◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、危機的な状況が続いている。
ハイチのメディアは30日、治安部隊が首都ポルトープランスのデモ隊に発砲し、ジャーナリスト1人を殺害したと報じた。
AP通信によると、この記者は抗議デモ中に拘束された同僚の解放を求めていたという。
地元メディアは目撃者の話を引用し、「男性は頭を撃ち抜かれていた」と報じている。死亡日時と撃たれた場所は明らかになっていない。
治安部隊が男性を故意に撃ったのか、それとも流れ弾が当たったのかも不明である。
AP通信の取材に応じた男性は、「治安部隊が発砲し、男性が倒れるところ見た」と説明している。
国家警察の報道官はAPのインタビューで男性が被弾し死亡したことは認めたが、故意か否かは分からず、捜査中と答えるにとどめた。
ポルトープランスの警察署周辺には男性の死に抗議するデモ隊が集まったものの、報道によると、治安部隊の催涙ガスで追い払われたという。
警察に拘束された記者は地元ラジオ局に務める男性と伝えられている。
ポルトープランスに拠点を置くジャーナリスト協会は30日、記者の逮捕と銃撃について、「ジャーナリストが犯罪者のように扱われている」と非難した。
また同協会は記者の殺害と、25日に発生した記者襲撃事件に関与した個人を裁判にかけるよう政府に要請した。
ハイチの主要紙Le Nouvellisteは27日、「治安の悪化を考慮し、印刷物の発行を一時的に停止する」と発表している。
ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、危機的な状況が続いている。
ポルトープランスでは4カ月ほど前から「G9&Family」などの武装ギャングが地域の支配権をめぐって戦闘を繰り広げているとみられ、国連によると、7月中旬以降の死者、負傷者、行方不明者は数百人に達し、10万人以上が避難民になった。
またポルトープランスではアンリ(Ariel Henry)首相に辞任を要求する抗議デモも続いている。デモ隊は燃料補助金の廃止を決めたアンリ氏の辞任と暴力の終結を求めている。
ポルトープランスの主要燃料ターミナルはギャングの支配下に置かれ、市内のガソリンスタンドは空になり、医療機関は閉鎖を余儀なくされ、一部地域ではコレラが急拡大し、子供を含む数十人が死亡したと報告されている。
ギャングたちはより多くの領土を支配するために暴れまわっており、女性や児童だけでなく男性も強姦被害に遭うなど、地獄の様相を呈している。