◎米中央軍のフランク・マッケンジー将軍は30日、アメリカ史上最長の戦争と避難任務の完了を発表し、最後の軍用機が30日未明に空港から離陸したと述べた。
2021年8月30日/アフガニスタン、首都カブールの銀行前(Khwaja Tawfiq Sediqi/AP通信)

8月30日、タリバンの戦闘員たちは最後の米軍機が首都カブールの空港から飛び立つところを見届け、空に銃を乱射し、約20年続いたアフガン戦争の勝利と「完全な独立」を盛大に祝った。

ハミド・カルザイ国際空港に駐屯しているタリバンの戦闘員、ヘマド・シェルザル氏はAP通信の取材に対し、「終わった」と喜びをかみしめた。「この幸せを言葉で表現することはできません。私たちの20年は間違っていませんでした」

米中央軍のフランク・マッケンジー将軍は30日、アメリカ史上最長の戦争と避難任務の完了を発表し、最後の軍用機が30日深夜(現地時間)に空港から離陸したと述べた。

マッケンジー将軍は声明の中で、「私たちは出国を希望する全ての人を救出できなかった」と認めた。

タリバンの報道官、ザビフラ・ムジャヒド氏は、「米軍は空港を去り、アフガニスタンは完全に独立した」と述べ、高らかに独立を宣言した。

アメリカとその同盟国、そしてタリバンと敵対する北部同盟を含むアフガン民兵は、2001年10月に当時のタリバン政権への攻撃を開始し、アルカイダのウサーマ・ビン・ラーディンらを追跡した。

タリバン政権崩壊後、西側諸国はアフガニスタンを再建するという野心的な取り組みを開始し、西洋式の民主政府と治安部隊に数十億ドルを投資した。また、タリバンに抑圧されていた女性たちは教育や働くことを許可され、政府を含む公共部門で重要な役割を果たすようになった。

しかし、タリバンは去らなかった。

アフガン戦争の終結を熱望していたドナルド・トランプ前大統領は2020年2月末にタリバンとの歴史的な和平協定に署名し、米軍撤退への道を開いた。そしてジョー・バイデン大統領は撤退期限を2021年5月から8月に延長し、何が起ころうと撤退を完了させると誓った。

タリバンは現在、数千人の反政府民兵に支配されている山岳地帯のパンジシール州を除き、アフガニスタン全土を支配している。タリバンはパンジシール州を占領したことがなく、平和的な解決を望んでいる。

独立を宣言した世界で最も貧しい国のひとつであるアフガニスタンは多くの深刻な課題に直面している。

多くのアフガン人がタリバンの抑圧的な支配とこれから起こると予想されている経済危機に強い懸念を表明し、銀行に走った。また、イスラム国(ISIS)を含むジハード組織は西側諸国に歩み寄ろうとするタリバンの政策を非難しており、30日にはカブールの空港に向けてロケット弾が発射された。タリバンは8月31日以降、政府施設や空港の安全を確保しなければならない。

8月26日には空港の近くで自爆テロが発生し、アフガンの民間人少なくとも169人と米兵13人が死亡した。タリバンはテロの首謀者であるISIS-Kを含むジハード組織を封じ込め、アフガンをテロ活動の拠点にはしないと誓約しているが、西側諸国の支援なしで実現できるかどうかは不透明な情勢である。

米中央軍のマッケンジー将軍は、「タリバンの戦闘員は避難任務の遂行に非常に役立った」と述べたが、カブールでは今後数日の間に新たなテロが発生する可能性が高く、タリバンは治安の維持に苦労するだろうと警告した。

またマッケンジー将軍は、タリバンはISISの戦闘員推定2,000人を刑務所から釈放し、新アフガン軍に加えたと明らかにした。「ISISの戦闘員たちは自分で蒔いた種を刈り取るでしょう...」

カブールの空港にはタリバンの統治を否定するアフガン人が大挙して押し寄せ、少なくとも数千人が最後の米軍機が飛び立つところを見送った。

タリバンは空港の運用と民間人の旅行を再開すると主張しているが、セキュリティ上の懸念、運営管理者や従業員の問題、どの民間航空会社のフライトを許可するかなど、問題は山積しており、本当に運用できるかどうかは不明。

一方、旧アフガン政府とタリバンの和平交渉を主導してきたカタールは、タリバン、国際機関、アメリカ、トルコなどが参加する空港の運用に関する交渉に参加している。カタールのロルワ・アル・カーター外相補佐官は30日、「空港の安全を維持しながら通常の運航を再開することが最優先事項である」と語った。

アフガン駐留米軍の最後の攻撃は29日に実施され、ISIS-Kの自爆テロ犯を乗せたとされる車両がドローン空爆の標的になった。しかし、子供6人を含む民間人少なくとも10人が爆発に巻き込まれ死亡したことが報道で明らかになり、米軍は批判に直面した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は撤退完了の数時間前、「米軍は標的型空爆を実施する前に、民間人の死傷者を回避する措置を講じている」と述べた。

2021年8月30日/アフガニスタン、首都カブール、ロケット攻撃を受けた車両(Khwaja Tawfiq Sediqi/AP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・1996年~2001年、タリバンは国内の全ての女性にブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制し、女性の教育を10歳未満に限定し、即決処刑を含む残忍な刑罰を推進した。

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。

・2020年2月、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの歴史的な和平合意に達した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

2021年8月30日/アフガニスタン、首都カブールのハミド・カルザイ国際空港から離陸する米軍機(Wali Sabawoon/AP通信)
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