◎ルト氏は勝利演説の中で、「私は有力な家系の出ではないが、国民のために働くと約束する」と語った。
ケニアの選挙管理委員会は15日、大統領選の集計結果を公表し、ルト(William Ruto)副大統領に当選証明書を授与した。
公式結果によると、ルト氏は野党党首のオディンガ(Rila Odinga)議員に僅差で勝利した。
<ケニア2022大統領選 開票率100%>
▽ウィリアム・ルト 7,176,141票(50.5%)
▽ライラ・オディンガ 6,972,930票(48.5%)
▽その他2候補 90,956票(0.6%)
選挙管理委員会の発表はオディンガ陣営の乱闘騒ぎで遅れたものの、ルト氏は無事勝利を宣言した。
しかし、選挙管理委員会の7人のメンバーのうち4人が集計結果を「不透明」と非難し、承認を拒否した。
同委員会の副委員長は声明で、「総選挙の集計作業は明らかに不透明であり、これから発表される結果に責任を持てない」と主張した。「我々は包括的な声明を出すつもりです。有権者のみなさん、平静を保ってください...」
チームオディンガの報道官は発表に先立ち、選挙管理委員会と選挙自体を非難した。「不正と不始末にまみれた選挙を信用してはなりません!」
しかし、ルト氏(55歳)は勝利を宣言し、ケニヤッタ(Uhuru Kenyatta)大統領の後を継ぐと誓った。ルト氏は10年間副大統領を務めたものの、ケニヤッタ氏と仲違いした。
一方、5回目の大統領選出馬となった77歳のオディンガ氏はまたしても苦杯をなめた。
選挙管理委員会のチェブカティ(Wafula Chebukati)委員長は委員4人の主張を却下し、委員会を責任を果たしたと述べた。「私たちはケニア国民が自由・公正・信頼できる選挙を行えるようにするための旅をしてきました。簡単な旅ではありませんでした。さきほど、委員3人が乱闘に巻き込まれ負傷しました...」
ルト氏は勝利演説で、選挙管理委員会に謝意を示した。
またルト氏はチェブカティ氏を「英雄」と呼び、集計結果に異議を唱えた委員4人を「外野」と非難した。「私たちのために活動してくれた全ての関係者と有権者に伝えたい。恐れることはありません。復讐もありません。私たちにふりかえる余裕はないのです」
ルト氏の本拠地リフトバレーや、次期副大統領のガチャグア(Rigathi Gachagua)議員の生まれ故郷では祝宴が催された。
一方、オティンガ氏の支持者はタイヤを燃やし、バイクを乗り回し、踊りを踊るなどして抗議した。
しかし、8月9日の投票日から1週間、政治と経済活動は停滞し、学校も閉鎖されていたため、多くの有権者が「ようやく日常生活が戻る」と安堵しているように見えた。
ケニアの選挙と暴力は切っても切れない関係にある。
2007年の選挙では票が盗まれたという主張が拡散、暴力に発展し、少なくとも1200人が死亡。60万人が国内避難民になった。
ケニアの政治家は自由で公正な選挙を追求しており、少しでも疑問に思うことがあると政府を厳しく批判し、非難し、糾弾し、攻撃的なデモを行う。
集計作業中、複数のメディアがオディンガ氏の勝利を予想した。一部の右派系メディアはルト氏を偽物と批判している。
ルト氏は中国を「ケニアを支配する王朝」と呼び、厳しく批判している。またルト氏はケニヤッタ氏の政策にも批判的で、当選すれば同国の債務推定700億ドルを一掃すると約束している。
中国はケニアに数十億ドル規模の融資を提供している。その多くがインフラプロジェクト関連で、高速道路や高速鉄道が建設された。
これらの投資は中国人労働者の流入を促し、ナイロビを含む主要都市には中国人居住エリアが建設された。
ルト氏は自分を「ハスラー」と呼び、貧しい人々のために戦うと訴えることで支持を集めた。またルト氏は王道路線を突き進んできたケニヤッタ氏とオディンガ氏を「ダイナスティー(王朝)」と呼び、市民目線の政治を行うことはできないと批判した。
ルト氏は勝利演説の中で、「私は有力な家系の出ではないが、国民のために働くと約束する」と語った。
一方、ケニヤッタ氏とオディンガ氏が1年かけて行った憲法改正は不評で費用がかさみ、コロナの大流行とロシアのウクライナ侵攻による食料・燃料価格の高騰も二人の支持率を押し下げた。最高裁は今年3月、この憲法改正を違憲と裁定した。
ルト氏の勝利が今回の総選挙の焦点となるのは当然だが、それと同じくらい注目されるべきは、今回の選挙でもひどい実績を残した選挙管理委員会である。
ジンバブエ、エチオピア、ソマリアの首脳はルト氏に祝意を示す電報を送った。
一部のアナリストは、オディンガ氏は結果に異議を唱える可能性が高いと予想している。
ケニアの最高裁は前回の選挙を無効としたが、数週間後にはまた大きな決断を下さなければならないかもしれない。