▽M23が州都ゴマを制圧した1月30日以来、約900人の遺体が市内の病院や安置所に運び込まれた。
世界保健機関(WHO)は3日、アフリカ中央部・コンゴ民主共和国の北キブ州で先週発生した国軍と反政府勢力M23(3月23日運動)の戦闘により、少なくとも900人が死亡したと明らかにした。
それによると、M23が州都ゴマを制圧した1月30日以来、約900人の遺体が市内の病院や安置所に運び込まれたという。
M23は東部の要衝ゴマを支配下に置き、南キブ州の州都ブカブに向けて進軍中とみられる。
欧米諸国は隣国ルワンダによるM23への軍事支援を非難。一部の国は援助停止を決めている。
M23は1月31日の記者会見で、「キンシャサに総攻撃を仕掛ける」と主張した。またM23は「政府が対話を求めた場合、応じる用意がある」と述べていた。
ルワンダ軍はM23を支援し、ゴマ市内で堂々と活動している。
ルワンダ大統領府もコンゴとの全面戦争に応じる用があるとしている。
M23はルワンダとウガンダの支援を受けていたコンゴのツチ族武装集団の元戦闘員で構成され、2009年3月に締結された和平協定により、コンゴ軍に編入された。
しかし、M23の戦闘員はコンゴ軍に編入された後もルワンダ国境付近で活動を続け、13年の紛争に敗れるとルワンダやウガンダに逃亡。21年11月頃から活動を活発化させ、北キブ州の複数の集落を占領した。
コンゴ、米国、国連安保理はルワンダ政府がM23を支援していると指摘。ルワンダはこの主張を否定している。
1994年のルワンダ大虐殺に関与したとされるフツ族の住民数千人がコンゴ東部に逃げ込んで以来、両国の関係は緊張状態にある。
M23はコンゴに逃げ込んだフツ族の掃討を目指しているものとみられる。ルワンダはコンゴ政府が組織的に大虐殺の加害者であるフツ族を匿っていると主張している。
ルワンダ大虐殺の犠牲者は80万~100万人と推定されている。フツ族の過激派はツチ族だけでなく、フツ族の穏健派も殺害した。
国連はコンゴ国内で活動するルワンダ兵を最大4000人と推定している。
政府とM23による戦争は世界最大級の人道危機に発展。700万人以上が避難を余儀なくされている。
M23はこの数週間で支配地域を拡大し、ゴマを包囲していた。
ゴマには国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の本部と南部アフリカ地域圏の基地があり、郊外の避難民キャンプでは少なくとも200万人がテント生活を送っている。
WHOは3日の声明で、「この戦闘による負傷者は2900人近くに上る」と述べた。
一方、M23は3日の声明で、「2月4日から停戦する」と一方的に宣言した。
またM23の報道官は「南キブの州都ブカブを占領する意図はない」と強調した。
政府は停戦に関するコメントを出していない。
コンゴ東部では国際テロ組織アルカイダやイスラム国(ISIS)とつながりのある過激派など、120以上の武装勢力が活動している。
政府はISIS系組織「民主同盟軍(ADF)」の攻撃にも対処する必要があり、厳しい戦いを強いられている。
ADFはウガンダで発足した反政府勢力。1990年代半ばから北キブ州などに拠点を置き、民間人数千人を虐殺したと告発されている。