◎ロシア軍は半年以上前からバフムート占領を目指している。
ウクライナ東部ドネツク州の知事は4日、要衝バフムートの戦況について、通りで地上戦が続いていると報告した。
ロシアの民間軍事会社ワグネルはバフムートを実質的に包囲したと主張しているが、ウクライナ軍は徹底抗戦を続けているようだ。
ウクライナ軍参謀本部によると、バフムートにとどまる市民約4000人は電気、ガス、水道を全く利用できず、避難所などに身を寄せているという。
軍の報道官はテレグラムに投稿した声明で、「攻撃を受けていない建物はなく、街は焼け野原になっている」と述べた。
ロシア軍は半年以上前からバフムート占領を目指している。
軍報道官はバフムートの前線付近で白兵戦が繰り広げられているとした。
ロシアはバフムートの前線に多くの兵士と兵器を投入しているとみられる。米国を含む西側諸国はこの都市の重要性に疑問を呈している。
米シンクタンク戦争研究所はプーチン(Vladimir Putin)大統領がバフムートに固執し過ぎていると指摘。「多くの犠牲を払うに値しない」という専門家もいるほどだ。
戦前のバフムートの人口は約7万5000人。ロシア軍はこの町を占領するために何千もの兵士を失っている。ウクライナはこの戦闘について、ロシア軍は自軍の7倍もの兵士を失ったと見積もっている。
英国防省は4日、北東部ヘルソン州郊外のロシア軍が前進し、ドネツク州を三方から包囲する準備を進めているように見えると報告した。
ドネツク州のキリレンコ(Pavlo Kyrylenko)知事は4日に放送されたウクライナ公共放送のインタビューで、「ロシア軍はバフムートの市民を救うつもりがなく、大虐殺を望んでいる」と非難した。
またキリレンコ氏は、「バフムートに通信手段はなく、多くの市民が避難できず、危機に瀕している」と述べた。
多くの専門家がバフムートは近いうちに陥落すると予想していたが、ウクライナ軍は半年以上、ロシア軍の侵攻を防いでいる。
AP通信によると、バフムートの戦地に近づくことはできず、そこにとどまる市民と連絡を取ることもできないという。
一部メディアはバフムートのウクライナ軍が撤退準備を進めていると報じた。警察が市民の避難を開始したと伝えられているが、詳細は不明である。
ウクライナ軍の指揮官たちはロシア軍を撃退し、多大な損害を与えたものの、バフムート防衛に固執すれば兵士と西側が供与した兵器を失いかねないと考えているのかもしれない。
欧米のアナリストは「統制された計画的な撤退」でウクライナ兵を保護し、態勢を整え、西側の戦車・ミサイル・弾薬が届き次第、反攻を仕掛けるべきと提案している。
しかし、市民を避難させながらの撤退は難しく、時間がかかるかもしれない。
ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は今週、東部ドンバスの戦況はますます困難になっていると警告。ウクライナ軍は多くの攻撃を撃退したと述べた。
キリレンコ知事は「ウクライナ領を一寸たりとも敵に渡すべきではないと信じている」と語った。「私たちはウクライナの土地、市民、企業を守るために戦うのです,,,」
またキリレンコ氏は現在ロシアの支配下に置かれている南東部マリウポリに触れ、「ロシア軍はバフムートをマリウポリのように廃墟にするつもりだ」と非難した。
ロシア軍は侵攻当初、港湾都市マリウポルを包囲し、3ヶ月に及ぶ戦闘の末、支配下に置いた。
ロシア軍は1月、バフムートから10kmほど離れたソレダルを支配したと発表。ウクライナ軍はこの町から計画的に撤退したと認めた。
ソレダルもウクライナ軍が撤退する頃には焼け野原になったと伝えられている。
ゼレンスキー氏は3日、ビデオ演説で、「ロシア軍を止めるためには大砲や砲弾が必要」と強調した。
ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は同日、ウクライナに4億ドル相当の新たな軍事支援を行うと発表。高軌道ロケット砲システム「ハイマース」や榴弾砲の弾薬などを追加供与するとした。
この追加供与には装甲車などの移動に使用できる「架橋戦車」が初めて含まれる予定だ。
架橋戦車は約18mの折り畳み式金属橋を備え、河川に橋を架けることができる。