◎アサド氏は10年以上に渡る致命的な内戦やそれに伴う数多くの人権侵害には言及せず、謝罪もしなかった。
ロシアに逃亡したシリアのアサド(Bashar Assad)前大統領が16日、体制崩壊以来初の公式声明を出し、ロシア政府の要請を受け自国を離れたと明らかにした。
アサド氏は大統領府の公式テレグラムアカウントに声明を投稿。「私のシリア出国は計画されたものではない」と書いた。
「テロ勢力がダマスカスに侵入したため、私は同盟国ロシアと連携してラタキア県に移動し、作戦を指揮した」
ラタキア県にはロシアの空軍基地がある。
アサド氏は「ラタキアに移動した日、我が軍がすべての戦線から完全に撤退し、最後の軍の陣地が陥落したことが明らかになった」と述べた。
「この地域の戦況が悪化の一途をたどる中、ロシア軍基地もドローンによる攻撃を受けていた。基地を離れる実行可能な手段がないため、ロシア政府は基地司令部にロシアへの即時避難の手配を要請した」
「これはダマスカス陥落の翌日に起こったことで、その後、軍陣地は機能を停止し、それに伴いすべての国家機関は麻痺した」
タハリール・アルシャーム機構(HTS)とその同盟組織は先月末、アサド氏の支配下にある北部アレッポ県に攻め込み、全土を制圧。HTSはその後、中部の要衝ハマに侵攻。第3の都市ホムスも奪取した。
HTSは7日、ダマスカスを制圧し、アサド政権の終焉を宣言。さらにHTS司令部は8日、アサド氏が国を去ったと発表した。
旧アサド政権は翌日、アル・バシル(Mohammed al-Bashir)首相率いる野党主導の暫定政府に権力を移譲することに同意した。
HTSは内戦下のシリアで活動する反政府勢力のひとつ。「国際テロ組織アルカイダ」のシリア支部とみなされ、北西部イドリブ県に本部がある。
HTSの指導者であるジャウラニ(Abu Mohammad Al-Julani)氏が暫定政府に関与するかは分かっていない。米政府はジャウラニ氏に1000万ドルの懸賞金をかけている。
アサド氏は10年以上に渡る致命的な内戦やそれに伴う数多くの人権侵害には言及せず、謝罪もしなかった。
シリア内戦の犠牲者は50万~60万人と推定されている。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。
アサド政権が崩壊すると、歓喜に沸く戦闘員や住民が各地の刑務所を空にした。この結果、10万人以上が反体制派や一般市民に紛れて市内に流入したと考えられている。