◎オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan )大統領は23日、シリア北部に拠点を置く「クルド人民防衛部隊(YPG)」に対する地上作戦を計画していると明らかにした。
トルコ軍は週末、シリアおよびイラクで活動するクルド人武装勢力の拠点を空爆した。国防相はテロリスト254人を無力化したと報告している。
エルドアン氏は23日の記者会見で、「空爆は始まりに過ぎない」と警告した。
トルコ政府はイスタンブールのイスティクラル通りで今月13日に発生した爆破テロに反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」が関与したと断言している。PKKとYPGは関与を否定している。
米国はYPGをシリアにおける対テロ戦争の最重要同盟組織と位置付けている。
YPGは23日、シリア北東部の空爆で市民30人と兵士11人が死亡したと発表した。
米国防総省はトルコの空爆について、シリアにおける対テロ作戦を脅かしていると指摘している。
米国の支援を受けるYPGとクルド人主導の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」はトルコ政府がイスタンブール爆破テロを口実に越境攻撃を仕掛けていると非難している。
トルコは2016年以来、シリア北部に3回大規模な越境作戦を仕掛け、いくつかの地域を支配した。
最新の侵攻は2019年に行われ、ロシアの停戦仲介前に2つの地域を占領した。ロシアはアサド(Bashar al-Assad)政権を支援している。
トルコはクルド人武装勢力を軒並みテロ組織に指定している。米国とEUはPKKのみテロ組織にしている。
エルドアン氏はイスタンブール爆破テロ後の演説で、「シリア国境に緩衝地帯を設けるという政府の決意はこのテロで強固なものになった」と述べていた。
エルドアン氏は23日、「我々は航空作戦を継続しており、最も都合の良いタイミングで地上部隊を展開し、テロリストに対処する」と警告した。
SDFの報道官は地元メディアのインタビューで、「トルコ軍は複数の集落を標的にする」という見方を示し、イスタンブール爆破テロは「反シリアグループの犯行」と主張した。
また報道官は米国とロシアを念頭に置き、「トルコを抑える必要がある」と指摘した。
ロシア政府は同盟国のトルコに懸念を伝え、地上攻撃は新たな紛争を誘発しかねないと警告している。
ロシア政府の交渉官はカザフスタンで開催されたこの問題に関する協議に出席し、「ロシアはトルコとの協議でこの問題を解決できると期待している」と述べた。
一方、米国防総省はトルコ軍が侵攻すればイスラム国(ISIS)との戦いに影響を与える可能性があると警告した。
SDFは23日、トルコ軍が北部地域に対する5回目の大規模空爆を行い、ISIS戦闘員を収容する施設の部隊が被害を受けたと報告した。
米軍も22日、トルコ軍の無人機攻撃でこの地域に展開する米兵が危険にさらされたと発表した。SDFはこの空爆で兵士2人が死亡したと報告している。
オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。