◎インドは中国、米国、EUに次いで温室効果ガスの排出量が多い国のひとつである。
2021年11月17日/インド、首都ニューデリーの市街地(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

インドのシンクタンクは23日、同国の脱石炭にかかる費用は今後30年間で9000億ドル(約118兆円)にのぼり、その過程で500万人以上が職を失うことになるという調査結果を公表した。

首都ニューデリーに拠点を置くシンクタンク「iFOREST」は数百万人の生活を脅かすことなく石炭火力から脱却する方法を概説しているが、実現するかどうかは政府次第である。

インドを含む石炭に依存する多くの国がクリーンエネルギーへの移行を模索している。化石燃料部門などで働く人々の生活を守るためには適切かつ公正な移行が必要であり、それを怠れば数千万の雇用が失われ、大混乱を引き起こす可能性がある。

iFORESTは報告書の中で、「この費用は化石燃料に依存する州や地区におけるクリーン部門の成長を支援する必要経費と捉えるべき」と述べている。

iFORESTは化石燃料に依存する4地域を調査し、インフラ整備、移行準備など、費用がかかる要因を大きく8つに分類し、総費用を算出した。

公正な移行を実現にするための最大の投資はクリーンエネルギー(ソーラー、風力、水力など)のインフラ整備費用であり、2050年までに最大4720億ドルが必要になると見積もっている。

労働者にクリーンエネルギー部門の仕事を提供するために必要な費用(専門施設の開設や教育など)は90億ドルほどだ。

iFORESTは新産業やインフラへの投資に総額6000億ドル。化石燃料に依存し、影響を強く受ける地域社会への助成金や補助金に3000億ドルが必要になると見積もった。

米ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のアナリストはiFORESTの報告書を歓迎し、公正な移行に期待を表明した。

またCSISは「非正規を含めた1500万~2000万人が働く部門の再編には天文学的な費用がかかる」とした。「この報告書は非常に重要であり、インドでは公正な移行に向けた議論が始まっているのです...」

インドは中国、米国、EUに次いで温室効果ガスの排出量が多い国のひとつである。政府の統計によると、国内で消費する電力の75%を石炭火力で賄っているという。

モディ(Narendra Modi)首相は今月初め、大規模停電を避けるため、この夏まで石炭火力発電所をフル稼働させることを規定する緊急命令を発出した。

政府の統計によると、同国の石炭消費量は2035~40年の間にピークに達する見通し。

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