◎メリック・ガーランド司法長官は9日の記者会見で、「テキサスの中絶禁止法は明らかに違憲である」と述べた。
2021年9月9月/ワシントンD.C.司法省、メリック・ガーランド司法長官(J. Scott Applewhite/AP通信)

9月9日、米国司法省は妊娠6週目以降の中絶を州法で禁止したテキサス州を訴えると発表した。

テキサス州は今月1日に物議を醸す通称「ハートビート法(TX SB8)」を施行した。女性の性と健康を支援する非営利団体のプランド・ペアレントフッドやアメリカ自由人権協会を含む権利団体は最高裁判所に同法の停止を求めていたが、判事はこの訴えを棄却した。

これにより、1973年のロー対ウェイド判決で認められた中絶の権利が初めて覆されることになった。

※ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁判所は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。

メリック・ガーランド司法長官は9日の記者会見で、「テキサスの中絶禁止法は明らかに違憲である」と述べた。

TX SB8は妊娠6週目以降の女性に中絶手術を提供した医師と、中絶に関与した個人や団体に最大10,000ドル(約110万円)の損害賠償を起こす権利を「民間人」に与える。

司法省はテキサス州の裁判所に提出した訴訟文書の中で次のように述べている。

・TX SB8は女性の憲法上の権利を侵害しており、合衆国憲法は州法を上回るという憲法の優越条項に違反している。

・他の州が「市民から憲法上の権利を奪う」同様の州法を制定する可能性があることを懸念している。

・合衆国憲法は、「州は女性が中絶の最終的な決定を下すことを禁止してはならない」と定めている。

ガーランド司法長官は、「合衆国憲法を無効にする計画を容認することはできない」と語った。また、他の州もテキサス州と同様の動きを見せた場合、司法省は同じように訴訟を起こすと警告した。

ジョー・バイデン大統領はTX SB8に対応するよう圧力をかけられている。バイデン大統領は先週、人権団体の訴えを退けた最高裁判所の判決に強い懸念を表明し、「問題に対処する」と誓った。

司法省はテキサス州の裁判所に、即座にTX SB8を停止するよう求めている。ガーランド司法長官は記者団に対し、「この州法は合衆国憲法に明記された女性の権利を侵害するだけでなく、すべての民間人を賞金稼ぎにする」と語った。

アメリカ自由人権協会を含む権利団体も、TX SB8は中絶を求める女性に対する嫌がらせや「賞金稼ぎ訴訟」を誘発する可能性があると警告していた。

中絶手術を行うクリニックはTX SB8に従うと述べているが、現地メディアによると、テキサス州内にあるいくつかのクリニックは中絶手術の受付を一時的に停止したという。手術を提供しなければ、賞金稼ぎに訴えられることはない。

一方、テキサス州の近隣の州では、テキサス州の患者が急増していると伝えられている。

テキサス州最大の妊娠中絶反対グループであり、TX SB8を強く支持するテキサス・ライト・トゥ・ライフは9日、「バイデンの策略は打ち負かすために、他の州と協力して準備を進めている」と述べた。

テキサス州のグレッグ・アボット州知事の報道官は、「裁判所はTX SB8を支持すると確信している」と語った。「テキサス州は心拍を確認したすべての子供の命を中絶被害から守る法律を施行しました。アメリカ人は子供の命を守らなければなりません」

TX SB8は医師の署名を必要とする緊急中絶は6週目以降であっても手術することを認めているが、レイプや近親相姦による望まない妊娠の中絶は認めていない。アボット州知事は州内からレイプ犯を排除するよう努めると約束した。

しかし、司法省の最近の報告によると、レイプ事件の大半は警察に報告されていないことが分かったという。2019年の調査では、レイプまたは性的暴行に遭った被害者の3人に1人が警察に告発していたが、残りは泣き寝入りしていた。

TX SB8の廃止を求めているテキサス州の生殖権センターは司法省の介入を歓迎した。「司法省は合衆国憲法で保障されている中絶の権利を取り戻し、賞金稼ぎの武装を解除しなければなりません」

アメリカ自由人権協会は9日、「司法省の訴訟はテキサス人に対する不正を正し、他の州で同様の大惨事が発生することを防ぐ重要な最初の一歩になる」と述べた。

2021年9月5日/テキサス州オースティンの議会議事堂前前、ハートビート法に抗議する人々(Getty Images/AFP通信)
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