◎ビリオネア税は3年連続で年収が1億ドル(約110億円)以上または、資産10億ドル(約1,100億円)以上の納税者に適用される予定。
10月27日、米上院は超富裕層に対する「ビリオネア税」という新しい税法案を発表し、全米の億万長者に衝撃を与えた。
上院財務委員会のロン・ワイデン委員長(民主党)は声明の中で、「ビリオネア税は超富裕層の手元にある資産に課税する」と述べた。合衆国憲法は、「個人の資産は売却した時のみ課税の対象になる」と定めている。
上院の声明後、テスラ社のイーロン・マスクCEOやアマゾンの創設者であるジェフ・ベゾス氏を含む一部の超富裕層は、ビリオネア税に反対するツイートや声明を出した。
ブルームバーグのリアルタイムデータによると、マスク氏の純資産はテスラ社の株価上昇を受け、約2,870億ドル(約34兆円)に達したという。
スペースXの創設者でもあるマスクCEOは28日、「私は人類を火星に連れていくためにお金を使います」とツイートし、さらに別のツイートで、「政治家は人々(超富裕層)のお金を使い果たして、その後皆さん(平民)の元にやってきます」と述べた。
ブルームバーグによると、マスクCEOの純資産は2021年だけで約1,170億ドル(約13兆円)増加したという。
一方、ワイデン上院議員と多くのリベラル派は、「米国の超富裕層は富を増やし続けているにもかかわらず、巧みに税金の支払いを回避している」と述べ、ビリオネア税は公平な税の支払いを保証すると応戦した。
民主党事務所によると、ビリオネア税は3年連続で年収が1億ドル(約110億円)以上または、資産10億ドル(約1,100億円)以上の納税者に適用されるという。対象者は米国の人口(約3億3,000万人)の0.001%未満にあたる700~800人と伝えられている。
ワイデン上院議員は格差を打ち負かすとほのめかし、「超富裕層は米国の経済を支える大勢の人々と同じようにビリオネア税を支払うことになるだろう」と述べた。
その他のリベラル派も、ビリオネア税はジョー・バイデン大統領が提案したインフラ法案の負債回収に役立つと主張し、10年で約2,000億ドルを徴収できると述べた。
一方、共和党は増税に強く反対しており、一部の専門家もビリオネア税は複数の異議申し立てに直面する可能性が高いと予想した。
食料品チェーンのグリステデスを所有する不動産王のジョン・キャツィマティディス氏はAP通信の取材に対し、ビリオネア税をロシアのウラジーミル・プーチン大統領に例え、非難した。「この提案をプーチン(の独裁)を思い起こさせます...」
2013年のNY市長選で共和党候補に指名されなかったキャツィマティディス氏はビリオネア税を「愚か」と呼んだ。「愚かなことはやめなさい。愚かな民主党の愚かな提案は米国だけでなく、全国民を傷つけるでしょう」
ドナルド・トランプ前大統領の同盟国であるキャツィマティディス氏は、海外に逃亡すると示唆した。「民主党は仕事を生み出す人々を殴ろうとしています。しかし、私たちは立ち上がってどこかに行くことができます」
リベラル派の富裕層に対する課税提案を「極左の悪だくみ」と非難してきた投資家のレオン・クーパーマン氏はデイリー・ビーストの取材に対し、「米国が発展できたのは、私のようなビリオネアがお金を稼ぎ、人々に還元したおかげだ」と述べた。「私たちは稼いだお金を人々に還元しています。私たちを攻撃すれば、米国は沈没するでしょう」
すべての億万長者が怒りを表明しているわけではない。
リベラルな投資家兼慈善家であるジョージ・ソロス氏のスポークスマンはAP通信に、「ソロス氏は提案されたビリオネア税を支持している」と語った。
世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏はまだ提案に関するコメントを出していないが、バークシャー・ハサウェイは長い間、超富裕層に多くの税金を課すよう要求してきた。
一部の専門家は、売却していない資産に対する課税は違憲であり、異議申し立てに直面すると指摘しているが、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は28日、「委員会はビリオネア税には法的根拠があると信じている」と述べた。
サキ報道官はビリオネア税の合憲性について質問を受け、「ホワイトハウスは合法ではないものを支持しない」と述べた。