◎文書の採択には全締約国(191カ国)の合意が必要である。
ロシアは26日遅く、4週間に及ぶ核拡散防止条約(NPT)の再検討会議で議論した最終文書の修正草案を却下し、西側諸国を非難した。
米国を筆頭とする西側諸国はロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ原発を占領し、過去に類を見ない核災害を引き起こそうとしていると繰り返し非難したが、ロシアはこの主張を却下している。
ロシア外務省の担当官は26日、「残念ながらこの文書には合意しかねる」と述べ、36ページの最終草案は多くの問題を抱えていると主張した。
文書の採択には全締約国(191カ国)の合意が必要である。
会議の議長を務めるアルゼンチン大使は26日、草案について、「これは想像を絶する核戦争が発生するという見通しが高まっている今、最も必要とされるものだ」と述べた。
しかし、AP通信によると、議長の演説後、ロシアだけでなくその他の国の代表者たちも「合意できる状態にはない」という見方を示したという。
NPT再検討会議は5年ごとに開催されることになっているが、コロナの影響で2年延期された。文書が合意に達しなかったのは2度目である。前回2015年の会議では核兵器を保有していないと信じられている中東諸国の確執の影響で合意に至らなかった。
AP通信によると、今回の文書には「中東の非核」を確立することの重要性も盛り込まれる予定だったという。ただし、今年の最大の問題は中東ではなくロシアだった。
プーチン(Vladimir Putin)大統領はウクライナ侵攻後、「ロシアは世界最大の核保有国であり、干渉しようとすれば、見たこともない結果につながる」と警告を発した。
核の恫喝は世界を震え上がらせた。ロシア軍は現在、核戦力を厳戒態勢に置いている。
プーチン氏はその後、「核戦争に勝者はおらず、決して起こしてはならない」と表明。8月2日のNPT会議初日にもロシア政府高官が同様のメッセージを繰り返した。
しかし、プーチン氏の度重なる脅し、ウクライナ南部ザポリージャ原発の占領、さらに開戦直後のチェルノブイリ原発の占領(解消済み)は「核災害」が現実になるのではないかという恐怖を駆り立てた。
米国のトーマスグリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使は今週初め、「米国は核条約の強化、ロシアの戦争、そしてウクライナでの無責任な行動がNPTを著しく損なっていることを認める合意文書を目指している」と述べ、ロシアを非難した。
ロシアのネベンジャ(Vassily Nebenzia)国連大使はこれを却下し、「米国とその同盟国が文書の作業を政治化し、世界の安全保障を強化するという集団的ニーズよりロシアを罰するという地政学的利益を優先させている」と非難した。
またネベンジャ氏は文書の協議がすったもんだしていることを西側の妨害行為と非難し、「ロシアは少なくとも、核拡散防止という重要かつ不可欠な取り組みを可能な限り推進し続ける」と主張した。
AP通信によると、最終草案にはロシアとウクライナがザポリージャ原発を互いに砲撃したと非難していることへの懸念を含む、同原発に対する軍事活動に重大な懸念を表明する文言が含まれていたという。
国際原子力機関(IAEA)は、今、同原発がコントロールを失えば、最悪の事態を防ぐことは難しいかもしれないと繰り返し懸念を表明している。
IAEA事務局長はザポリージャ原発へのIAEA査察チームの派遣でその安全性と、そこにある核物質が転用されないことを確認したいとしている。
また最終草案はウクライナの核施設、特にザポリージャ原発の安全性に重大な懸念を表明し、ウクライナ当局の管理下に置くことが最も重要と強調していた。