◎カイス・サイード大統領は2月5日の午後に内務省を突然訪問し、司法上級評議会を解散させると宣言した。
2月6日、チュニジアのカイス・サイード大統領は、汚職や政治案件を誤って処理した疑いがあるとして、国の司法機関を解散すると発表した。
サイード大統領は昨年7月、政府のコロナウイルス対策と経済政策の失敗を非難し、当時のヒシェム・メチチ首相を解任したうえで議会を停止した。
議会停止から2か月後、サイード大統領は憲法を部分的に無効にし、自分の権限を強化したうえで、ナジュラ・ブーデン氏を暫定首相(チュニジア初の女性首相)に指名した。
野党はサイード大統領を権威主義者と呼び非難しているものの、汚職の撲滅を約束し、利権に関わらない清廉潔白なイメージが強いサイード大統領の支持率は下がるどころか上昇している。
サイード大統領は5日午後に内務省を突然訪問し、司法上級評議会を解散させると宣言した。「一部の裁判官や司法当局者は汚職、縁故採用、反対派の暗殺を含むいくつかの事件の審理を恣意的に引き延ばしました。汚職を擁護する司法機関など必要ありません...」
サイード大統領は内務省職員とメディアに、「司法上級評議会はまもなく過去のものになる」と述べ、臨時評議会の創設に必要な法律を近いうちに施行すると明らかにした。
チュニジアは2010年12月のジャスミン革命とその後の抗議デモで民主主義を確立したが、民主勢力の政治はうまく機能せず、不況、高失業率、政治家の暗殺など、複数の問題に悩まされてきた。
野党指導者のショクリ・ベライド氏は2013年2月に自宅近くで銃殺された。同氏は当時、政権を担っていたイスラム政党エンナハダを声高に批判していた。その6カ月後、今度は左派の政治家モハメド・ブラヒミ氏が暗殺された。
2つの暗殺事件はチュニジアを混乱させ、不況に拍車をかけた。
サイード大統領は昨年7月以来、汚職の取り締まりに力を注いでおり、何かしらの取引に関与したとされる議員とビジネスマン数人を刑務所に送った。
憲法学者や野党はサイード大統領の取り組みを違憲と厳しく非難してきたが、不況と高失業率に悩まされてきた国民の多くが大統領とその取り組みを支持している。
暗殺された野党政治家の支持者たちは、昨年7月まで議会第一党だったイスラム政党エンナハダが事件の司法手続きを遅らせたと非難している。エンナハダは関与を否定している。
サイード大統領は演説の中で、「司法は2つの暗殺事件を隠蔽しようとしている」と述べ、国民に決定を支持するよう呼びかけた。「裁判官は暗殺ファイルを机の奥に隠しました。国民の皆さん、司法に抗議するデモを行ってください...」
サイード大統領はコロナの感染拡大を抑えるために集会を禁じている。
AP通信によると、首都チュニスではサイード大統領の呼びかけに応じ、数千人が司法上級評議会の解散と暗殺事件の真実を求め行進したという。
司法上級評議会の議長は6日、「大統領に評議会を解散させる権限はなく、評議会は存続する」と述べ、サイード大統領を非難した。「我々は職務を遂行し続け、あらゆる手段を使って評議会を守ります...」
野党民主党のチャウアチ党首はサイード大統領の決定を独裁体制の確立に向けた取り組みの一環と非難した。「サイードはすべてを手中に収めるつもりです...」