◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊した。
ハイチの首都ポルトープランスで活動するギャングは6日、市内の燃料ターミナルの封鎖を解除すると発表した。
武装ギャング「G9&Family」のリーダーである通称「バーベキュー(Jimmy "Barbecue" Cherizier)」はSNSに投稿した動画で、「業者の燃料輸送を許可する」と述べている。
またバーベキューは「(石油タンクローリーの)ドライバーは安心してターミナルに入れ」と命じた。
国家警察は先週、この燃料ターミナルを奪還する作戦を本格化したと発表していた。
AP通信は情報筋の話を引用し、「燃料ターミナルとその周辺地域の様子を確認することはできない」と報じている。
ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは4カ月ほど前からG9&Familyなどの武装ギャングが地域の支配権をめぐって戦闘を繰り広げているとみられ、国連によると、7月中旬以降の死者と行方不明者は数百人に達し、10万人以上が避難民になった。
経済状況も悪化の一途をたどっており、米国から輸入される日用品の価格はこの数カ月で4倍以上に値上がりし、ガソリンの入手も困難になった。G9&Familyは9月12日に燃料ターミナルを占領したと報告されている。
ターミナルが占領された結果、多くのガソリンスタンドが閉鎖を余儀なくされ、医療機関はコレラの蔓延に対処できず、数千人の患者が治療を受けられずにいる。
バーベキューが声明通りにターミナルを開放すれば、市内で進行中の危機は緩和される可能性が高い。
ターミナルにはガソリンと軽油約1000万ガロン、灯油80万ガロン以上が保管されているとみられる。
国家警察は6日、ツイッターに声明を投稿し、「警察はターミナルで対応に当たっている」と報告したが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
AP通信によると、ターミナル周辺で銃撃戦が起きている兆候はみられないという。
一方、バーベキューは声明で、「我々は首相と交渉を行っておらず、自らの判断でターミナルを開放すると決めた」と強調した。
バーベキューは警察への攻撃を「より良い生活を取り戻すための戦い」と評し、ハイチの状況が悪化していることを認めた。「状況は悪化しているが、これは国を率いてきた政府の責任だ!」
バーベキューは国民に対し、「生活環境に満足しているか?安全だと感じるか?子供は誘拐されずに学校に行けるか?食べ物はあるか?」などと質問した。
ハイチの市民は暴力、貧困、インフレの三重苦に直面している。
地元メディアによると、国家警察と政府はバーベキューの発表に関する声明を出していないという。
ソーシャルメディアにはバーベキューを「大統領」「ハイチの父」などと呼び、決定を称賛する投稿がいくつか寄せられた。
アンリ(Ariel Henry)首相は9月、予算が枯渇しているとして燃料補助金の廃止を決め、国民に理解を求めたものの、その影響で物価は急騰し、多くの市民が街頭抗議をはじめ、一部地域では略奪も報告された。
ターミナル占領から1カ月後、アンリ氏は国連にPKOの派遣を要請した。安保理は暴力と犯罪行為の即時停止を求める決議案を採択し、バーベキューに金融制裁を科した。
安保理はPKO派遣要請に関する決議案の採決時期を明らかにしていない。