◎ポーランドとドイツに派遣される米兵合わせて約2,000人はノースカロライナ州のフォートブラッグ基地から、ドイツに駐留している米兵約1,000人はルーマニアに移動する予定。
2月2日、米国防総省によると、ジョー・バイデン大統領は欧州の同盟国に米軍の臨時部隊を派遣する予定だという。
ポーランドとドイツに派遣される米兵合わせて約2,000人はノースカロライナ州のフォートブラッグ基地から、ドイツに駐留している米兵約1,000人はルーマニアに移動する予定。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2014年に併合したクリミア半島を含むウクライナ東部国境付近に10万人規模の部隊を配備したものの、ウクライナに侵攻する可能性を否定している。
ロシア外務省は2日の声明で米軍の東欧展開を「壊滅的」と呼び、厳しく非難した。
ロシアは2014年にウクライナ南東部のクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。
その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、西側とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。
ウクライナとテロリストの間で勃発したドンバス戦争の犠牲者は14,000人以上と推定されている。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ政府は2015年の停戦協定ミンスクⅡを履行していないと非難している。親ロシアのドネツクとルガンスクはミンスクⅡの締結以降もウクライナへの攻撃を継続している。
米国防総省は先月、必要に応じて東欧に8,500人の部隊を配備する準備を進めていると明らかにしていた。今回ドイツなどに展開される部隊はこれに含まれていない。
国防総省のジョン・カービー報道官は記者団に対し、「米兵3,000人の展開はNATOの同盟国の防衛を強化すると同時に、ロシアと世界に強いシグナルを送る」と述べ、プーチン大統領に圧力をかけた。
しかし、ロシアがウクライナに侵攻する可能性については、「現時点でプーチン大統領が侵攻を決断したとは思っていない」と述べたうえで、「展開する部隊の任務はロシア軍との戦闘ではなく、同盟国の防衛強化」と強調した。
またカービー報道官は、スペインのエル・パイス紙にリークされた米国の提案は間違っていないと述べ、緊張緩和と引き換えに「核兵器の削減と新たな信頼関係の構築」についてロシアに提案したことを事実と認めた。
一方、ロシアのグルシュコ副外相は、「米軍の東欧展開は緊張を高め、政治的解決策を失う」と指摘した。
欧州の首脳は危機の当事者と電話会談や直接会談を行っている。
イギリスのボルス・ジョンソン首相は2日にプーチン大統領と電話会談を行った。ジョンソン首相はプーチン大統領に対し、「すべての民主主義国家はNATOに加盟する権利を持っている」と述べ、ウクライナのNATO加盟を認めないというロシアの提案をあらためて却下した。
ロシア外務省によると、プーチン大統領はジョンソン首相に、「ウクライナはミンスクⅡで定めた停戦規則を慢性的に破っている」と指摘し、「NATOはロシアの安全保障上の懸念に対応せず、東欧に拡大しようとしている」と反論した。
プーチン大統領は1日の記者会見でも米国とNATOを名指しで非難し、「米国はロシアを戦争に引き込もうとしている」と述べていた。
米国はポーランドとルーマニアに部隊を展開すると発表したが、ロシアがウクライナ以外の国に侵攻する可能性は低く、侵攻を匂わせるシグナルも発していない。
今回の展開はあくまでNATOの同盟国を安心させるための措置であり、同時にプーチン大統領に圧力をかけると期待されている。ロシアが万一NATO加盟国に攻撃をしかければ5条(集団防衛)が発動し、米軍は同盟国の防衛に乗り出す。
バイデン大統領は外交の道を残しつつロシアに決意を示し、圧力をかけたいと考えている。その証拠に、米国は戦争が発生すれば激戦地になりかねないバルト三国に部隊を派遣していない。
ロシアは2016年にルーマニアに配備された米軍の陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を安全保障上の脅威のひとつと見なしている。