◎米国の厳しい制裁下に置かれているキューバは北米や中南米の安いオートバイを輸入できない。
慢性的な燃料不足に悩まされている中米キューバで電動スクーターが流行している。
首都ハバナ近郊では電動スクーターレースが開催され、多くの若者が改造を競い合っているようだ。
キューバでは現在、モトリーナ(motorinas)と呼ばれる電動スクーターが流行っている。これはガソリンやディーゼル不足を解消する移動手段として注目を集め、キューバ共産党からも「よく走る」「安い」「スタイリッシュ」と絶賛された。
米国の厳しい制裁下に置かれているキューバは北米や中南米の安いオートバイを輸入できない。共産党は昨年10月、モトリーナの輸入を許可し、この半年で約30万台が輸入・販売されたとみられている。
国家交通局の広報担当はAP通信の取材に対し、「モトリーナは飛ぶように売れているようだね」と語った。「少なくとも30万台は輸入されたようです。自動車の登録台数(約50万台)を考えると、恐ろしい勢いです」
モトリーナは2000ドル~5000ドルで取引されているようだ。その多くは中国製で、パナマ経由でキューバに輸入されている。
塗装工場で働く大学生のホセ(Ernesto José Salazar)さんはAP通信に、「モトリーナのおかげで仕事が増えて満足している」と語った。「最近はフレア系の塗装を好む人が多いです...」
ホセさんはSNSで同年代のライダーと交流し、バッテリーを長持ちさせる方法や、おすすめのタイヤ、改造を請け負っている工房などについて議論しているという。
マスタングからモトリーナに乗り換えたというフリーターのバサロ(Alejandro Vasallo)さんは、「ガソリン不要の電動スクーターはキューバに革命をもたらしました」と語った。「ガソリンを卒業する時が来たのです。キューバは世界初のガソリンレス国家になれると信じています」
キューバのタクシー運転手やトラック運転手はガソリン、特に深刻なディーゼル不足に直面している。共産党は火力発電の燃料を確保するためにはガソリンの販売を規制している。
キューバは同盟国のベネズエラから主に原油を輸入していたが、米国の制裁の影響でベネズエラ産原油が取り締まりの対象となり、危機に直面したのである。
電動スクーターには電気が必要であり、停電すると充電できない。
キューバ共産党は火力発電への燃料供給を優先すれば計画停電を避けることができると国民に説明している。また、公共バスの運行本数を減らすことで燃料を節約できるとし、国民に電動スクーターを活用するよう呼びかけている。
共産党の報道官は国営メディアのインタビューの中で、「電気はディーゼルやガソリンよりも安く、電気モーターは内燃機関よりもはるかに効率的で、燃料費を最大70%節約できる」と述べている。
一方、モトリーナのバッテリーは発火しやすく、持ち主の無茶な改造や整備不良による事故も報告されている。
共産党が公表しているデータによると、2020年上半期にゲルまたはリチウム電池を搭載したオートバイの発火事故は263件発生し、前年通期の208件を大きく上回ったという。