◎企業は勤務時間外に職員に連絡を取ることができなくなり、テレワークを選択した職員のガス、電気、インターネット通信料を代わりに支払うことになる。
2021年11月26日/ポルトガル、首都リスボン、在宅勤務中の女性(Getty Images/AP通信/PAメディア)

ポルトガルの保健当局によると、11月26日のコロナウイルス新規陽性者は3,205件、死亡者は8人、直近1週間の陽性者は10月末の約4倍に増加したという。

ポルトガルのワクチン接種率は世界トップレベルだが、政府は27日の声明でワクチン接種をさらに加速させると述べ、企業に在宅勤務(テレワーク)をうまく活用するよう呼びかけた。完全接種率は26日時点で人口の約88%、少なくとも1回接種した人は89%。

議会は今月、コロナの感染拡大でより一般的になったテレワークの規則を強化する在宅勤務法を可決した。これにより、企業は勤務時間外に職員に連絡を取ることができなくなり、テレワークを選択した職員のガス、電気、インターネット通信料を代わりに支払うことになる。

また、在宅勤務者の勤務状況をチェックするソフトやシステム(カメラによる監視など)の導入も禁止された。

法律は12月1日に施行する予定である。

しかし、労働法の専門家や労働者の権利保護団体などによると、在宅勤務法は中途半端でうまく機能しない可能性が高いという。ポルトガルの主要な弁護士事務所であるPLMJの弁護士はAP通信に、「政府の気持ちは理解できるが、法律はスカスカで実行不可能」と述べた。

ポルトガルを含むEU加盟国は、コロナの感染拡大が本格化した昨年3月頃からテレワークを積極的に推奨し始めた。EUを統括する欧州委員会はテレワークへの移行を合法的に行える法律や規則の導入を加盟国に求めている。

EU加盟国の大半は企業に在宅勤務者の割合を増やすよう要求した。要求方法は国によって異なるが、大半の加盟国はテレワークに関する法律に基づき対応している。

ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどは、コロナウイルスの感染拡大前に労働者の「切断する権利(労働時間外の連絡を無視できる権利)」を法制化していた。この法律はEUの標準になりつつある。

しかし、ポルトガルは切断する権利をさらに強化し、企業により多くの責任を負わせることにした。在宅勤務法は、「雇用主は不可抗力を除いて、勤務時間外に従業員に連絡することを控えなければならない」と書いている。

また、8歳以下の子供を持つ親または介護者は、テレワークを行える職種であれば、自分の意思でテレワークを選択する権利を与えられる予定である。法律に違反した企業は「違反ごとに」約10,000ユーロ(約130万円)の罰金を科される。

首都リスボンの通信関係の企業で働いているアンドレイア・サンパイオ氏はAP通信の取材に対し、「政府の方針には賛成するが、在宅勤務法の施行は非現実的」と語った。「私は時間外の連絡を気にしません。職場の上司は部下とうまく連絡が取れるかどうか心配しています...」

サンパイオ氏は「法律は労働者を保護し、企業の首を締めあげている」と指摘した。「コロナの影響で経営が悪化した企業は人員を削減するかもしれません...」

ソーシャルメディアには、この法律に関する質問や疑問が多数寄せられている。

「時間外にメールを送るだけで罰金ですか?WhatsAppもダメですか?」

「海外のクライアントと連絡を取るためには時間外の個人対応が必要不可欠です」

「サボり癖のある労働者がいます。どうしたらいいですか?」

「電気とガス代の立て替えは労働時間内に使用した分だけですか?」

「管理職の時間外対応はOKですか?」

「緊急事態の連絡はOKですか?」

「何がOKで何がダメなのかさっぱり分かりません...」

国内最大の企業グループであるポルトガルビジネス連盟は法律の起草に関与しておらず、それは穴だらけと考えている。同連盟の法務部門のルイス・エンリケ氏は地元メディアのインタビューの中で、「テレワークは各セクター、各企業、各部門の上司と部下の労働条件などに合わせて調整しなければならない」と強調した。

2015年に政権を奪取した極左の社会党は来年1月の総選挙を強く意識し、法律を「労働者の権利」と呼んだ。

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