◎欧州は化石燃料の価格高騰に伴う電力料金の値上げに悩まされている。
2月10日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を減らす戦略の一環として、新たに6基の原子力発電所を建設し、既存の原発を延命させる計画を発表した。
マクロン大統領は記者団に対し、「新設工事は2028年頃に開始する予定で、2035年までに最初の原発を稼働させる」と述べた。
またマクロン大統領は原発の発電能力を称賛したうえで、「安全上の理由がない限り、今後一切発電を止めないでほしい」と関係機関に呼びかけた。
欧州は化石燃料の価格高騰に伴う電力料金の値上げに悩まされている。フランスは総発電量の7割を原発でまかなっている。
東部ベルフォールにあるGEエナジーの欧州本部で演説を行ったマクロン大統領は、新たな計画を「原子力のルネッサンス」と呼んだ。訪問前、フランスの電力会社EDFは、米国の原子力タービン会社を買収する契約を発表していた。
EDFによると、加圧水型原子炉6基の建設費は約500億ユーロ(6.6兆円)と見積もられている。
原子力安全機関は昨年、国内で最も古い32基の原子炉の運転寿命を10年延長し、最大50年とすることに合意した。その原子炉は1980年代に建設されたものがほとんど、現在の規則が変更されなければ2030年代に停止する。
フランスはノルマンディー地方のフラマンヴィルで加圧水型原子炉の建設を進めているが、工期は10年以上遅れ、建設コストは3倍以上になっている。EDFによると、2023年には稼働できる予定だという。
政府は新しい原発が2050年までにカーボンニュートラルを達成するという約束を守り、化石燃料への依存を減らすと主張している。
原子力は石炭、石油、天然ガスに比べると温室効果ガスの排出量ははるかに少ないが、建設コストが非常に高く、地球上で最も危険な廃棄物を発生させる。
環境保護団体で構成されるフランスの気候行動ネットワークは政府の原発関連計画を厳しく非難している。しかし、国内の電力の7割を再生可能エネルギーでまかなうことは容易ではない。
気候行動ネットワークは10日の声明で、「今優先すべきは、(再生可能エネルギー分野で)欧州の不良生徒と呼ばれているフランスの名声を回復することである」と述べた。
マクロン大統領は原発に関する政府の計画をコミットすると同時に、再生可能エネルギーの大規模な開発を計画していると述べた。計画によると、2050年までに太陽光発電を現在の10倍に増やし、洋上風力発電所を増設し、陸上風力発電所の発電量を2倍にするという。
またマクロン大統領は新設計画が仏国民の購買力を支え、長期的には原発と再生可能エネルギーが市場の乱高下から国民を守り、安価な電力を保証することになると述べ、演説を締めくくった。
マクロン大統領はまだ大統領選への立候補を表明していない。ライバルの極右勢力も原発の新設と延命にはおおむね賛成している。