◎NATOはアルバニア系とセルビア系住民の衝突を防ぐためにコソボに兵士約3700人を駐留させている。
2022年9月23日/コソボとセルビアの国境近く、NATOの平和維持部隊(Sabine Siebold/ロイター通信)

セルビアのブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領は10日、NATOに対し、隣国コソボ領内に自国の軍隊および警察の派遣を認めるよう要請すると明らかにした。

コソボは2008年にセルビアからの独立を一方的に宣言した。西側諸国の大半は独立を承認したが、セルビアやその同盟国であるロシアと中国は認めていない。

コソボ紛争(1998~99年)の死者は1万3千人と推定されている。セルビア軍によるアルバニア系住民の弾圧は国際的な批判を引き起こし、NATOが紛争を終わらせるためにセルビアを空爆した。

EUのボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表は先月、セルビアとコソボにおけるナンバープレート紛争を解決しなければ「小競り合い」に発展する可能性があると警告していた。

ブチッチ氏は10日の記者会見で、「コソボに駐留するNATO平和維持部隊(KFOR)の司令官に書簡を提出し、コソボ北部に自国の陸軍と警察を派遣すると要請した」と語った。

またブチッチ氏は、「NATOは要請を受け入れると確信している」と述べた。

NATOは1999年の国連安保理決議に基づき、KFORを発足させた。それ以降、セルビア軍がコソボ領内に入ったことはない。

この決議はセルビア軍の扱いについて、「KFORの司令官が承認すれば、セルビアは正教会の宗教施設、セルビア系住民が多く住む地域、国境に最大1000人の軍、警察、税関職員を派遣できる」としている。

ただし、決議が採択された時、コソボはセルビアの一部だった。

NATOはアルバニア系とセルビア系住民の衝突を防ぐためにコソボに兵士約3700人を駐留させている。

コソボ首相府は10日、ブチッチ氏の要請を「侵略」と呼び、地域を不安定にする卑劣な試みと非難した。

ブチッチ氏はコソボ当局とコソボ北部で人口の大多数を占めるセルビア系住民との間でトラブルが続いていることを受け、緊張を緩和するために要員を派遣したいとしている。

地元メディアによると、首都プリシュティナの北約50kmに位置する集落で10日、セルビア系住民とコソボ警察が銃撃戦を繰り広げたという。

コソボ政府は緊張が高まっていることを受け、この地域で今月18日に予定されていた地方選挙を来年に延期すると発表した。

コソボ政府は先月、セルビアで発行された自動車のナンバープレートを段階的に禁じると発表。これに北部のセルビア系住民が猛反発し、セルビア人議員、検察官、警察官などが職を辞し、抗議デモに発展した。

地元メディアによると、職を辞したセルビア人の元警察官が6日に選挙管理委員会の事務所を襲撃した疑いで逮捕されたという。負傷者はいなかった。

一方、警察は10日の銃撃戦について、「北部地域の道路封鎖に抗議する武装ギャングの犯行」と説明した。これを受け、当局は現場近くの国境検問所2カ所を封鎖したという。負傷者は報告されていない。

コソボのオスマニ(Vjosa Osmani)大統領は10日、緊張の高まりを受け、北部4地域の地方選挙を来年4月23日に延期すると発表した。

NATOのストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は8日、KFORは警戒を続けていると声明を発表。EUも両国に緊張を緩和するよう求め、「EU加盟の資格を得るためには紛争を平和的に解決し、関係を正常化しなければならない」と警告した。

2021年10月2日/コソボとセルビアの国境付近をパトロールするNATOの平和維持部隊(Getty Images/AFP通信)
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