を受けた。航空業界は快適な空の旅を失った」と述べた。

バークシャー社の株式売却に対しデルタ航空は、「売却については認識している。我々はバフェット氏とバークシャー社にこれからも敬意を払う。当社は”これからも”アメリカの航空会社として”強み”を発揮し続けるだろう」とコメントした。

今回の売却劇は、航空業界、株式市場、そして連邦政府に大きな衝撃を与えた。世界最強の投資家が、「航空会社に永続的価値はない」と判断し、数百億ドルの株式を一斉に売却したのだ。既に述べた通り、同氏は株価の上下動など気にせず、「将来必ず上昇(成功)する、永続的価値のある企業にのみ」投資し続けてきた。

すなわちバフェット氏は、航空会社の株価が元の水準に戻ることはない、「上昇することはない」「永続的価値を失った」と判断し売却に踏み切ったのだ。

世界中の証券会社、アナリスト、ディーラーなどが同氏の動きを注視している。今回の売却劇を受け、「航空会社はダメかもしれない」と彼らも判断すれば、株価がどうなるかは説明するまでもないだろう。

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