◎3月末以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は5万人近くに達した。
エルサルバドル議会は17日、ブケレ(Nayib Bukele)大統領の対ギャング非常事態令の1カ月延長を賛成多数で承認した。これで非常事態令の延長は5回目となった。
ブケレ氏は今年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。軍と警察の権限を強化し、刑法を改正した。
最新の世論調査によると、エルサルバドル内外の人権団体から批判が集まっているにもかかわらず、ギャング掃討作戦は圧倒的な支持を得ているという。
3月末以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は5万人近くに達した。
軍と警察は非常事態令の下、結社の自由や弁護人を選任する権利などを制限し、裁判所の許可を得ずに被疑者を拘束している。また政府は容疑者と見なされた個人の電話やメールを自由にチェックできる。
この法令は8月20日に切れる予定だったが、9月末まで延長された。
逮捕された者は自動的に裁判を待たずに6カ月間の拘留を命じられる。検察はこの期間中に事件を立証すればよい。
ブケレ氏は非常事態令を絶賛し、ギャングをテロリストと呼んでいる。またブケレ氏はほぼ毎日、その日の逮捕者数をツイートし、殺人事件が激減したと喜びを表明している。
政府は現在、ギャング専用の巨大刑務所を建設中だ。
中米最大のギャングであるマラ・サルバトルチャ(通称MS-13)やバリオ18などの構成員は7万人以上と伝えられている。ギャングの暴力に巻き込まれた市民は数知れず、危険な地域で生活していた数千人が亡命や逃亡を余儀なくされた。
政府報道官は17日、非常事態令がテロリストに衝撃を与え、国の治安を劇的に回復させたと語った。「国民は今、歴史上最も安全な休暇を満喫しています。毎日がパレードです」
一方、議会前では非常事態令の延長に反対する市民数十人が集まり、政府に抗議した。
AP通信の取材に応じた女性は、「3月27日に夫が突然連れ去られ、消息不明になった」と語った。「夫はギャングではありません。ギャングとつながりのある知人と一緒に歩いていたという理由で誘拐されたのです...」
首都サンサルバドルで活動する人権団体は最近、法律相談事務所を開設し、正当な理由なく逮捕されたという苦情を500件以上受け付けたと報告している。
AP通信はエルサルバドルの人権オンブズマンの話を引用し、「拘束中に被疑者が死亡した28件の事件を調査している」と報じた。
しかし、多くの一般市民がブケレ氏の政策を支持しているようにみえる。
サンサルバドルのあるバス会社はウェブサイトに、「組合員に対するギャングの暴力が95%減少した」と投稿している。「市内のギャングが一掃されたことで、暴力事件が激減しました...」
ブケレ氏の支持率は80~90%近くで推移しており、今回の非常事態令もギャングの暴力にウンザリしていた人々から支持を得ている。