◎ウクライナ侵攻は9カ月目に入り、膠着状態に陥っているように見える。
2021年7月27日/米バージニア州、ヘインズ国家情報長官(Susan Walsh/AP通信)

米国のヘインズ(Avril Haines)国家情報長官は4日、ウクライナにおける戦闘の勢いは減速しているが、大きく収束する兆しは見えず、冬の間も戦闘は続くという見解を示した。

ヘインズ氏はカリフォルニア州で開催されて防衛フォーラムで講演した。

西側の専門家とシンクタンクによると、ロシア軍のミサイル攻撃の規模は低下し、ウクライナ軍の進行速度も天候不良の影響で減速しているように見えるという。

ヘインズ氏は「ウクライナ軍の抵抗が弱まっているという兆候はみられない」と述べた。

またヘインズ氏は「両陣営は春以降の反攻作戦に向け、体制を整えている」と指摘した。「双方が補給、前線への兵器供給、再編に力を入れていることは間違いありません...」

ロシア軍はウクライナのエネルギーインフラを破壊することで補給と再編の力を弱めようとしている。

ウクライナ侵攻は9カ月目に入り、膠着状態に陥っているように見える。ロシアは一度占領した領土の半分以上を失った。

ヘインズ氏は「東部ドネツク州バフムートとその周辺地域で激戦が続いている」と述べた。

またヘインズ氏は「ロシア軍が南部ヘルソン市から撤退したことで、戦闘は鈍化した」という見方を示した。「戦争のテンポが落ちているのは明らかであり、特にロシア軍の撤退は戦況に大きな変化をもたらしました...」

ヘインズ氏は「両陣営は春の反攻に備えている」と指摘した。「ロシアはウクライナの前進に。ウクライナはロシアの反撃に備え、準備を進めています」

しかしヘインズ氏は、ロシアに反撃を試みる「体力」があるとは思えず、ウクライナの方がはるかに有利に見えると述べた。

ヘインズ氏によると、米国の情報機関はロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領について、自軍が置かれている困難な状況を伝えられておらず、全体像を把握できていない可能性が高いという。

ヘインズ氏は、「プーチン氏は弾薬不足、兵士の士気低下、補給の問題、指揮命令系統の混乱など、軍が直面している問題を知らず、知らされず、全体像を把握できていないようにみえる」と述べた。

しかし、米国のシンクタンク戦争研究所は4日、厳しい冬の到来が戦争により大きな変化をもたらすと指摘した。

戦争研究所のアナリストは東部ルハンシク州のハイダイ(Sergiy Gaiday)知事のコメントを引用し、「東部戦線は冬の到来とともに変化する」と述べている。

アナリストによると、気温が低下することでぬかるんだ地面が凍りつき、戦車や軍用車の走行が容易になるという。ハイダイ氏は凍結状態が反攻作戦に良い結果をもたらすと指摘している。

一方、ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は3日、G7とEUによるロシア産石油価格の上限設定(1バレル60ドル)を「弱い」と批判し、上限を30ドルまで引き下げるよう要請した。

この制裁は5日に発効する予定。西側は上限価格以上で取引する国にロシア産石油を輸送するタンカーへの保険適用を禁じる。タンカー保険を取り扱っている会社のおよそ9割が欧州企業であり、ロシアは海上輸送においては上限以上での販売が難しくなる。

ロシア大統領府は制裁を非難し、参加する国への原油輸出を停止すると警告した。

世界の産油国は米国主導の制裁に慎重な構えを見せている。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟産油国で構成されるOPECプラスは4日、オンライン会合で減産規模を維持することに合意した。

OPECプラスは10月の会合で原油価格を押し上げるために11月から日量200万バレルの減産を行うことで合意していた。

この決定は西側を失望させ、米国は「中東の産油国がロシアに味方した」と非難していた。

原油価格は10月以降、世界経済の鈍化と金利上昇の影響で下落している。

ウクライナ政府は4日、ロシアの侵攻を支持したとされる正教会の幹部10人に制裁を科すと発表した。10人の資産は5年間凍結される。

2022年12月3日/ウクライナ、南部ヘルソン市郊外(Evgeniy Maloletka/AP通信)
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