◎メキシコの個人情報保護法は、「政府は個人のプライバシーを保証する」とし、「個人情報の不適切な使用、持ち出し、公開、隠匿、改ざん、破壊(その全部または一部)」に対する処罰を定めている。
メキシコのオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は23日、「米ニューヨーク・タイムズ紙の記者の電話番号を公開した」とメディアから非難されたことについて、「電話番号を変えればいい」と応戦した。
オブラドール氏は大統領選直前と大統領就任後に同氏の側近が麻薬カルテルから現金を受け取ったというタイムズの報道に反発し、記者の電話番号を22日に開示した。
オブラドール氏は23日の定例会見でこれを擁護し、「個人情報保護法は大統領には適用されない」と主張した。
首都メキシコシティの人権団体はこの開示を「とんでもないこと」と非難。記者の命を危険にさらす可能性があると警告した。
メキシコの個人情報保護法は、「政府は個人のプライバシーを保証する」とし、「個人情報の不適切な使用、持ち出し、公開、隠匿、改ざん、破壊(その全部または一部)」に対する処罰を定めている。
しかし、オブラドール氏は、「メキシコ大統領の政治的、道徳的権威は法律の上にある」と主張。「いかなる法律も民主主義を守るという大統領の崇高な原則の上に立つことはできない」と強調した。
またオブラドール氏はタイムズを含む米国のメディアが偽情報を拡散し、メキシコの安全保障を脅かしていると非難した。
オブラドール氏は記者団に対し、「あなたたちは恣意的な理由で政治家を貶めようとしている」と述べ、「電話番号を変えればいい」と言い放った。
メキシコはシリアなどの紛争地を除いて、記者にとって最も危険な国のひとつである。
人権団体によると、オブラドール氏が就任した2018年以来、国内で少なくとも55人の記者が殺害されたという。
タイムズはオブラドール氏の側近の不正疑惑について、米当局は疑惑の調査を正式に開始しておらず、情報提供者の申し立てが正確か否かも現時点では不明だとしている。
ホワイトハウスの報道官は22日の記者会見で、「オブラドール大統領に対する調査はない」と断言した。