◎シリア内戦の犠牲者は50万~60万人と推定されている。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。
シリア、イスラム国(ISIS)との戦闘で荒廃した町(Getty Images)

国連シリア担当特使は17日、反体制派による旧アサド政権の崩壊にもかかわらず、シリア内戦はまだ終わっていないと警告した。

国連のシリア和平協議を仲介するペデルセン(Geir Pedersen)特使はニューヨークの国連安保理で、同国北部におけるトルコの支援を受ける勢力とクルド系戦闘員との戦闘に言及。「停戦が仲介されるまでのこの2週間、大きな戦闘が起きた」と警告した。

トルコは長年に渡って、旧アサド政権と敵対する反体制派のひとつであるシリア国民軍(SNA)を支援してきた。

SNAはアサド(Bashar Assad)前大統領のロシア逃亡後、米政府の支援を受けるクルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」と戦闘を繰り広げた。

SDFは米の支援を受け、シリアにおけるイスラム国(ISIS)との戦いで主導的な役割を果たしてきた。その先頭に立つのはクルド人民防衛部隊(YPG)で、トルコはこれをテロ組織にしているクルド労働者党(PKK)の同盟組織とみなしている。

SNAは先週、SDFから北部の都市マンビジュを奪取。その後、米国の仲介により停戦協定が発効した。SNA部隊はマンビジュから東に向かったとされる。

ペデルセン氏の演説後、米国務省報道官は「シリア北部の停戦が今週末まで延長された」と明らかにした。

アサド氏は先週、タハリール・アルシャーム機構(HTS)率いる反体制派による電光石火の攻勢に対応できず、ロシアに逃亡。これにより、50年にわたるアサド一族の独裁に終止符が打たれた。

野党と反体制派が率いる暫定政府は数百の部族や武装勢力が活動するシリアを一つにまとめるという困難なミッションに挑むことになる。

シリア内戦の犠牲者は50万~60万人と推定されている。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは旧アサド政権の弾圧により死亡した10万人以上の遺体が首都ダマスカスの集団墓地に埋葬されている可能性があると警告している。

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