◎ニパウイルスは1990年代後半にマレーシアやシンガポールで急性脳炎や豚の呼吸器・神経症状を主徴とした疾病として初めて確認された人獣共通感染症の一種。
中国東部でニパウイルス感染症と同科に属する新型ウイルスに少なくとも35人が感染したことが明らかになった。
米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(MELM)が掲載した報告書によると、このウイルスは山東省と河南省の市民35人から検出されたという。その多くが発熱、せき、倦怠感などの症状を持っていた。
ニパウイルスは1990年代後半にマレーシアやシンガポールで急性脳炎や豚の呼吸器・神経症状を主徴とした疾病として初めて確認された人獣共通感染症の一種。その後、バングラデシュやインドで発生報告が続き、2014年にはフィリピンでも確認された。
研究チームはこのウイルスが動物からヒトに感染したと考えている。調査によると、このウイルスがヒトからヒトに感染したという証拠は今のところ見つかっていない。
MELMはこのウイルスをトガリネズミなどから検出した。
研究に参加したシンガポール国立大学(NUS)のリンファ(Wang Linfa)博士は新華社通信の取材に対し、「パニックを起こす必要はない」と述べた。
またリンファ氏は、自然界に存在するウイルスは動物からヒトに感染し、予期せぬ結果をもたらしてきたため、調査・研究・追跡を維持すべきであるとした。
MELMによると、調査したトガリネズミの27%がこのウイルスに感染していたという。また検査した犬の5%、ヤギの2%も陽性を示した。
台湾衛生福利部の疾病管制署は先週、「このウイルスに最新の注意を払っている」と声明を発表した。
人獣共通感染症は一般的なものだが、コロナウイルスの感染拡大でより注目を集めるようになった。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、ヒトに感染する新興感染症の75%が動物由来とみられる。
国連は野生動物の乱獲と気候変動が新たなウイルスの発生を後押しする可能性があると警告している。
アジアで定期的に発生するニパウイルスや、オーストラリアで馬から初めて検出されたヘンドラウイルスなどは、人獣共通感染症の中でも致死率が高いウイルスに分類される。