▽ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
中米ハイチの暫定大統領評議会を率いるヴォルテール(Leslie Voltaire)議長は25日、トランプ(Donald Trump)米大統領による不法移民強制送還政策はハイチに壊滅的な影響を与えると警告した。
ヴォルテール氏はAP通信のインタビューで、「米政府による対外援助の凍結、不法移民送還、移民受け入れ拒否はハイチに大打撃を与える」と語った。
ヴォルテール氏は25日、ローマ・バチカンでフランシスコ教皇(Pope Francis)と面会し、ギャング紛争と移民問題について話し合った。
教皇とヴォルテール氏はギャングが一般市民を殺害していることを非難した。
ヴォルテール氏によると、ハイチの人口1140万人の5割が自力で食料を確保できず、米国を含む同盟国の支援に依存しているという。
米国務省は24日、緊急食料支援プログラムとイスラエルおよびエジプトへの軍事援助を例外として、全ての対外援助事業・資金を凍結するよう命じた。ハイチは凍結の対象外である。
ヴォルテール氏はAPに「トランプ大統領は以前、ハイチを”クソのたまり場”と呼んだことがある」と述べ、「ハイチに関心を持ってくれるとは思えない」と嘆いた。
またヴォルテール氏は「米国の不法移民、ハイチ人を含む正規ビザ(査証)を持たない人々が一掃されれば、ハイチは壊滅的な影響を受ける」と警告した。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
首都ポルトープランスでは2年以上前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80~90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。中部アルティボニット県では地元のギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
この結果、70万人以上が住まいを失い、その場しのぎの不衛生なテントやシェルターで避難生活を余儀なくされている。ギャング紛争が始まって以降、国を離れた市民は数十万人と推定され、その大半が米国を目指している。
ヴォルテール氏によると、米国にはおよそ150万人のハイチ人がおり、「一時保護制度」と呼ばれるプログラムを受けている人は15万人に過ぎないという。残り135万人はビザを持たない不法移民とみられる。
ヴォルテール氏は「トランプ大統領が彼らをハイチに送還しても、飢餓に直面している我々に彼らを支える力はない」と強調した。