◎クリミア半島西部の空軍基地で9日に発生した爆発では少なくとも1人が死亡、複数が負傷したとされる。
英国防省は12日、今週クリミア半島のロシア空軍基地で発生した大爆発について、「ロシア軍の黒海艦隊に大打撃を与えた」という見方を示した。
クリミア半島西部の空軍基地で9日に発生した爆発では少なくとも1人が死亡、複数が負傷したとされる。ロシア国防省は弾薬が爆発したと主張し、ウクライナ大統領府は関与を否定した。
英国防省はこの爆発でロシアの戦闘機少なくとも8機が全壊または損壊し使用不能になったと報告した。
ウクライナ政府は関与を否定しているが、米国に拠点を置くプラネット・ラボ(Planet Labs)が公開した衛星写真は空軍基地が何かしらの攻撃を受けたと示唆している。
英国防省はこの爆発で戦闘機少なくとも5機と、多目的ジェット機3機がほぼ完全に破壊されたという分析結果を公表した。
ロシア空軍は侵攻開始前の時点で戦闘機を700機以上保有していたと考えられている。8機の損失は全体で見るとごくわずかだが、黒海に展開した艦隊にとっては大きな損失だろう。
英国防省は報告書の中で、「黒海艦隊の航空能力は著しく低下した」と指摘した。
クリミアの空軍基地に配備された戦闘機はウクライナの戦闘機と交戦したり、空爆に使用されていたと思われる。
米シンクタンク「戦争研究所」によると、この基地の戦闘機の一部は南部の港湾都市マリウポリに一時的に展開されたこともあるという。マリウポリのアゾフスターリ製鉄所は5月に陥落した。
ロシア軍は空軍基地への攻撃を否定したが、衛星が捉えたクレーターやその他の証拠は何かしらの攻撃があったと示唆している。
ロシア軍の黒海艦隊は4月にも大きな被害を受けている。
ウクライナ軍はロシア黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」にネプチューンミサイルを2発撃ち込み、撃沈したと報告した。
ロシアはこの発表を否定し、艦内の弾薬が爆発、火災が発生したと主張。モスクワは帰港中に沈没した。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は11日、クリミアの爆発に言及し、政府当局者に軍事戦術を報道機関に明かさないよう警告し、そうした行為は無責任であると非難した。
ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙はウクライナ軍が攻撃に関与したとする当局者の話を引用したが、ウクライナのレズニコフ(Oleksiy Reznikov)国防相は関与を強く否定し、ロシア兵の不注意が爆発を招いたと指摘した。
ゼレンスキー氏はビデオ演説の中で、「虚栄心や声高な声明を出している場合ではない」とメディアと当局者にくぎを刺した。
クリミア半島は公式にはウクライナの領土だが、2014年のクリミア侵攻でロシア軍と親ロシア勢力に占領され、住民投票の末、ロシアに併合された。
ロシア軍はクリミアへの攻撃を「自国領に対する脅威」「(地方政府の)存亡の危機」とみなす可能性がある。ロシアのメドベージェフ(Dmitry Medvedev)前大統領は、「クリミアを攻撃すれば審判の日がやってくる」と警告していた。
ゼレンスキー氏は親ロシア勢力の支配下に置かれている欧州最大規模の原発、ザポリージャ原発について、ロシア軍を速やかに追い出すよう国際社会に呼びかけた。
ウクライナ軍は12日、ロシア軍が原発近くの町への砲撃を続けていると非難した。
軍報道官はSNSに投稿した声明で、「全欧州の核の安全を保証するためには、ロシア軍の完全撤退以外に道はない」とし、ロシア軍の攻撃を「核テロ」と糾弾した。
ウクライナ公共放送によると、ロシア軍は原発に冷却水を供給しているドニエプル川の対岸の町を24時間体制で砲撃しているという。
一方、トルコ国防省は12日、侵攻開始以来初めて、ウクライナ産小麦を積んだ貨物船1隻がトルコに向け出航したと発表した。
これでウクライナ南部の港を出港した貨物船は14隻となった。