◎ジョン・カービー報道官はロシアの動き次第で最悪の事態(ウクライナと共にロシア軍を迎え撃つ)もあり得ると示唆した。
1月24日、米国防総省はウクライナ東部国境付近の緊張の高まりを受け、東欧に米軍を展開する可能性について言及した。
ジョン・カービー報道官は会見の中で、「配備に関する最終決定はなされていない」と述べ、承認に向けた手続きを進めていると明らかにした。
カービー報道官は記者団に、「状況が進展した(ロシアが侵攻した)場合、決定は下される」と述べた。またカービー報道官はNATO(北大西洋条約機構)の同盟国と共に行動すると述べたうえで、「ウクライナに部隊を展開する計画はない」と強調した。
ロシアは2014年に併合したクリミア半島を含むウクライナ国境付近に10万以上の兵を配備したにもかからず、ウクライナへの侵攻を否定している。
ジョー・バイデン大統領は24日に欧州の同盟国とオンライン協議を行い、ロシアの侵略に対する共通の取り組みを再確認した。
フランス、スペイン、オランダ、デンマークなど、一部のNATO加盟国は東欧に部隊を派遣すると表明している。米国はウクライナへの兵器提供を開始した。
バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアは米国製の兵器をウクライナに送る予定。
24日のオンライン協議にはバイデン大統領、ショルツ独首相、ジョンソン英首相、マクロン仏首相、ドラギ伊首相、ポルトガルのドゥダ大統領、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長、そしてNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が出席した。
バイデン大統領は首脳らに、「非常に非常に非常に良い会合を行えたことに満足している」と述べ、米国と欧州は完全に連帯していると強調した。
Great meeting with @POTUS on European security with #NATO leaders @EmmanuelMacron, @OlafScholz, Mario Draghi, @AndrzejDuda, @BorisJohnson & our #EU partners @eucopresident & @vonderleyen. We agree that any further aggression by #Russia against #Ukraine will have severe costs. pic.twitter.com/r7wx0Xln4X
— Jens Stoltenberg (@jensstoltenberg) January 24, 2022
カービー報道官は会見の中で、「ロイド・オースティン国防長官はバイデン大統領に軍事的緊張が緩和する兆候が見られないことから、東欧に兵士8,500人の派遣を命じるよう勧めた」と述べた。
またカービー報道官は、「NATOはNATO軍の相応部隊と呼ばれている兵士約40,000人に厳戒態勢への移行を命じる可能性があり、それが実行された場合、米兵8,500人の大半は即応部隊の一部になるだろう」と述べた。
さらにカービー報道官は、「欧州に拠点を置いている米軍が援軍の一部として東に移動する可能性も否定できない」と述べ、ロシアの動き次第で最悪の事態(ウクライナと共にロシア軍を迎え撃つ)もあり得ると示唆した。
米国の発表に先立ち、西側の同盟国はNATOの旗の下で最悪の事態に備えるという「決意」を表明し、情報戦でロシアに揺さぶりをかけた。
イギリスのジョンソン首相は、ロシアがウクライナに親ロシアの指導者を送り込もうとしているという諜報機関の情報を引用し、「ロシアはウクライナに電撃戦を仕掛けようとしている」と警告した。
ジョンソン首相は記者団に、「ウクライナ国境にはロシアの戦闘集団が群がっており、首都キエフを奪う電撃戦の準備が進められていることは明白」と述べた。「私たちは侵攻は悲惨な結果を招くとロシアに明確に警告する必要があります...」
ウクライナの市民は第三次世界大戦に発展しかねない異常事態を現実と受け止め、領土防衛軍の準備と訓練を進めている。現地メディアによると、部隊の兵士は主にボランティアで構成され、警察の関係者や元兵士が指導にあたっているという。
部隊に志願した50代の女性は英BBCニュースのインタビューの中で、「戦いたくないが、戦争が始まれば国を守るためにできる限りのことをする」と述べた。
ロシアは2014年にウクライナ南東部のクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。
その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、西側とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。
ロシアは昨年末、米国とNATOに新たな安全保障条約の草案を提案し、「ロシアの領土を攻撃できる範囲にNATO軍を配備しないこと」「ロシアの領土近くでのNATO軍の軍事活動禁止」「ウクライナのNATO加盟を認めない法的保証」などを書面で保証するよう求めたが、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は先週開催された外相協議で、「書面でより詳細な懸念を共有する」と述べ、提案には応じないと示唆した。
一方、ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は24日の定例会見で、「緊張を煽っているのはロシアではなく米国とNATO」と述べ、西側の動きを非難した。「ロシアは領土内で部隊を動かしているだけです。米国とNATOは対応を改めなければなりません」
米国務省はウクライナ大使館職員の家族に退去を命じ、ウクライナの米国市民にも帰国もしくは退去を促したが、EUの外交責任者は同じことをするつもりはないと述べている。
イギリスは外交官の家族を退去させると発表した。
ドイツは同様の命令を出しておらず、アンナレーナ・ベアボック外相は24日の会見で、「ウクライナをこれ以上混乱させるつもりはない」と強調した。
ウクライナ外務省の報道官は米国の決定を「時期尚早」と呼び、「過度な警戒はパニックを誘発する可能性がある」と懸念を表明した。