◎最高裁判所は先月、1973年のロー対ウェイド裁判の判決を覆した。
米国のバイデン(Joe Biden)大統領は1日、人工中絶手術を認める州に移動せざるを得ない女性は連邦政府の保護下に置かれると約束した。
最高裁判所は先月、1973年のロー対ウェイド裁判の判決を覆した。この判決により、全米のおよそ半分の州が中絶を禁止または制限すると予想されている。
▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。
多くの州で中絶を違法とするか否かの協議が進められており、共和党が過半数を占める議会は州法の準備を進めているものとみられる。なお、13州はロー裁判の判決が覆された時点で中絶を禁止するトリガー法を施行していたため、中絶は即座に非合法化された。
インターネット大手グーグル社は、女性ユーザーの位置情報履歴から中絶クリニックを利用したことを突き止められる可能性があるとして、悪用される恐れのあるデータを削除するとしている。
テキサス州が昨年施行した通称「ハートビート法(TX SB8)」は妊娠6週目以降の女性に中絶手術を提供した医師と、中絶に関与した個人や団体に最大1万ドルの損害賠償を起こす権利を「民間人」に与えており、多くの専門家が「賞金稼ぎ訴訟」を誘発する可能性があると警告していた。
中絶が禁止または制限された州の女性は、手術が必要であれば他の州に移動しなければならない。
バイデン氏は民主党州知事とのオンライン会議の中で、「いくつかの州は中絶を受けるために州境を越える女性を逮捕するだろう」と警告した。「そんな事態には発展しないと思っていますね。私は現実になると思っています」
バイデン氏は中絶が禁止された州の女性を支援する取り組みの一環として、連邦政府が中絶薬を確保するとした。
ミシシッピ州で提起された訴訟は世界に衝撃を与えている。
2018年に成立したミシシッピ州の州法は妊娠15週目以降の中絶を禁止するとしていたが、原告はこれを違憲として地方裁判所に提訴。地方裁は州法を違憲としたが、ミシシッピ州側が上訴していた。
最高裁の判決により、ミシシッピ州では妊娠15週目以内の中絶も禁じられ、ロー裁判の判決は完全に覆された。
バイデン氏は「民主党が11月の中間選挙で勝利すれば、中絶の権利を回復できる」と述べた。
合衆国憲法に中絶の権利を明記するためには、野党の議事妨害阻止に必要な60票以上を確保する必要がある。現在の上院勢力は「民50ー共50」。
しかし、バイデン氏の支持率は過去最低を更新中であり、最新の世論調査によると、民主党は下院と上院で多数派を失う可能性がある。
米3代ネットワークは警察筋の話などを引用し、「中絶を制限している州の警察は、市民のスマートフォン履歴や位置情報にアクセスしようとする恐れがある」と報じている。
グーグルはこれを念頭に置き、今後数週間のうちに中絶クリニック、カウンセリングセンター、DVシェルター、その他の個人的な情報を取り扱う施設などへの訪問を位置情報履歴や検索履歴から特定される場合、情報を削除するとしている。